東南アジアなどでモバイル決済サービスの普及率が急速に高まっている。
PwCが発表した調査レポート「It’s time for a consumer-centred metric: introducing ‘return on experience’」より。
日本はキャッシュレス決済後進国である——。PwCが発表したレポート「Global Consumer Insights Survey 2019」 に、その事実を痛感させられるデータがある。
いま、東南アジアにおいて、急速にモバイル決済サービス(キャッシュレス決済サービス)が普及している。上の図は、2017年と2018年のサービス普及率を比較したものだ(図では表記が2018年と2019年となっているが、それぞれ2018年3月と2019年3月にPwCが調査結果をまとめた)。
すでに、多くのアジアの国々でモバイル決済サービスの普及率が軒並み40%を超える。とくにベトナムで普及スピードが速い。わずか1年間で普及率は前年から24ポイントも伸び、61%となった。
一方、日本政府は、後述のとおり2025年までにキャッシュレス普及率が40%に到達することを目標に掲げている。
激しい覇権争い真っただ中のベトナム
ベトナム・ホーチミンのカフェ。様々なスマホ決済サービスのQRコードが並ぶ(2018年12月31日撮影)。
ベトナムは現在、日本と同様、キャッシュレス決済サービスの覇権争いが激しくなっている。ITサービス会社発のアプリ「momo」、「Grab Pay」や「Zalo Pay」、携帯電話会社発の決済アプリ「Viettel Pay」などに加え、銀行発のアプリなどが乱立している。
ホーチミン在住の28歳のベトナム人女性は、主要な決済アプリはどれも使っているという。「その時々によって、アプリを使った割引きキャンペーンがあるので、使い分けています」(同女性)
日本でこの半年で繰り広げられた光景と強い既視感を感じるコメントだ。もちろん決済アプリだけではなく、クレジットカードを使う人もいる。ただ、この急激な普及の背景には、スマホを通じた決済アプリの普及が一役買っていそうだ。
様々なスマホ決済サービスのQRコードが並ぶタイ・プーケットのカフェ(2018年8月14日撮影)。
前年から19ポイント上昇し、普及率67%のタイもキャッシュレスの熱量の高い地域だ。タイではLINE PayやBlue Payなどのスマホ決済や、ベトナムと同じく銀行アプリの利用が増えているという。
バンコク在住の31歳のタイ人男性は、「マクドナルドとかで食事する時は支払いにLINE Payを使っています。電気代とか公共料金はバンコク銀行のアプリで支払っていますね」と話す。
日本のキャッシュレス比率は約20%、大半がクレカ
日本のキャッシュレス支払比率はまだ高いとは言えない。
一般社団法人キャッシュレス推進協会が2019年4月に発表した「キャッシュレス・ロードマップ2019」より。
PwCのレポートの中にはないが、日本のキャッシュレス普及の現状はどの程度なのか。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会が2019年4月に発表した「キャッシュレス・ロードマップ2019」の中で、キャッシュレス支払い比率は、2017年で21.3%とまだ低く、内訳の9割がクレジットカードだ。「2025年までに比率40%を目標とする」(2018年に経産省が発表した「キャッシュレス・ビジョン」より)と紹介しているが、まだまだ道のりは長そうだ。
ただ、2018年は、キャッシュレス決済元年、スマホ決済元年だったといえるくらい、一気にキャッシュレスサービスの種類が増えた。各社、大盤振る舞いのキャンペーンを乱発したことで、認知度は急激に高まっているが、まだ日本中どこでも使える、という状況には程遠い。
果たして、2020年の東京五輪の時点で、日本はどこまで「キャッシュレス」になれているのか。日本が東南アジアの国々のスピード感に劣らず、キャッシュレス促進に邁進できるのか。政府、民間企業をあげた国としての取り組みに注目だ。
街に活気があるベトナムのホーチミン(2019年1月2日撮影)。
急速に開発が進むベトナムのホーチミン(2019年1月3日撮影)。
(文、写真・大塚淳史)