性暴力反対「フラワーデモ」に集う男たち 「痴漢の実態も知らなかった」無罪判決に抗議

フラワーデモ

東京駅で演説をする男性。「性暴力は人ごとではない」と話す。

性暴力に関する裁判で、無罪判決が相次いでいることへの抗議と、性暴力の撲滅を訴える「フラワーデモ」が、全国へと広がりを見せている。

2回目となった5月11日には、大阪をメイン会場に東京、福岡でも多くの人が参加。自分の住む町で、花を手に街頭に立ったとの報告もあった。SNS上には、デモのシンボルである花の写真に「#フラワーデモ」「#MeToo」などを付けた支援表明のツイートが多数投稿された。

デモ参加者の中には、男性の姿も目立った。参加した1人は「声を上げなければ、同じような人権侵害を男性も被ることになる」と話した。

「痴漢の実態知らなかった」驚く参加男性

フラワーデモ

「たとえ裁判所で罪として認められなかったとしても行われたことは犯罪である」と語る山本潤代表理事。

5月11日午後7時、東京駅前にさまざまな花を持った男女約150人が集まった。主催者によると、大阪市は約300人、福岡市は約50人が参加したという。

東京会場でマイクを持って発言した1人、性被害当事者らで作る団体「スプリング」の山本潤代表理事は、13歳から20歳まで実父からの性暴力を受け、その後も長いトラウマに苦しんできたという。

「 無罪判決を聞き、とても苦しかった。たとえ裁判で罪が認められなくとも、私たちは(被害者の)彼女たちを応援する。法律は厳格に適用しなければいけないと言うが、多くの被害者が起訴さえされず、社会が犯罪だと認めてくれないことに苦しんでいる」

またある女性は「専門学校生のころ、夜歩いていたら男に腕をつかまれ、車に乗せられて、被害に遭った。でも今日まで親にも、誰にも言えなかった」と打ち明けた。

フラワーデモ

フラワーデモの主催者は毎月11日、継続的にデモを行うという。次回は6月11日、福岡をメイン会場として前回と同じ3都市で実施される予定だ。

東京会場には参加者の1割程度だが、男性の姿もあった。

ある男性は聴衆の前で、こう話した。

「女性の多くが、電車の中で痴漢に遭っているなんて、デモで発言を聞くまで知らなかった。自分も無意識に、女性を傷つけているかもしれない」

少数派ながら、参加した男性たちはどんな思いがあるのだろうか。Twitterの投稿を見て東京会場を訪れたという男性(33)は、

「このまま女性の問題だと考えて声をあげずにいたら、男性の人権も同じように侵害されていくのではないか。これは『自分ごと』です」

と語った。

同じく東京会場に参加した男性(53)は、祖父母から「お前は武士の家の子だ」などと言われ、男尊女卑の空気が濃い家の長男として育てられたという。

「自分自身の中にある差別意識を塗り替えたい。今はうわべだけかもしれないが、デモなどへの参加を20年続ければ、本物になるかもしれない」

弁護士、専門家からも無罪判決批判

悲しむ女性

被害者心理に漬け込んだ性暴力は声を上げづらい。裁判を起こせるのはごく僅か(写真はイメージです)。

Shutterstock:Khaoniewping

フラワーデモのきっかけとなったのは性暴力被害の裁判で立て続けに4件の無罪判決が出たことだ。この一連の判決に対しては、被害者支援に携わる弁護士や治療の専門家からも、「被害者の実態にそぐわない」と批判の声が上がっている。

例えば、静岡地裁浜松支部では、通りすがりの女性を暴行しけがを負わせたとして、強制性交致傷罪に問われたメキシコ国籍の男性(45)に無罪が言い渡された。判決によると裁判官は、被害者が暴行を受けた時「頭が真っ白」になり、「被告から見て明らかに分かる抵抗は示せなかった」ことを、無罪の理由に挙げている。

これについて性暴力に詳しい上谷さくら弁護士は、

「性暴力の被害者が『フリーズ』と呼ばれる無抵抗状態に陥ることがあるのは、支援現場では常識。『明らかに分かる形』で抵抗できなければ無罪、という事実認定はおかしい」

と指摘する。

また名古屋地裁岡崎支部では、19歳の娘に性的虐待を繰り返していたとして、準強制性交等罪に問われた父親が無罪となった。判決は、父から娘への性的虐待そのものはあったものの、被害者は抵抗できなくなるほどの身体的な暴力や支配を受けておらず、犯罪としては成立しないと結論付けた。

しかし、臨床心理士の齋藤梓氏は、家庭内の被害者について「ばれたら家族が壊れてしまう、と思い秘密にする中で性的虐待が繰り返され、『どうすることもできない』という無力感が強まり、抵抗できない状態に陥る」と説明する。

「そもそも抵抗できないことが、親子などの関係性を利用した性被害の大きな特徴であり、裁判官はそれを踏まえて判断すべきだ」

裁判官に与えた影響

2017年には刑法が改正され、性犯罪の厳罰化などが実現した。

だが、ある弁護士はこの刑法改正が、今回の無罪判決に影響を与えた可能性もあると指摘する。

「4件の無罪は、刑法改正前よりも性犯罪の認定基準が明らかに高い。法改正後、検察は、従来立件しなかったケースを起訴し始めた。これに伴い裁判官は、より厳格に事実認定をしようとしたのではないか。裁判官の経験則や知識が、実態に追いついていないと思う」

この弁護士は「社会的な批判が高まらなければ、これが“相場観”として定着してしまう恐れもある」とも懸念する。

MeToo

ここ1、2年世界で高まりを見せる#Metoo。その中で起きた性暴力への無罪判決に、

Shutterstock:Sundry Photography

一方、Twitter上では一部の弁護士から、デモについて「判決文を読まずに感情的に騒いでいるだけ」などの批判も続いている。しかし、上谷弁護士は言う。

「法律の構成要件など近視眼的な判決の評価ではなく、『父が娘をレイプして無罪などという事態が、まかり通っていいのか』という、一般市民の感覚こそが出発点だ。検察が立証を尽くしてもなお、素人がおかしいと思う判決には、判決か法律そのものか、どこかに歪みがある」

長年、セクハラ訴訟などに取り組んできた角田由紀子弁護士も、「スウェーデンでは、ある訴訟の判決を批判する女性たちが立ち上がって大規模なデモが行われ、刑法性犯罪規定の改正を後押しした。日本でも、一連の無罪判決が社会から忘れられることを、許してはいけない」と訴える。

(文・写真、有馬知子)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み