ライザップグループの瀬戸健社長と松本晃取締役(構造改革担当)。
撮影:小島寛明
個別指導のトレーニングジムなどを展開するRIZAP(ライザップ)グループは2019年5月15日、2019年3月期決算(国際会計基準)を発表した。純損益は193億円の赤字となった。
2018年11月の時点で大幅に下方修正した通期業績予想では、70億円の赤字を見込んでいたが、さらに赤字幅が拡大した。買収した企業の既存店舗の閉店などの費用がかさんだという。
一方で、「緊急性の高い構造改革」については、2019年3月末までに一定のめどがついたとして、2020年3月期は営業利益の黒字化を見込んでいる。ライザップグループにとってこの1年は、「改革」の真価が問われることになる。
瀬戸健社長は決算説明会の席で、「痛みの伴うことは、できるだけ短期間で終わらせたいという思いで、損失を確定させた。今期は、黒字化を100%達成したい」と述べた。
グループ企業の売却は難航
決算説明会で質問に応えるライザップグループの瀬戸健社長
撮影:小島寛明
ライザップは近年、急激な企業買収で、膨張を続けてきた。2018年9月の時点で、グループ内の企業数は85社にまで膨れ上がっていた。
グループ内に9社の上場企業を抱えているが、買収後の再建に手間どり、2018年11月には決算見通しの大幅な下方修正に追い込まれた。
その後、ライザップグループは、本業であるボディメイクとのシナジーが見込みにくい企業を中心に、売却先を探す作業を続けてきた。
しかし、ライザップが買収してきたのは、収益面で問題を抱える企業が大半を占める。企業の引受先探しは難航した模様だ。2019年春ごろには、「ライザップが売り先に困っている」とのうわさも飛び交い始めた。
結果的に、ジャパンゲートウェイ、タツミプランニングについては譲渡先が決まった。また、SDエンターテイメントについても一部事業の譲渡が決まった。この半年で、発表できる段階まで譲渡先が明確化した企業は3社にとどまったことになる。
決算説明会に同席した松本晃取締役(構造改革担当)が経緯を説明する。
「社内も含め、私と瀬戸さんの間でも、議論は相当やった。ビジネスに正解はなくて、最終的には、当面は黒字化できるので持ち続けて、グループでいい会社にしていこうという結論が出た。ただ、会社の名前は言えないが、切り離そうにも難しいところもある」
グループ企業の再建には一定の成果も
撮影:今村拓馬
一方で、買収した企業の再建については一定の成果も見てとれる。グループ内の上場企業は9社あるが、うち5社が黒字になっている。
【黒字】
- ジーンズメイト
- ワンダーコーポレーション
- イデアインターナショナル
- MRK
- HAPiNS
【赤字】
- 夢展望
- 堀田丸正
- SDエンターテイメント
- ぱど
本業のRIZAP関連事業の売上高は、前期から84億円増え、413億円と順調に伸びている。グループ全体の売上高も2225億円と大幅に増加した。
2018年末の時点では、グループ企業の多くについて売却を含む整理を進めるとみられていたが、結果として「切り離した」企業は最小限にとどまった。
「実行したのは瀬戸さん」と松本氏は強調するが、この選択は今後どのような結果に結びつくのだろうか。
取締役会6人中5人が社外取締役に
ライザップグループの経営体制は、6月の株主総会を機に大きく変わる。以前は取締役12人のうち3人が社外取締役だったが、取締役を6人にスリム化し、瀬戸氏以外の全員を社外取締役とする。取締役会議長には、住友商事で副社長を務めた中井戸信英氏が就任する予定だ。
社外取締役を過半数とするのは、2018年秋ごろから、松本氏が繰り返し瀬戸氏に進言してきた施策のひとつとみられる。
創業者の瀬戸氏を支えるため、2018年6月にカルビーからライザップに転じた松本氏も、今年6月の株主総会で退任することが決まっている。
(取材・文、小島寛明)