Reuters
- 料理デリバリーのデリバルー(Deliveroo)はイギリスで最も注目され、最も評価額の高いスタートアップ。評価額は少なくとも20億ドル、アマゾンなどからの5億7500万ドルの調達により、もっと高くなっただろう。
- Business Insiderは同社の評価額は少なくとも40億ドルに達したと考えている。
- 同社は元銀行アナリストで、テイクアウト料理の選択肢の少なさに怒っていたウィル・シューが創業した。
- ウーバーは以前、デリバルーの買収の検討を始めたと伝えられた。だが実現しなかった。
いつでも、どこでも、食べ物を届けてくれるアプリ。
誰もが思いつくコンセプトだった。デスクで潰れたサンドイッチを食べている人ならきっと誰でも思いついたはずだ。
デリバルー(Deliveroo)の共同創業者兼CEOのウィル・シュー(Will Shu)もそう理解していた。このアイデアは「難しいものではなく……誰でも思いつくもの」と彼は2017年、イギリスの新聞「アイ(i)」に語った。
だが、2013年、シューと共同創業者のグレッグ・オーロウスキー(Greg Orlowski)はサービスを徹底的にシームレスにすることで、誰もが思いつく夢を現実にした。そして2019年5月17日(現地時間)、2人のシンプルなアイデアは大きく実を結んだ。同社はアマゾンなどからの5億7500万ドル(約630億円)の調達を発表した。
デリバルーのアプリを使うと数千店のレストランからのデリバリーが可能となる。その多くは、アプリが登場する以前はデリバリーサービスを行っていなかったレストラン。デリバルーの最終目標はレストランからのデリバリーを簡単にすることだけではなく、家庭での料理の手間をなくすことだ。
同社はフードデリバリーに革命をもたらした。今回の調達以前、同社の評価額は20億ドル、数十億ドルでのウーバーへの売却も噂されていた。アマゾンからの調達により、同社の評価額はおそらく20億ドルを超える。
道のりは容易なものではなかった。シューらはデリバリーを担当するフリーランス・ライダーの権利や低収入といった難しい問題に取り組まなければならなかった。
デリバルーのここまでの道のりを見てみよう。
2001年:デリバルーの創業者ウィル・シューはニューヨークのモルガン・スタンレーでアナリストとして働いていた。長時間働き、遅くなった時は同僚と25ドルのテイクアウトを食べた。
Deliveroo
2004年:シューはロンドンのオフィスに移った。そこではテイクアウトに費やす余裕がなくなった。毎晩、地元スーパーのテスコ(Tesco)で食べ物を買って帰り、悲惨な夜を過ごした。Startups.co.ukによると、彼は「本当に気分が滅入った」と語った。
REUTERS/Toby Melville
2006年後半:シューはヘッジファンドで働いていた。収入も上がった。Just Eatなどのテイクアウト市場は生まれていたが、まだ物足りないものだった。「カスタマーエクスペリエンスが良くなかった」と彼は語った。
napocska/Shutterstock
2007年後半:もっとうまくできると確信し、シューは学校時代の古い友人で開発者のオーロウスキーに連絡した。2人はデリバルーの最初のバージョンを作った。だがうまく行かなかった。その理由の一部は、スマートフォンが登場してまだ間もなかったこと、アプリはまだ普及していなかった。
初代iPhoneは登場したばかり。シューはまだアプリを想定していなかった。
AP
2010年6月:シューはアメリカに戻り、ウォートンでMBAを取った。「2年間、飲んで、あてもなく過ごした。だが考える時間はあった」。
The Wharton School/Facebook
2012年8月:アップルはiPhone 5をリリースしようとしていた。App Storeはスタートから4年が経っていた。iPhone以外のスマートフォンも登場していた。コンセプトを実現することに戻る時期が来た。
iPhone 4とiPhone 5。
Reuters/Yves Herman
2013年2月:シューとオーロウスキーは再びデリバルーを開発するためにチームを組んだ。場所はシューのチェルシーのアパート。2人は料理を配達するために大勢の人員が必要となること、アプリを使ってコミュニケーションする必要があることを理解していた。だが2人は支持を得ることに苦戦した。
Sandip Bhattacharya/Flickr
2013年2月:シューによると、懐疑的な人たちは彼に、イギリス人は良い料理をデリバリーして欲しいとは思わないと語った。
Flickr/Saaleha Bamjee
2013年半ば:シューはデリバルーの1人目の「ライダー」として働いた。レストランから料理をピックアップし、顧客に届け、ライダーを実際に体験した。伝えられたところによると、彼の友人たちは元アナリストが配達員として働いている姿を見るためだけに料理を注文した。
ライダーのユニフォームを来たシュー。
Deliveroo
2013年半ば:フォーブスによるとシューは元上司にピザを配達した。元上司は、シューが大変なことになっていると思った。シューは「大丈夫です」と言い、説明せずに立ち去ったと語った。
Yelp
フォーブスによると、シューはデリバリーの実情をより理解するために、1日6時間スクーターに乗った。
2014年6月:わずか3店のレストランでサービスをスタートした後、デリバルーは最初の資金調達を実施、275万ドルをIndex VenturesとHoxton Venturesから調達した。この資金調達で同社は成長企業として注目を集めることになった。
初期のメンバー。シューは前列中央、真ん中でカンガルーの格好をしているのがオーロウスキー。
Index Ventures
2014年後半:デリバルーは初めてロンドン以外の都市、ブライトン(Brighton)にサービスを拡大した。
Vladislav Gajic / Shutterstock
2015年:デリバルーは再び資金調達を行い、海外に展開した。4月までにパリとベルリンでサービスを開始、美食の街パリでサービスは驚くほどうまく行った。
Flickr / Alpha
2015年後半:サービス開始からわずか2年でデリバルーはユニコーンに近づき、評価額は6億ドルを超えた。だが10億ドルを超え、ユニコーンになるには1年以上かかると思われた。
Sean Gallup/Getty Images
2015年12月:逆風が生まれた。デリバルーは配達のために数百人のライダーを抱えていた。だが同社はライダーを直接雇用していない。同社はギグエコノミーにおける報酬と労働条件という新しく生まれた議論に巻き込まれた。
Sam Shead/Business Insider UK
ガーディアンはデリバルーの低い報酬と劣悪な労働環境を批判した。
2016年2月:デリバルーの共同創業者グレッグ・オーロウスキーはひそかに同社を去った。彼は母親のためのミーティングアプリ、ピーナツ(Peanut)の共同創業者となった。
Peanut
2016年5月:デリバルーは、レストランがより多くのテイクアウト・オーダーに対応できる野心的なプランの検討を始めた。大きなコンテナを駐車場に置き、デリバルー専用のミニキッチンに変えるというプランだ。
James Cook/Business Insider
2016年8月:デリバルーは2億8500万ドルを調達、ユニコーンに近づいた。同社はイギリスのテック系スタートアップで最も勢いのある企業となり、ユーザーに愛される企業となった。
Deliveroo
2016年9月:同社は可愛い、マンガチックなカンガルー・ロゴをやめ、幾何学的で抽象的なロゴに変更した。新しいロゴは無作法な2本指のジェスチャーのようにも見えると考える人もいる。
新しいロゴもカンガルーをモチーフにしている。
Deliveroo
2016年9月:フェイスブックの元プロダクト・マネジメント・ディレクター、マイク・ハダック(Mike Hudack)が新しいチーフテクノロジー・オフィサーとして加わった。
Mike Hudack
2016年11月:ギグエコノミーを取り巻く問題は同社を直撃。ギグエコノミー・ワーカーを対象とした独立系労働組合IWGBは、デリバルーに新しい雇用条件の承認を求めた。
PA Images
2017年1月:デリバルーはイギリスの元財務大臣ジョージ・オズボーン(George Osborne)の元政治顧問テア・ロジャース(Thea Rogers)を雇用、同社の成長を政治的な視点から監督することがその役割。
Deliveroo
2017年1月:ギグエコノミー企業に対抗して成功を収めてきた法律事務所Leigh Dayは、デリバルーに対し、ライダーの権利について訴訟を起こす準備があると発表した。
REUTERS/Charles Platiau
2017年4月:デリバルーは老舗レストランのためのテイクアウト専用の簡易キッチン「Deliveroo Editions」を発表。
Business Insider/James Cook
2017年7月:新しいロンドン本社に移転。ジム、吹き抜けの「センターコート」と呼ばれる会議スペースがある。
大人数でのミーティングに使われるセンターコート。スポーツ用ではない。
Deliveroo
2017年7月:スカイニュース(Sky News)はソフトバンクが同社への出資を検討していると伝えた。だがこれは実現しなかった。おそらく、ソフトバンクがデリバルーのライバル、ウーバーに出資していたことがその理由。
ソフトバンクはウーバーの大株主。ウーバーはデリバルーの競合サービス、ウーバー・イーツを運営している。
Koki Nagahama/Getty Images
2017年9月:取締役のマーチン・ミグノット(Martin Mignot)が同社の最終目標を明らかにし、大きな話題となった。同社の最終目標は家庭での料理をなくすこと。同社は家庭での料理よりも、テイクアウトをより簡単に、より安価なものにすることを目指している。
Index Venturesのパートナーでデリバルーの取締役、マーチン・ミグノット。
Index Ventures
2017年9月:デリバルーはフィデリティ(Fidelity)、ティー・ロウ・プライス(T Rowe Price)といったアメリカの大手ファンドから3億8500万ドルを調達。評価額は20億ドルに達し、イギリスで最も評価額の高いスタートアップの1つとなった。
AP / Leo Correa
2017年10月:ガーディアンは、デリバルーは自治体に期間限定キッチンを作る許可を得ておらず、近隣の住人は騒音に不満を述べていると伝えた。
Deliveroo
2017年10月:ライダーを従業員として扱うことになれば、成長できないだろうとデリバルーは述べた。
同社のイギリス担当マーケティング・ディレクター、ダン・ウォーン(Dan Warne)。
UK Parliament
2017年11月:シューは、株式公開は「割と論理的」なこととBusiness Insiderに語った。投資家たちはもちろんリターンを望んでいた。
Reuters/herval
2017年11月:同社は労働組合IWGBとの法的な争いに勝利した。裁判所は、デリバルーはライダーを労働者と見なす必要はないとした。シューは政治家、ジャーナリストにはライダーの権利に関して多くの誤解があるとBusiness Insiderに語った。
Getty
2018年3月:コスト削減のための大胆なプランが明らかになった。報道によると、同社はコスト削減のために最終的に自社で料理を提供することを計画している。
Prarinya/Shutterstock
2018年5〜8月:デリバルーはライダーの福利厚生に注力。事故時の補償、救急訓練、世界的な医療保険などの提供を開始した。
Deliveroo
2018年5月:デリバルーは有名シェフと提携し、新しい実験的なコンセプトを実現するために650万ドルを投資すると発表した。
Ivana Lalicki/Shutterstock
2018年6月:すでに世界12カ国で事業を展開するデリバルーは、シューの元々の競争相手であるJust Eatを買収し、イギリスでの事業を拡大すると発表。買収により、5000以上のレストランがデリバルーのアプリに加わった。
Deliveroo
2018年9月:急速な成長にもかかわらず、デリバルーはまだアメリカではサービスを展開していなかった。
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2018年9月:メディアはウーバーがデリバルーの買収の検討を始めたと伝えた。買収額は同社の評価額である20億ドルを上回ると予想された。
ウーバーのダラ・コスロシャヒCEO。
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2019年5月:ウーバーとの話はなくなった。だがアマゾンが同社への5億7500万ドルの投資に参加。この巨額の投資により、当面はIPOの必要性はなくなった。またアメリカからの投資は待ち望まれたものだった。デリバルーはイギリス最大のテック系ユニコーンとなり、評価額は40億ドルを超えた。
アマゾンのジェフ・ベゾスCEO。
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デリバルーには現在、8万を超えるレストランが参加している。また同社によると、世界中に6万人のライダーと2500人の従業員を抱え、オーストラリア、ベルギー、フランス、ドイツ、香港、イタリア、アイルランド、オランダ、シンガポール、スペイン、台湾、アラブ首長国連邦、クェート、そしてイギリスの500以上の都市でサービスを展開している。
Reuters
※敬称略
(翻訳、編集:増田隆幸)