シトロエンCEO「2025年までに全車種EV/PHV化」宣言 ── 仏メーカーとMaaSのリアルな未来

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フランス・パリで開催されたテクノロジー展示会「VIVA Technology 2019 Paris」(通称VIVATech)会場周辺の風景。

5月16日から18日まで、フランス・パリにて、テクノロジー関連イベント「VIVA Technology 2019 Paris」(通称VIVATech)が開催された。

VIVATechにてグループPSA(旧プジョー・シトロエン・グループ、以下PSA)はシトロエンとしてブースを展開、「19_19」と「Ami One」という2つの電気自動車(EV)のコンセプトカーを公開した。特に「19_19」は、VIVATechが世界初披露のタイミングになる。

PSA、そしてシトロエンは、EVや自動運転の未来をどう考えているのか。会場にて、シトロエンのリンダ・ジャクソンCEOに聞いた。

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シトロエンのリンダ・ジャクソンCEO。

高価すぎる完全自動運転は個人向けではない?

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VIVATechのシトロエンブースのCGイメージ。

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シトロエンは自動運転車の未来をどう考えているのだろうか? 「明確なポリシーがある」とジャクソンCEOは話す。

ジャクソンCEO(以下敬称略)「PSAとして、自動運転についての明確な方針を持っています。

自動運転にはレベル1からレベル5までありますが、そのうちレベル4と5については、個人向けのマーケットは当面考えていません。なぜなら、高価なものになりすぎるからです。レベル4以上は、トラックや長距離バスのような、大きな自動車に向けた技術だと考えています。

一方で、レベル1からレベル3までは、すでに存在する技術です。例えばヨーロッパで販売を開始した「シトロエン C5エアクロス」には、レベル2の自動運転が搭載されています」

課題は多数ある。だが、軸となるものはなんなのか? それは「より安全になる」ということだ。

ジャクソン安全性を追加できることが自動運転の価値であり、我々がエキサイティングだと思う点です。私は車の運転が好きです。旅のすべての行程が自動運転になってしまうというのは、とっても退屈な体験になるだろう、と思います。私はまだ“運転”もしたいんです。

自動運転やAIの導入された自動車のことを考えるとき、私たちはまず「安全」のことを考えます。安全はすべての人、すべてのドライバーに対して大切なものです。特に高齢のドライバーに対しては、自動運転系の技術は重要なものです。

一方で、すべての車両が安全のための自動運転技術を搭載し、100パーセント安全であるためには、私たちは、より優れたレベルへと到達する必要があります。“何を優先すべきか”という判断基準など、1社だけでは難しい課題もあります」

2025年、シトロエンは「電気で動く自動車」だけを売る会社に

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VIVATechで世界初公開されたEVコンセプト「19_19」(ナインティーン・ナインティーン)のイメージ写真。

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では、シトロエンはEVにどのように取り組んでいこうと考えているのだろうか? ジャクソンCEOの口から出てきたのは、非常に前向きな答えだった。

ジャクソン「2020年、我々はプラグインハイブリッド(PHV)車の販売を開始します。同様に、EVの販売も開始します。その先の年も、EVです。

弊社が来年以降発売するすべての車は、EVもしくはPHV、どちらかになります。PHVにはガソリンとディーゼルのバージョンがあり、サイズもいろいろだとは思いますが。

さらに2025年までに、弊社製品を100%、「電気で動く自動車」にします。2025年までには、弊社のラインナップはPHVかEVか、という形になります。全モデルにわたって、この計画を推進します」

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とはいえ、EVの普及には課題も多い。消費者の側が積極的にEVを買いたい、という状況にもなっていない。その点は、ジャクソンCEOも認める。

ジャクソン「今のところ、EVに対する顧客の需要はかなり小さいです。しかし、拡大するのは必然です。ディーゼルエンジンが規制される都市が増え、電気を使った自動車へのインセンティブはますます高まっています。

二酸化炭素削減目標を満たす、現状の唯一の方法は、プラグインを混在させることです。もちろん、完全なEVはその先にあります。私たちは、自動車産業のための正しい道筋にあると考えています。今後はよりEVの比率が高まり、人々も“EVに乗りたい”と思うようになるはずです。

正直に言って、日本での状況がどうか完全に把握できてはいないのですが、EVに関するヨーロッパでの大きな問題は、“インフラの中に充電ステーションがあるか”ということです。これを社会全体で解決していく必要があります」

「都市」と「快適」2つのコンセプトカー

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冒頭に述べたように、シトロエンは今回、2つのコンセプトカーを展示した。どちらもEVという点では同じだが、性質は大きく異なる。

シトロエン・プロダクトディレクターのグザヴィエ・プジョー氏は、今回のコンセプトモデルが「シトロエンの伝統的なDNAに基づいて作られている」と話す。

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シトロエン・プロダクトディレクターのグザヴィエ・プジョー氏。後ろに展示されているのがコンセプト車両19_19だ。

プジョー「2つのコンセプトカーは、シトロエンのルーツに基づいて開発されています。それは“デザイン”と“快適さ”です。今求められている要素を考えた時、まったく違う2つのコンセプトが必要と考え、それぞれデザインしました。

現在の都市は、東京であれパリであれ、同じような問題を抱えています。交通渋滞が激しくて、駐車場を探すことすら難しい。ですが、『Ami One Concept』のようなコンパクトな車であれば、こうした都市の問題に対応できると思います」

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都市向けのコンパクトEVのコンセプトカー「Ami One Concept」。

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ピュアEVであり、ワイヤレス給電機能も搭載。

一方、次の「19_19 Concept」はまったく違うコンセプトだという。

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今回初公開のコンセプトカー「19_19」。前後4輪がすべてモーター駆動で、最高時速200km、航続距離は800kmという高性能EV。もちろんAIによる自動運転を備える。

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いかにもコンセプトカー然とした外観。SUV風の大きなホイールに、スポーツカーのような平べったいキャビンを組み合わせた独特のSF的なデザイン。

プジョー「都市から抜けだし、リラックスする“脱出の喜び”のために作ったのが『19_19』です。完全なEVで、AIを搭載していますが、800kmの航続距離をもっています。ただし、これは将来のコンセプトであり、目標です。

快適さは不可欠です。快適さとは、単に席の座り心地や、サスペンションの効きだけを指すものではありません。もちろん、私たちは最新のサスペンション技術もシート技術も採用しています。

しかし『快適さ』にとっては、車内での『コネクティビティ』も重要ですし、車内のストレージも重要。シトロエンのドアを開けた先がラウンジのようであり、家から家へ移動するような感覚になる。それをどう実現すべきか、ということが、我々のキーメッセージなのです」

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居住性を重視し、広く大胆なレイアウトの車内になっている。車両運行に必要な情報などは、フロントディスプレイに投射されるようになっている。

コンパクトEVは、ますます「サービス化」していく

こうしたコンセプトを提示する裏には、一つの明確なビジョンが存在する。それは、人々が都市型の生活をしていく、という想定に基づく、コンパクトなEVのあり方だ。

ジャクソン「2050年には、世界の人口の68%が都市に住む、と予想されています。こうした状態の中で移動することを考えたのが『Ami One Concept』です。

同時に、それらの人々の60%が“週末には街から出たい”と思っている。こちらで使うのが『19_19』です。

一方、Ami One Conceptは、単なる小型EVではありません。すべての消費者が、シンプルに自動車をほしいと思っているわけではありません。ある人々は自動車がほしいのではなく“移動の手段”がほしいのです。

この車では、顧客のすべての移動に関する情報を、スマートフォン経由で管理することができます。この車(Ami One Concept)は、カーシェアリングで5分間だけ使うこともできれば、5時間・5日間・5カ月間と、好きな時間だけ使うことができます。もちろん、購入して5年間所有することもできますが」

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Ami One Conceptはスマホ連動を前提にしており、コクピット部にはスマホを差し込む部分もある。

要は、コンパクトな都市型EVの場合、従来通りの「所有する自動車」の枠組みを超え、必要な時だけ使う「自動車=サービス」(Mobility as a Service、MaaS)に近づいていく、ということだ。

ジャクソン「もちろん、大型車をサービスとして使うこともあるでしょう。ですがコンパクトカーでは、より多くのサービスが必要とされています。短い時間だけシェアしたり、駐車スペースを探したり、充電ステーションがどこかを探したり。それらはすべて関連した事象です。

駐車スペースの問題もあって、都市に住む人は自動車を所有したくない、と考えるかもしれません。しかし、“街を移動する”必要はあります、歩き回る必要があります。だから移動を管理するために、アプリが必要なんです。公共交通機関を使い、一部をカーシェアにしたいときもあるでしょう。車とスクーターを組み合わせて使いたいときもあるはずです。そういう“自由な移動”の管理のために、サービス連携が不可欠になります」

サービス化する自動車という発想は、自動車メーカーにかなり広がりつつある。日本でも、トヨタがソフトバンクと組んで新会社「MONET Technologies」を設立し、そこにホンダや日野自動車も出資することになった。自動車メーカーとIT企業が組んでプラットフォームを作っていくことについて、ジャクソンCEOは「必然であり、重要なこと」と理解を示す。

ジャクソン「IT企業との連携は、正しい、必須のものだと思います。我々も2016年に、グループ内に『Free2Move』という会社を設立しています。この会社はカーシェアなどのモビリティサービスを世界中で展開することを目的とした企業です。

我々のグループは“優れた自動車メーカーになりたい”と考えていますが、同時に“優れたモビリティプロバイダーになりたい”とも考えています。そのために設立したのがFree2Moveです。

Free2Moveでは、街でシェアする車を見つけるためにも使えますし、電動スクーターのシェアを探すためにも使えます。複数台の自動車を運用する企業顧客、いわゆる“フリートカスタマー”にも対応できますし、自社専用のアプリを持つこともできます。

現在、マドリードや中国、ワシントンなどでカーシェアリングを展開中です。モビリティサービスは、今や私たちのビジネスにとって非常に重要な部分です」

では、シトロエンはFree2Moveを日本にも広げる計画があるのだろうか。答えはシンプルに「イエス」だ。

ジャクソンはい、日本でもFree2Moveを展開する計画があります。ただし、他の地域でのビジネスが確立してから、徐々にビジネスの範囲を拡大したいと考えています」

(文、写真・西田宗千佳)

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