Romolo Tavani / Shutterstock
シリコンバレーでは、様々なサービスが流行っては、その時代の役目を終えて消えていく。
アメリカ屈指のアクセラレーターY Combinator(Yコンビネーター)から資金調達し、業界から注目されたものの、やむを得ずサービスをクローズしたスタートアップにはどんなものがあるのだろうか?
(データは公開情報をもとにスタートアップの評価サービス「datavase.io」が抽出した。なお、一部の不幸な買収でエグジットしてしまった企業などは除外している)
13位 Final(累計調達額:約410万ドル/ 4億5000万円)
画像:Final
- サービス概要:ウェブ上での決済時にワンタイム利用を前提としたクレジットカード(カード番号)を発行してくれるクレジットカードサービス。
- 失敗した理由:経験を買われ、同社のエンジニアとプロダクトマネージャーの計6名を獲得するためにゴールドマンサックスにより買収された。人材獲得目的の強い買収であったため、Finalのクレジットカード事業は終了した。
12位 Parse(累計調達額:約700万ドル/7億7000万円)
画像:Parse
- サービス概要:モバイルアプリケーション開発をする上で必要なバックエンド機能をAPIを使って効率化するサービスを提供
- 失敗した理由:当初想定していたほど市場が伸びなかった。フリーミアムモデルを採用していたため高額なサーバー代がかかり、損益分岐点到達までにかなりの時間を要した。Facebookに買収されたが、事実上Parseチームの技術力を買った形であったため、サービスは伸びずに終了した。
11位 Justin.TV(累計調達額:約800万ドル/8億8000万円)
Justin.TVからゲーム配信に特化したサービスとして立ち上げられたのが「Twitch」だ。
画像:Twitch
- サービス概要:ユーザーが自由に配信できるライブ動画配信プラットフォーム。
- 失敗した理由:人の生活を24時間配信することに価値はないと判断された。アーカイブされた動画の再生回数が著しく低かった。
10位 Posterous(累計調達額:約1014万ドル/ 11億2000万)
画像:Posterous
- サービス概要:シンプルなブログに焦点を当てたサービス。
- 失敗した理由:Twitter社により買収されたが、主要な人材リソースがTwitter側に使われてしまったため、双方にシナジー効果を生み出せず終了した。
9位 RethinkDB(累計調達額:約1220万ドル/13億4000万円)
画像:RethinkDB
- サービス概要:リアルタイムWebアプリ向けに設計されたJSONデータベースを提供。従来のデータベースよりも高速にリアルタイム動作できることがウリだった。
- 失敗した理由:組織内部の分裂による経営状況、ならびに資金調達失敗による財政の悪化。マネタイズを無視し、誤った仮説に基づいてプロダクトを磨くことに注力してしまった。
8位 SpoonRocket(累計調達額:約1350万ドル/14億9000万円)
画像:SpoonRocket
- サービス概要:15分以内に顧客に高品質の美味しい食事を提供する超高速配達プラットフォーム。
- 失敗した理由:フードデリバリー市場における競争の激化で、ビジネスを継続するための資金調達に失敗。
7位 Pebble(累計調達額:約1500万ドル/16億5000万)
画像:pebble
- サービス概要:iPhoneとAndroid OSの両方でアプリに接続できるスマートウォッチ。
- 失敗した理由:同社が提供するスマートウォッチへの評価は高かったが、スマートウォッチ市場の縮小と共にマーケットシェアも減少。Apple WatchやAndroid Wearを搭載する他のデバイスに遅れをとり、優位性を保つことに失敗。
6位 Coin(累計調達額:約1600万ドル/17億6000万円)
画像:Coin
- サービス概要:ウェアラブルデバイスによるキャッシュレス決済の手段を提供する。
- 失敗した理由:Fitbit社がシナジー効果を目指して2016年5月に買収したが、技術が不十分であり、サービスとしては終了している。
5位 Mattermark(累計調達額:約1720万ドル/18億9000万)
画像:Mattermark
- サービス概要:スタートアップの成長を定量化したり、潜在的に有利なスタートアップを測定したりするためのデータプラットフォーム。
- 失敗した理由:ユーザーに対して競合であるCrunchbase、CB Insights、PitchBookに勝る価値提供ができなかった。セールスフォースと連携して、同ユーザーが一部機能として同サービスを利用できるようになったが、営業ツールとしては不十分であった。
4位 Bluesmart(累計調達額:約1800万ドル/19億8000万円)
画像:Bluesmart
- サービス概要:リチウムイオン電池を搭載したUSBで充電が可能なスーツケース。
- 失敗した理由:内蔵するリチウムイオン電池の発火可能性を懸念し、アメリカン航空、デルタ航空、アラスカ航空の3社が同スーツケースの持ち込みを禁止し、空を飛べないスーツケースとなってしまった。バッテリーを取り外すなら機内持ち込み可能という条件を提示されたが、それはプロダクトが持つ価値を無くすことになってしまう。
3位 Homejoy(累計調達額:約6600万ドル/72億6000万円)
画像:Homejoy
- サービス概要:プロの掃除人に1時間あたり20ドルで家事代行を頼めるプラットフォーム。
- 失敗した理由:ワーカーとの雇用関係によるトラブルが頻出。ワーカーは従業員として扱われることを求めたが、その場合、福利厚生などの経費がかさみ、利益を捻出できなくなってしまう。初期から海外進出を狙い、マーケティングコストなどが増大したため資金を急速に溶かしてしまった。
2位 Meta(累計調達額:約7300万ドル/80億円)
画像:Meta
- サービス概要:AR(拡張現実)と神経科学を用いて、現実世界とバーチャルの境界線を感じさせないようなAR体験をユーザーに提供している。
- 失敗した理由:Genedics, LLCにより特許侵害に関する訴訟を起こされ、財政が悪化。相次ぐ役員の離脱、2018年9月に行った資金調達(20億円を調達予定)の失敗などで、従業員の半数以上を解雇した。
1位 Airware(累計調達額:約1億2000万ドル/132億円)
画像:Airware
- サービス概要:ドローンで撮影した空中からの地上映像を分析するソフトウェアを開発し提供している。交通情報、コンテナの整備、セキュリティーの整備などを可能にした。
- 失敗した理由:幅広い領域での分析サービスを広く浅く行ったため、市場の競合優位性がなくなってしまった。長期的な成功を求めて多くのピボット(ビジネスの方針転換)を繰り返すうちに、財政破綻してしまった。大型調達をしても、必ずしもイグジット(株式を売却して利益を得ること)が確約されるわけではないという一例。
(文・戸村光)