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元祖セレブタレント・マリエ、「たとえファンが5人になっても」伝えたい“自分を信じる生き方”

マリエ

モデルでタレントのマリエ。自身のブランドを立ち上げ、デザイナーと経営者を務める。取材当日は新商品の納品日だった。

撮影:伊藤圭

モデル兼「セレブタレント」として活躍し、多いときは週9本のギュラー番組を抱えていたマリエ(31)が、自身のアパレルブランドを立ち上げてからもうすぐ2年が経つ。

デザインは基本的に「ジェンダーレス」。環境問題にも積極的に取り組み、工場や職人など生産者の声に耳を傾けるため全国を飛び回っているという。 東日本大震災でのツイッター炎上、その後のアメリカ留学も「逃げた」と囁かれた彼女に、一体何があったのか —— 。

きっかけは留学で芽生えたファンへの責任感

PASCAL MARIE DESMARAIS

PASCAL MARIE DESMARAISの商品。左のTシャツは国際女性デーに合わせたもの。

PASCAL MARIE DESMARAIS /レプロエンタテインメント

マリエがデザイナーを務めるブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ)」を立ち上げたのは2017年6月。 きっかけは、2011年のアメリカ・ニューヨークのパーソンズ美術大学への留学だったという。専攻はもちろんファッションだ。

通常は2年間のプログラムを朝晩履修して1年で終わらせた後、教授のアシスタントとして働いた。そのままニューヨークで活動することも一時は考えたそうだが、帰国を選んだのはファンの存在があったからだ。

マリエ

現在もテレビやラジオなどメディアへの出演は継続している。

撮影:伊藤圭

「テレビに出ない間も『応援してるよ』というメッセージをブログなどSNSにくれる子たちがいて。そういう日本のファンにできることって何だろうと思ったときに、自分勝手な責任感かもしれないですけど、私がここで学んだことを伝えることなんじゃないかと思ったんです。 そのために自分の信念を貫けるものづくりがしたいと思ったのが、ブランドを立ち上げるきっかけでした」(マリエ)

東日本大震災でTwitter炎上した理由は

宮城県・気仙沼

2011年9月の宮城県・気仙沼市。この月、マリエは米パーソンズ美術大学に留学した。

GettyImages/Athit Perawongmetha

今では渡辺直美、ウエンツ瑛士などタレントが海外留学することは珍しくない。だが、このときファンの声援がより特別なものに感じたのは、マリエの留学が通常のそれとは大きく異なっていたからだろう。

2011年の東日本大震災直後、マリエはチャリティ活動を揶揄するとも取れるツイートを投稿し、大きな批判を集めた。「セレブタレント」として活躍していたマリエのもとには、「セレブなんだから寄付しろ」という趣旨のコメントが多数届いていたという。

ニューヨーク

2011年10月のアメリカ・ニューヨーク。

shutterstock/Wangkun Jia

一方でマリエが当時交際していたパートナーは震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市の出身。家族と連絡が取れない状況が続くパートナーを隣で励ましながら、すぐに寄付やボランティア活動などの行動をとる心の余裕がなかったと振り返る。

「Twitterを炎上させたのは私が一番早かったかもしれないですね。自分ができるタイミングでできる支援をすることがベストなんじゃないかということを言いたかったんですが、人を傷つけるような言い方になってしまって、今でも反省しています」(マリエ)

10代からの夢を選ぶも「逃げた」と批判

マリエ

マリエが初めてチャリティ活動に参加したのは21歳のとき。カンボジアの子どもに図書館をつくるためだった。

撮影:伊藤圭

マリエが10代の頃から憧れていたパーソンズ美術大学への進学を決め、テレビ番組などタレントとしての仕事を整理し終わったタイミングで起きたのが、東日本大震災とTwitter炎上だった。

本

チャレンジに年齢は関係ない(写真はイメージです)。

GettyImages/georgemuresan

自粛ムードが強かったため留学することもあまり公にできず、芸能界から「逃げた」「干された」とさらなるバッシングを受けることに。 そもそも留学については、事務所や知人からも「その歳で大学生なんて大丈夫?」 と心配されていたという。

しかし、入学した社会人コースで、マリエは最年少だった。学費が高額なため、10代では支払えず進学を諦めた人たちが、「学び直し」に集っていたのだ。30〜40代も多く、中には「CDデビューする孫の衣装をつくりたい」という60歳を過ぎた女性もいた。

違う選択肢があることを伝えたい

マリエ

「意識高い」と揶揄されることもあるが、同世代に同じ問題意識を共有できる人が増えていることに背中を押されているという。

撮影:伊藤圭

「みんなすごく真剣で、刺激的な毎日でした。日本では『23歳なんておばさんだよ』『それで学生?』というニュアンスの反応が多かったですが、そんなことない。日本とアメリカとどちらが良い悪いではなく、自分に合ったものをチョイスできる時代になっています。そういう外の世界もあるよって、日本の女の子たちに伝えたいんです」(マリエ)

思い出すのはアメリカに留学する前、毎晩のように朝まで飲み歩く「ずさんな生活」(マリエ)をしていたときのことだ。取材で毎日のように体型をキープする方法について聞かれ、「またか」と内心でため息をつきながら、「楽しく過ごすことでーす、みたいに答えてましたね(笑)」(マリエ)。

GettyImages/Nikada

運動はせず、体重管理のために食べた物を吐き出すこともしていたという。留学中、適切な運動や食事の取り方などのライフスタイルに関する知識も身につけた。

もしあの時の私に知識があったら、どれだけの女の子たちの良いロールモデルになれただろうと。今はもう昔みたいな影響力はないんですけど、1000人いたファンが5人に減ったとしても、その5人には私が知った生き方を、選択肢を教えてあげたいんです。

もちろんファッションというエンターテインメントを通して」(マリエ)

工場スタッフや職人を訪ねて全国を巡る

マリエ

生産者を訪ねるときはスタッフも一緒だ。チーム皆で現地の情報を共有することが大切だと言う。

提供:PASCAL MARIE DESMARAIS /レプロエンタテインメント

マリエは商品をつくる、売る、買う、さらにそれが捨てられるプロセスまで全てを見直すべきだと提唱する。

「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ)」の商品をつくるのは、マリエが全国各地を飛び回って直接話を聞き、価値観などを互いに納得した上で仕事を依頼した工場や職人のみ。2017年にはこうした全国16カ所の生産地をスタッフとブランドのファンで回るバスツアーも開催した。

現場に行き耳を傾けたからこそ知る、ファッションの不都合な真実もある。環境に配慮した商品展開をすることが現在の最重要課題だ。

切れ端を使った商品で大量生産に警鐘

渡六毛織工場

岐阜県の渡六毛織工場に置かれていた「廃材」。どれも素材として一級品だ。

提供:PASCAL MARIE DESMARAIS /レプロエンタテインメント

岐阜県にある高級獣毛生地をつくる工場を訪ねたマリエは、大きな衝撃を受ける。最高級の素材たちが商品を生産する際に出る「切れ端」として、大量に処分されていたからだ。

そこで考えたのが、この廃材を使って1点モノのラグマットをつくるプロジェクト「THE LEFT OVER RUG」だ。 廃材の再利用にも、社会への問題提起にもなる。 展示会は盛況に終わり、安定した生産体制を整えるためにクラウドファンディングにも挑戦した。

「ファッション界の産業廃棄物は年間で9200万トンです(2017年)。大量生産して売れない分はセールか廃棄という大手アパレル企業の生産システムには限界がきています

そういう意味でも支援者の要望に合わせて、つまり“必要な分だけ”を生産するのにクラウドファンディングは最適なツール。ファッション業界でももっと取り入れられると良いなと思ってます」(マリエ)

「野生の傷ついた革こそ美しいと思う」

ラグ

1点モノのラグ。金額は1万9800円から3万7800円までサイズによって異なる。

提供:PASCAL MARIE DESMARAIS /レプロエンタテインメント

今、新たな商品が生まれようとしている。次は「PILLOW(ピロー)」つまり、枕・クッションだ。

きっかけは、ラグの取り組みを知った革職人から「自分の業界でも何かできないか」と相談を受けたこと。マリエ自身もファッション業界の革への向き合い方には、以前から疑問を抱いていたという。

一流ブランドが商品に使う牛や羊は、狭い場所で絶対に傷がつかないように育てられます。殺されるまで。一方で野生で育った動物の革は売れないんですよ。傷がついていると商品にならないからと言って。何が虐待か、そして美しさの定義って何?って思いますよね。

人間も流した涙の分だけ美しくなるとか言うじゃないですか。野生の動物の傷だってそう。その方が美しい革なんじゃない?ということを提唱していきたいんです」(マリエ)

PASCAL MARIE DESMARAIS

試作中のピロー。前プロジェクトをきっかけに革職人だけでなく木材など多くの生産者からコラボの相談があったという。

提供:PASCAL MARIE DESMARAIS /レプロエンタテインメント

日本では、野生のシカやイノシシが増えすぎたことで農林業や生態系に深刻な被害を与えていることが問題になっている。捕獲事業は国やジビエの団体なども強化しているが、捕まえたシカなどを食肉にすることはあっても、革に加工することはあまりないのだという。時間がかかる上に、前述した通り野生の革は「売れない」からだ。

そこでジビエの団体などに捕獲した動物の革を加工してもらい、革の職人がそれを使ってクッションをつくろうというのが、今回のプロジェクトだ。中には、前回のラグを製作した際にどうしても使えなかった「糸」を入れる。ポリエステルやプラスチックと違い、ウール・アルパカ・シルクなどの糸が入ることで、弾力のあるリッチなクッションに仕上がっていると、マリエは興奮ぎみに言う。

当たり前を見直すことがカッコイイにつながる

マリエ

貿易業を営んできた両親は、良き相談相手。資金調達から社員のマネジメント、部屋の掃除まで「頼ってばかりです」と笑う。

撮影:伊藤圭

日本には社会問題を口にしづらい空気がいまだ根強い。そんな中でもマリエの言葉にはためらいがない。過去の後悔から、今自分がやるべきことがはっきりと見えているからだ。

「『エシカルブランドなんですか?』と聞かれることは多いです。もちろん社会問題を提起したり解決したいと思ってますよ。ただ全てのアイテムにストーリーやバックグラウンドがあるわけでもないんですよね。カッコイイことを追求したら、それがエシカルだったという感じで。

これまでの歴史で流行ったものやかっこいいとされてきたことの根底には、現代社会への反抗があった。大量生産もそうだし、今あるベーシックを見直すことがすごく必要なときだと思います。政治は正しいの?憲法って本当に変えないといけない?とか、そういうことにも繋がってくる。私たちはファッションブランドなので、これからもファッションでできることをやっていきます」(マリエ)

(敬称略)(文・竹下郁子)


※本記事は、Business Insider Japan編集部とLINE NEWSの共同企画です。フルバージョンの記事はLINE NEWSでご覧いただけます。

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