「メルカリがやってないことをやる」トレカ市場特化フリマを始めた、あるスタートアップの“勝算”

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ジラフがトレカ専用のフリマアプリに進出、ニッチマーケットを狙うその理由とは。ジラフの麻生輝明社長(左)と柴田雅人・執行役員事業責任者 。

匿名質問サービス「Peing -質問箱-」で知られるスタートアップのジラフが4月、ポケモンカードや遊☆戯☆王などで知られる、トレーディングカードゲーム(以下、トレカ)に特化したフリマアプリ「magi(マギ)」をリリースした。

フリマと言えば、サービス開始からまもなく6年を迎える、流通総額1兆円超のメルカリ一強というイメージがある。magi のようにニッチなカテゴリに特化したサービスは珍しい。メルカリが運営していた本やCD専門のフリマアプリ「メルカリ カウル」も2018年12月にクローズしたことから、カテゴリを絞ったフリマ事業の難しさが伝わってくる。

ジラフがカテゴリ特化型のフリマ事業に可能性を見出したワケとは。

メルカリとは異なるフリマ事業を模索してきた

「メルカリの成長を見て、彼らができていないことを研究していた。『スママ』ではカテゴリをしぼり、男性ニーズを想定して、シンプルな機能に注力するなど、違う形のフリマ事業を模索してきた」

2014年に創業のジラフの麻生輝明社長は、カテゴリ特化型のフリマ事業への進出について、そう話す。

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「Peing -質問箱-」では質問箱を作った人に聞いてみたい質問を匿名で行うことができる。

買い取り比較サービス「ヒカカク!」やiPhone修理比較サイトの「最安修理ドットコム」、スマホや家電に特化したフリマサービス「スママ」など、CtoC、二次流通を中心に、ジラフは事業を展開してきた。

同社はメルカリから出資を受けており、近くで彼らのCtoC事業を参考にしながらも、メルカリができていないことを模索してきたと言う。

そんなジラフが運営する匿名質問サービス「Peing -質問箱-」はすでに1500万MAU(月間アクティブユーザー)を記録する成長ぶりだ。

上記のスマホや家電に特化したフリマ事業「スママ」を担当してきた柴田雅人・執行役員は、「流動性こそがフリマビジネスのキーワード」だと感じていた。カテゴリをしぼるなら、ユーザーの利用頻度と熱量の高い市場にこそポテンシャルがあるというのだ。

スマホや家電はそもそも購入頻度が低いため、もっと購入頻度の高い商材に特化した市場を探していたという。

そんなとき、メルカリが発表した調査結果(2018年版)によれば、10~20代男性の売上額が高いカテゴリ1位はなんとトレカだった。買取比較サービス「ヒカカク!」でトレカの買取価格を調べると、実際に平均単価が高い。トレカなら家電よりも購入頻度が圧倒的に高い。そこに「流動性」を見出したのが、今回の「magi」だ。

柴田さんは「トレカの市場規模はそれほど大きくはなくて、1000億円くらい。ここに特化したサービスだけを作ろうとすれば、なかなか難しいかもしれない。われわれは他の事業をやっている上、これまでのフリマ事業のノウハウがあったことが大きかった」と強調する。

知られざるトレカ市場の奥深い世界と可能性

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magi上で取引される、トレーディングカード。

出典:magi

着想してすぐ、柴田さんは自らカードゲームに参加、トレカの世界に消費者として足を踏み入れてみた。そこには想像しえなかった興味深い市場があったという。

「トレカ市場独自のコミュニティが存在し、大会に出たり、知らない人とバトルをしたり、誰もがリアルでの接点を求めていた。コレクターも存在するが、トレカを集める人々のマジョリティはプレイヤー。彼らはSNS、とくにTwitterで情報を集め、頻繁にやりとりをしていることに気がついた」と柴田さん。

トレカ業界では、つねに消費者心理をくすぐるように、新しい(しかもこれまでよりも強い)カードが次々と発売される。

プレイヤーはデッキ(持ち手)を更新するために新しいカードを買い続けるため、買いの需要がなくなることはない。また、多くのカードはパック販売されるため、プレイヤーごとに使わないカードが出てくる。カードを売りたいプレイヤーが必ず存在するということだ。

「しかも、同じキャラクターの同じカードでも、複数のデザインのカードが存在し、レア度が異なる。もちろんレアなカードほど二次流通の価格は高価になるが、プレイヤーにとってはどれも同じ手札。プレイヤーは高価なカードをコレクターに売って、自身が新たにカードを購入する資金にしたりする」(柴田さん)

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大会限定の流通枚数が少ないカードは、高額で取引される。

出典:magi

コレクターとプレイヤーの間でうまくカードが循環しているのだ。

柴田さんは「他の市場と大きく違うのは、ユーザーの熱量がきわめて高いこと。プレイヤーはつねに情報を探しているので、こちらが情報を持っていることが伝われば、能動的にサービスを利用してくれる」と話す。

「magi」はまだ始まったばかりだが、これまでの落札最高額はなんと1枚で17万円。平均の取引単価も4000円といい、好調な滑り出しだ。

また、最近では「ポケモンカード」が広瀬すずをCMに起用してマス向けの商品を販売するなど、トレカ市場自体の敷居が下がり始めている。マスへ向けて、市場拡大の可能性も高い。

今後のフリマ市場において重要なのは「コミュニティを作ること」

加えて、同社がトレカというカテゴリで、フリマ以上に可能性を見出したのがコミュニティビジネスだ。熱量の高いプレイヤーがつねに対戦の場や情報の接点を求めている。単純なフリマサービスにとどまることなく“トレカに関する情報が集まる場所”を作り上げることが事業拡大の最大のトリガーになると麻生社長は考える。

実際にオフラインでトレカの流通をする“トレカショップ”では、多くが販売スペースよりも対戦スペースを優先的に確保しているという。トレカの販売を行うTSUTAYA北千住店でもトレカ専用のフロアを作るなど、単なるカードの販売よりもコミュニティスペースを重要視していることがわかる。

ジラフはここにフリマ事業の新たな可能性を見出した。今後はTwitterに換わる情報交換の場や、対戦相手を見つけるためのマッチング機能などをアプリ内に設ける計画だ。

麻生社長が狙うのは「フリマとSNSの融合」だという。

「メルカリは購入時にしかアプリを開かないが、Twitterのように毎日開かれるフリマサービスを作りたい。何か新しいサービスを作るというよりも、カテゴリをしぼり、フリマとSNSをうまく融合させるようなイメージ。通常のフリマ以上の機能を用意し、最終的にはマーケットプレイスを作ることで、トレカ市場のいろんな事業を一つのアプリに集約していきたい」

(文・角田貴広)


麻生輝明(ジラフ代表取締役社長兼CEO):1992年生まれ。2014年、一橋大学在学中に売却プラットフォームサービス「ヒカカク!」をリリース。同年合同会社ヒカカクを創業、翌年株式会社ジラフに組織変更。累計約7億円の資金調達に成功しており、GREE、ドリームインキュベータ、メルカリなどから出資を受ける。 現在は「ヒカカク!」を始め、匿名質問サービスの「Peing-質問箱-」、トレーディングカード特化のフリマアプリ「magi」など6つの事業を統括する。

柴田雅人(ジラフ執行役員 事業責任者):1991年生まれ。早稲田大学卒業後、新卒でグリーに入社。VCに紹介されて麻生と出会い、その日に入社を決め、ジラフ1人目のフルタイムメンバーとなった。 現在は、ガジェット特化のフリマサービス「スママ」や、トレーディングカード特化のフリマアプリ「magi」の事業責任者を務める。

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