ハイクラス人材の副業わずか1%、ブームでも広がらない理由

副業

撮影:今村拓馬

ハイクラス人材で、実際に副業している人の割合はわずか1%——。パーソルキャリアによるハイクラス人材のキャリア支援サイト「iX」が、会社員を対象に副業に関する調査をしたところ、年収800万円以上では、実際に副業をしている人がごくわずかという実態が浮かび上がってきた。政府も後押しする副業ブームとは裏腹に、副業はあまり浸透していないのか。

※全国の男女2500人を対象に、パーソルキャリアが2018年7月にインターネットによるアンケート調査を実施。総務省の労働力調査(2017年)の性・年代別人口構成比に合わせて、ウェイトバック集計した。

メディアや政府により、「柔軟な働き方」の象徴のように取り上げられることの多い「副業」だが、高収入層におけるその実態はどうなっているのか。副業をめぐる、5つの事情が見えてきた。

1.年収800万円以上の会社員では、副業している人はまだわずか

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調査によると、年収800万円以上の層では、副業をしている人の数は、311万人中、わずか1%の3.1万人にとどまるとみられることが明らかになった。副業希望者も全体の3.9%という結果に。高年収層は、それなりにハードワークが予想される。その影響もあるのか。


2.そもそも、副業を全面解禁している会社が少ない

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撮影:今村拓馬

副業が浸透していない理由で、影響が大きいと見られるのが、副業を解禁していない企業が多いこと。副業希望者に勤務先の副業解禁状況について聞いたところ、「(自分の会社は)すべての社員が(副業が)可能」と答えた人の割合は17%だった。「そもそも副業に関して規定されていない」と答えた人の割合も3割だった。

企業側が副業のできる環境づくりに、決して積極的ではない実態が浮かび上がってくる。

3.副業仕事を得る手段は「7割人脈」

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それでも副業をやっている人は、どんな方法で仕事を得ているのか。年収800万円以上の層では、7割超が「人脈」と答えた。調査では「本業でのつながりを生かしている人が多い」とみている。ちなみに、人脈の次は「業界団体や協会などへの加盟」。 個人的なつながりがないと、副業の機会自体が難しそうだ。

4.目的は収入よりもスキルアップ

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副業する理由で、年収800万円以上のハイクラス層でもっとも多かったのが「もともと、やりたかった」(36%)、本業に役立つと考えた(29%)と続き、収入外目的とする回答が「もっと収入を得るため」(21%)を上回った。

「独立するためのステップアップ」も2割超と高かった。 ハイクラス人材が副業をする目的は、キャリアアップや市場価値向上が大きなウエイトを占めているようだ。

一方、年収200万〜600万円層では「収入が不足しているため」が3割でもっとも多い。

5.副業したい人は転職意向も高い

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撮影:今村拓馬

パーソルキャリアが実施した別の調査では、会社員全体に対し、副業をしたいと考えている人ほど転職意向も高いことが明らかになっている。会社員全体の転職意向者は6割程度に対し、副業意向者の転職意向者は73%だった。

さらに副業希望者を年収別でみると、800万円以上層ではそれ以下の層と比べ、転職意向はより強い。

ハイキャリア層では副業に関心の高い人ほど、転職への意欲も高いと言えそうだ。

パーソルキャリアのiX事業責任者、清水宏昭さんは調査結果から、「多くの企業が副業に対して積極的とは言えない中、副業を見つける手段が人脈頼みという結果をみても、副業をしたくても始めやすい環境が整っているとは言い難い」と、指摘。

さらにハイクラス人材については「仕事がハードワークであることも多く、時間もなかなか取りづらいでしょう。副業については、トレンドやブームと実態のズレがあるかもしれません」とみる。

ただそんな中でも、ハイクラス人材の副業目的に注目し「本業の専門性を生かした職種で、自身の市場価値向上をめざして、副業している人が多いのでは」(清水さん)と、話している。

(文・滝川麻衣子、写真はイメージです)

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