発射前の月面探査機ベレシート。
SpaceIL
- 4月11日(現地時間)、イスラエルの民間宇宙団体スペースIL(SpaceIL)は、月面探査機ベレシート(Beresheet)の月面着陸を試みた。成功すれば、民間による史上初の月面着陸になるはずだった。
- だが、あと一歩のところで失敗、ソフトウエアのトラブルで月面に衝突した。
- 失敗から1カ月あまり、NASAの科学者は、月探査機ルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter)がベレシートの衝突地点を発見し、撮影したと発表した。
- 写真は、ベレシートが時速約3600キロメートルで月面に衝突し、約100メートルの痕跡を残したことを示した。
4月11日(現地時間)、イスラエルの民間宇宙団体スペースIL(SpaceIL)は、小型の月面探査機ベレシート(Beresheet)の月面着陸を試みた。
だが、おそらくソフトウエアのコマンドエラーのために、探査機のメインエンジンが停止。スペースILは探査機を再起動し、エンジンを回復させたが間に合わなかった。探査機は月面に衝突し、応答はなくなった。
5月15日、NASAの科学者は約1300ポンド(約590キログラム)のベレシートの衝突地点を発見し、月面の撮影を続けている月周回衛星ルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter:LRO)が撮影したと発表した。
衝突地点の写真はルナー・リコネサンス・オービターが4月22日に撮影、ベレシートが猛スピードで衝突した地点の様子が分かる。画像はLROのカメラシステム「LROC」が撮影した。
「探査機が衝突した時のスピードは毎秒約1000メートル、想定を超えたものだった」とNASAの科学者マーク・ロビンソン(Mark Robinson)氏は画像を掲載したブログで述べた。
このスピードは、銃から発射された弾丸の約2倍。鋭い角度で衝突し、その衝撃でベレシートは大破、月面にはかなりの大きさの痕跡が残ったとロビンソン氏は付け加えた。
同氏によると、ベレシートが高速で衝突した衝撃によって、月面にはクレーターのようなくぼみではなく、月面を掘り返したような穴が開いたようだ。飛び散った月の土は約100メートルの範囲に広がり、幅10メートルほどの「黒っぽいシミ(dark smudge)」ができたと同氏は述べた。
下は衝突地点の写真。左は加工前、右はコントラストを上げ、月面に飛び散った土を鮮明に浮かび上がらせたもの。
月面探査機ベレシートの衝突地点。左は加工前。右は加工後。
NASA/GSFC/Arizona State University
しかしロビンソン氏は、ブログを希望に満ちた言葉で締めくくった。
「不運はあったものの、忘れてはならないことは、ベレシートが民間団体によって開発され、月軌道に到達した初めての探査機であること」と同氏。
「スペースILはもう一度挑戦することを発表した。ベレシート2号で!」
スペースILは打ち上げ日程などの詳細はまだ明らかにしていない。
[原文:NASA photographed the crash site of Israel's failed moon lander, and it's not pretty]
(翻訳:仲田文子、編集:増田隆幸)