圧倒的に男性議員の多いアラバマ州議会は、実質的に中絶を禁止する法案を可決させた。翌日、州知事が署名し、この法案は成立した。
Chris Aluka Berry/Reuters
- アメリカのアラバマ州議会は5月14日(現地時間)、1973年の人工妊娠中絶を実質的に合法化した「ロー対ウェイド事件」以来、最も厳しい中絶禁止法案を可決させた。アラバマ州の州議会は、85%を男性議員が占めている。
- 法案に賛成したのは、25人の白人、男性、共和党の上院議員だ。
- アラバマ州は、州議会に占める女性議員の割合がアメリカで6番目に少ない。
- 法案の可決を受け、医療サービスNPO「プランド・ペアレントフッド(家族計画連盟)」のトップで内科医のリアナ・ウェン(Leana Wen)氏は、「医師を終身刑で脅してまで、妊娠のどの段階においても中絶を禁止するこの法案は、ロー対ウェイド事件以来、最も過激かつ危険な政策だ」と語った。
- 法案は5月15日、アラバマ州のケイ・アイビー知事(共和党)が署名、成立した。6カ月後に施行される。
圧倒的に男性議員の多いアラバマ州議会は5月14日、アメリカで最も厳しい中絶禁止法案を可決させた。
法案に賛成したのは、25人の白人、男性、共和党の上院議員だ。
法案に反対したのは6人で、全員が民主党の上院議員だ。このうち2人が女性 —— リンダ・コールマン・マディソン(Linda Coleman-Madison)議員とビビアン・フィギュアーズ(Vivian Figures)議員だ 。
民主党のマリカ・サンダース・フォティア(Malika Sanders-Fortier)議員は棄権、同じく民主党のプリシラ・ダン(Priscilla Dunn)議員は病気のため欠席した。
アラバマ州では女性が人口の51%を占めているが、州議会議員に占める女性の割合はわずか15%だ。
上下合わせて州議会議員の85%が男性で、140議席中、女性は22人 —— 上院4人、下院18人だ。アラバマ州は、州議会に占める女性議員の割合がアメリカで6番目に少ない。アメリカ全体で見ると、州議会に占める女性議員の割合は約29%だ。
アラバマでは中絶をする女性の60%が黒人で、実質的に中絶を禁じる今回の法案に賛成した上院議員は全員、白人男性だ。
法案は、アラバマ州で中絶手術を実施した医師を、最大99年の禁固刑に科すとしていて、レイプや近親相姦による妊娠も例外ではない。唯一の例外は、母体にリスクがあるときだ。
医療サービスNPO「プランド・ペアレントフッド」の元トップ、セシル・リチャーズ(Cecile Richards)氏は14日夜、この法案について「ロー対ウェイド事件以来、中絶を最も厳しく禁じる」ものだとツイートした。ロー対ウェイド事件は、アメリカ全土で実質的に中絶を合法化した、1973年の画期的な最高裁判所の判決だ。
プランド・ペアレントフッドの現在のトップで、内科医のリアナ・ウェン氏もリチャーズ氏と同じ考えだ。
「医師を終身刑で脅してまで、妊娠のどの段階においても中絶を禁止するこの法案は、ロー対ウェイド事件以来、最も過激かつ危険な政策だ」と、ウェン氏は14日にツイートした。同氏は、「医師や公衆衛生のリーダーの意見は一致している:犠牲になるのは、女性たちの命だ」という。
アメリカでは最近、ジョージア州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、アーカンソー州、オハイオ州など、複数の州が中絶を禁止する法案を可決、成立させている。生殖に関する権利向上を訴える団体はこうした状況を、トランプ大統領が就任し、最高裁判所を含め、各地で保守派の連邦判事を指名し始めて以来の、ロー対ウェイド事件の判決を覆そうとする大きな動きの一部だと見ている。
法案は5月15日、アラバマ州のケイ・アイビー知事(共和党)が署名、成立した。6カ月後に施行される。
(翻訳、編集:山口佳美)