「わたし、定時で帰ります。」にモヤっとする上の世代に伝えたいこと

ドラマ「わたし、定時で帰ります。」のサムネイル。

このタイトルにモヤっとした気分になった上の世代も多いのでは?

出典:ドラマ公式Twitter

「わたし、定時で帰ります。」

現在放送中のこのドラマでは、有給を消化し、定時で帰ることがモットーのヒロインを吉高由里子さんが演じている。タイトルを見たときに、上司がまだ残っているのにも関わらず、気にせずに帰ってしまうゆとり世代を揶揄する上の世代の表情が浮かんだ。

このゆとり気質に、働き方改革が期せずして太鼓判を押してしまっていることに、なんともモヤっとした気分になる上の世代がきっと多くいるのだろう。

「自分たちは上司が帰るまで、ちゃんと残っていたのに……」「定時で帰っていては十分な仕事の能力が身につかない」「仕事への意欲がないのか」などのお叱りの声が、すぐそこまで聞こえてくるようだ。

しかし、これはドラマだけの世界ではない。定時で帰るという話は、商社や代理店、コンサル会社などに就職した友人からもチラホラ聞こえてくる。

カレンダーに「定時で帰ります」

イメージ

「定時で帰ります」と、堂々と宣言する生き方もある。

撮影:今村拓馬

今年4月にコンサルティング関連のベンチャー企業に就職した美奈子さん(23、仮名)は「Googleカレンダーで、毎日定時のところに『定時で帰ります』って入れてます」と平然と話した。

美奈子さんが就職した会社は、柔軟に働く環境が整っていることで有名なベンチャー企業だ。しかし、それでもGoogleカレンダーを白紙にしておくと、定時後にミーティングを入れてくる先輩もいる。

そこで美奈子さんが思いついた策が、定時の時間に「定時で帰ります」という予定を入れることだった。

あまりの潔さに、同世代の筆者でさえも驚きを覚えた。

しかし、明日でも良いミーティングは翌日の定時前にやればいいし、明日でもいい作業は明日やればいいというのが美奈子さんの考え方。

これだけ副業も流行り始めていると、さすがに定時で帰ってそのあと何か特別な仕事や予定などがあるのだろうと思い、帰宅後の過ごし方を聞いてみると「映画とか観たりしてます」。

予定があるから定時に帰るのではなく、終業時間だからというただそれだけの理由で、潔く定時に帰っているようだった。

確かに定時と言いつつ、ズルズルと働き続けるこれまでの企業の風習がおかしかったのかもしれない。

「定時だから、その時間になったら帰る」

これまでその当たり前を無視し続けた社会に生きてきた私たちは、感覚が麻痺しているのだろうか。当たり前のことを当たり前に言い切っているだけだが、そのことが逆に新鮮に感じられる。

とはいえ、会社がつまらないというわけでもないようだ。

「会社はすっごい楽しいです!」と笑顔で話し、朝は始業時間の1時間前に出社して、新聞を読んだりして過ごしているという。

仕事は楽しいし時間内で一生懸命に取り組む。そして、仕事以外の時間も大切にする。そうした、とてもシンプルな価値観がそこにはあった。

残業代上乗せされてまでやる仕事?

外から見た残業の様子

「企業のために残業する」という価値観が浸透しているが……。

mpeacely / Shutterstock.com

そして、もう一人、ソーシャルベンチャーに就職した、明さん(23、仮名)も、原則定時退社だそうだ。

「残業代って高くつきますよね。最初、けっこう残業してたんですけど『残業代が上乗せされてまで、定時後にしなきゃいけない仕事をしてるのか?』って思うようになって」

社員が残業することで、企業にとっては残業代などの追加負担が生じる。残業する場合は、もらう残業代以上の価値や利益を出さないと企業にとってはマイナスになるのだ。

残業すればするほど利益が出る仕組みになっている会社でもないかぎり、定時内でしっかりと価値を出して働くのが会社にとっても良いことだ。

「企業のために残業する」という価値観が浸透している今、この当たり前すぎることが逆に新鮮に感じてしまった。

定時が大事になるもう一つの理由

オフィスで話し合う若者たち

自由な働き方が進む中で「定時」の重要性は上がっていくのでは?

shutterstock / takayuki

時間内でしっかり働き、定時になったらスッキリ退社する。そんな、白黒はっきりした新卒世代の話をしてきた。

しかし、プライベートと仕事の境目が曖昧になり、定時の区切りもなくなってきているという指摘もあるだろう。フリーランスで働く人や、フレックス制で働く人も増えてきている。

定時という概念すらも曖昧になってきているなか、自分でオンとオフの切り替えを上手にできないと、24時間365日仕事に追われ疲弊することになる。

柔軟な働き方が広がる時代にこそ、それぞれが決めた「定時」を守ることが、ますます重要になってくるのではないか。

当たり前は本当に当たり前なのか

今時の若い子は「ワークライフバランスばかり気にして成長する機会を逃している」などという指摘を耳にすることも少なくない。

しかし、これまでの当たり前が本当に当たり前なのか、本当に今後も大切にしなければいけない価値観なのか、もう一度再考する時期にきているのではないか。

「決まった終業時間内で働くこと」は、本当に「ゆとり世代特有」なのだろうか。意欲がない人間がやることなのだろうか。

大手広告代理店の営業として働く大学の同級生は「不要な飲み会に参加しなくても営業が取れるなら、しないで成果を出せばいい」と、一次会が終わり次第、先に帰宅する。

長く働かないと成果が出せない、若いうちは長く働いて経験を積むべきという考え方は、労働時間が成果に結びついていた時代、もしくはそう信じたかった世代のものだ。

仕事に忙殺されて老後だけを楽しみに生きる一昔前の人生とは一線を画し、時間内で合理的と思われる方法で成果を出そうと模索する。そして、働き盛りの時期でも、同時に結婚や子育て、趣味などのプライベートを謳歌する。

そんな、新しい世代を“ゆとり”と揶揄(やゆ)するのではなく、この国の前向きな変化として、応援し後押ししていくこと。それこそが、他国と比べても圧倒的に生産性の低い、日本の現状を打開する大きなきっかけになるのではないだろうか。

(文・新居日南恵、写真はイメージです)

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