賞金総額は2700万円。「eスポーツ」世界大会の現場で感じた熱気と工夫【IEM Sydney 2019】

IEM 2019 Sydney

オーストラリア・シドニーで行われた世界最大級のゲーム大会「IEM 2019 Sydney」。

日本で「eスポーツ」という言葉に馴染みがある人はどれぐらいいるだろうか。

オランダの調査会社NewZooによると、2018年のeスポーツ市場の収益予測は11億ドル(約1200億円)。一方、日本はというと、ゲーム情報誌「ファミ通」を発行するGzブレインの調査によれば、同年で48.3億円の市場規模と言われている。世界との差は大きい。

自作PCを組む人やオンラインの対戦型ゲームをする人にとっては、数年前から耳馴染みの言葉であると思うが、いまだに日本で市民権を得ている文化とは言えない。ただ、先述のGzブレインの48.3億円という数字は2017年比で約13倍に相当し、注目の成長分野であることは間違いない。

日本のeスポーツ市場規模の推移

2018年で急成長を遂げた日本のeスポーツ市場。今後の成長も予想されている。

出典:Gzブレイン

日本でも「eスポーツ」という言葉に触れる機会は明らかに増えており、市場拡大の勢いも確かに感じられる。とはいえ、海外の熱気との間にはまだまだ開きがあるようだ。本場の盛り上がりを実感するため、インテルが5月3〜5日に開催した世界最大級のeスポーツ大会「Intel Extreme Masters」(以下、IEM)を観戦しに、オーストラリア・シドニーまで足を運んでみた。

そこで見たものは、従来のスポーツと何ら変わらない観客の熱狂と、それを盛り上げる細かな運営や演出だった。

IEM 2019 Sydneyは最大2100人収容可能なスタジアムで開催された

Qudos Bank Arena

「Qudos Bank Arena」は、シドニー・オリンピック公園にあり、2000年の夏季オリンピックで実際に利用された競技場だ。


中に入るとまず目に入るのは、インテルによる体験ブースだ

インテル 体験ブース

インテルは、最新のPC向けCPUである第9世代Core i7やi9などの最新製品をアピールしていた。


来場者はブースにある最新のPCで、高品質なPCゲームを遊べる

格闘ゲームで遊ぶ人々

画面は対戦型格闘ゲームの「ストリートファイター」。


台湾のメーカー・エイサーは特大ゲーミングチェアも展示していた

Predator Thronos

何ともSF風のゲーミングチェアの名前は「Predator Thronos」。PredatorはエイサーのゲーミングPCブランド。


VRゲームを遊べるブースもあり、混雑時は行列ができていた

VR ボクシングゲーム

VRヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)を装着したプレイヤーはボクサーとなり、リングに立った相手をKOする。タイトルは「Creed: Rise to Glory」。


筆者もVRゲームを試してみたが、普段動かしていない筋肉を使った気がした

Beat Saber

写真のゲームタイトルは「Beat Saber」。両手に持ったコントローラを光の剣と見なして、自分に迫ってくるブロックを音楽に合わせて斬っていく新感覚のリズムゲーム。


別のエリアにはPCメーカーのブースがあり、来場者プレゼントなどで盛り上がっていた

ROGブース

こちらは台湾のPCメーカー・ASUSのゲーミングPCブランド「ROG」のブース。コントローラーなどの周辺機器をプレゼントしているようだ。


会場にはLEDでカラフルに光るPCケースなども展示されていた

ゲーミングPC

ゲーミングPCは、「デコトラ」(きらびやかな電飾を施したトラック)のようなLEDのライトパフォーマンス機能が備わっている場合が多い。


PCゲームには必ずしも巨大PCが必要というわけではない。小型PCでもプレイできる

NUC

インテルはゲーミングに特化した小型PC(NUC)も用意している。日本でも10万円台前半の価格で手に入る。


本戦の時間が近づいてくると、観客たちは食べ物や飲み物の準備を始める

売店

外部から飲食物などの持ち込みは禁止されているが、その分会場内の売店は充実している。


とくに多くの観客が持っていたのは、窯焼きのピザだ

ピザ

スタジアム内には本格的な窯焼きピザを出す店がある。筆者も頼んでみた。飲み物込みで22豪ドル(当日のレートで1772円)。日本人にとっては十分すぎるほどの大きさで、1人で食べたら腹がパンパンになった。


会場ではステージでプレイする選手を巨大スクリーンの映像を観ながら応援

対戦会場

大会を運営するESLによると、IEM 2019 Sydneyの1日あたりの来場者数は約7500人。筆者が取材した最終日はまごうことなく満員といった具合だった。


チーム制のサバイバルゲームで対戦。観戦用の画面には、俯瞰映像やマップなどの情報が映される

CS:GO 画面

対戦タイトルは「Counter-Strike: Global Offensive」(以下、CS:GO)。テロリスト部隊と対テロリスト部隊の戦いを描いたeスポーツ界隈では人気と歴史のあるタイトル。ルールはシンプルに言えば、相手チームを全滅させれば勝ち。


対戦中に煙幕が使われたときでも、観戦用画面には選手の位置などが表示されるので、観客は選手の一挙一動に盛り上がれる

CS:GO 煙幕

CS:GOで選手の画面は基本1人称視点だ。煙幕が張られた場合、チームの味方も相手も見えなくなるが、「戦略や直感で相手の場所を予測し、煙幕内の相手を倒す」といったスーパープレイも飛び出す。


プレイ状況に応じて会場の照明が変化するため、「緊張の瞬間」が共有されやすい

照明効果

会場上部の照明が赤くなったとき、それはテロリスト側のチームがステージに爆弾を設置したことを意味する。設置後、一定時間内に爆弾を解除できれば、生き残り人数に関わらず、対テロリスト側の勝利。逆に、爆弾が爆発してしまえばテロリスト側の勝利となる。


会場にはさまざまな年代・性別の観客が集まっていた

観客

1人で来る人もいれば、友だち、カップル、子連れ……さまざまな人がそれぞれの方法でゲーム観戦を楽しんでいた。


観客側にカメラが向けられ、観戦画面に映ることも

観客に向けられたカメラ

自分の国の国旗や“推しのチーム”へのメッセージを表現する様子は、まさにサッカーや野球など従来のスポーツ大会と同じだ。


ネット観戦も可能。世界各国のeスポーツファンが試合を見守り、盛り上げていた

配信コメント

試合の様子はゲーム配信プラットフォームの「Twitch」や「YouTube」で視聴できた。写真はTwitchの観客のコメント。


スーパープレイが飛び出したときの歓声や熱気は、リアルの会場ならでは

盛り上がる観客

アドリブのかけ声が会場いっぱいに響いたり、ウェーブが起きたりするのは、観客が心から楽しんでいる証拠だと思う。


ついに優勝チームが決定! IEM 2019 Sydneyではアメリカの「Team Liquid」が栄冠を手にした

優勝決定の瞬間

Team Liquid(観戦時点で世界ランク3位)は、最終戦でスウェーデンの「Fnatic」(同8位)と戦い、栄冠を勝ち取った。


優勝チームの朗報をスマホで撮り、すぐさまSNSで投稿する観客たち

スマホで撮影

多くのスマホでは客席からステージの様子を撮るにはズーム性能が足りないが、そんなことは優勝の喜びの前ではささいな問題だ。


IEM 2019 Sydneyの賞金総額は25万ドル(約2700万円)

優勝盾を獲得

本選16チームから勝ち残ったTeam Liquidには、優勝盾と優勝賞金10万米ドル(約1100万円)が贈られた。


満足げにカメラに向かってサインする優勝チームの選手

サインする選手

ここまで熾烈な戦いを繰り広げてきた分、その表情は非常に満足げだ。


決勝戦は最後まで試合がもつれ、約6時間後に終了。外はすでに真っ暗だった

深夜のスタジアム

スタジアムを出た頃には外は真っ暗。途中休憩時間は挟まれたが、15時から21時まで約6時間も観戦していたことになる。それでも、会場外では興奮した観客たちの声が響いていた。



世界の“eスポーツ熱狂”の波に日本は乗れるか

スマホの画面で見るeスポーツ

eスポーツの試合を見るだけならスマホでもできるが、会場に足を運んでみると“従来のスポーツ”に負けない面白さを実感できた。

筆者はライトなゲームプレイヤーで、多少の知識はあるのだが、IEM 2019 Sydneyの対戦タイトル「CS:GO」を見たのは今回の取材が初めて。当然、ルールなども現地に行くまで知らなかった。

正直、細かいルールはいまだによくわかっていないが、それでも試合後半では他の観客と同じく自然と、プロ選手たちが繰り広げるスーパープレイに歓声をあげ、勝敗の行方を握るとみられる緊迫したシーンでは手に汗を握った。

それは、やはり実際の会場ならではの一体感や、運営会社であるESLに貯まっている演出ノウハウの影響だろう(IEM自体は今回で14シーズン目を迎える)。

歓声を飛ばす観客

人気の選手が活躍すると、誰が号令するわけでもなく、自然に選手へのコールが会場中に響きわたった。

また、観客の中で最も多いであろうオーストラリア在住者のeスポーツの楽しみ方にも驚いた。

何と言ってもテンションが高い。真っ昼間から歓声やヤジを大声で飛ばす。試合がもつれ、勝敗がわからなくなってくると、テンションはさらに高まっていく。

決勝戦に進出したチームは、いずれも地元オーストラリアのeスポーツチームではなかった。地元チームは、本選に出場した全16チーム中3チームにすぎなかった上、いずれも7位以下に留まるというやや奮わない結果だったが、それでもオーストラリアのeスポーツファンたちは声を枯らして全身全霊で試合を楽しんでいた。日本ではここまでの熱気は感じられない。

東京2020 スポンサー

2020年の東京オリンピックも含めて、インテルは2017年からワールドワイド オリンピックパートナーだ。

もちろん、2020年の東京オリンピックをはじめ、eスポーツがこれから日本で盛り上がる機会はいくつも出てくるだろう。最近では据え置き型ゲーム機やスマートフォン向けのタイトルでも、さまざまなオンライン対戦型のものが登場してきている。

アジア太平洋地域屈指のeスポーツ大国であるオーストラリアに追いつくにはまだ時間がかかりそうだが、日本のeスポーツ業界の今後の発展が楽しみだ。

(文・撮影:小林優多郎、取材協力:インテル)

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