Antonio Villas-Boas/Business Insider
- ファーウェイは独自のモバイルOSを開発しているようだ。グーグルとの関係が悪化した場合に備えた「プランB」と同社は以前、述べた。
- ファーウェイはアメリカ政府が同社を貿易に関するブラックリストに載せたことを受けて、グーグルのモバイルOS「アンドロイド」の一部へのアクセスを禁じられた。ファーウェイにとっては、独自OSの開発を加速させる絶好の機会でもある。
- ファーウェイの独自OSについてはほとんど分かっていない。だが名前は「HongMeng OS」と伝えられた。
- 仮にファーウェイが素晴らしいモバイルOSを開発できたとしても、アプリ開発者たちに、ファーウェイ独自のモバイルアプリストアに人気のアプリを提供しようと思わせることが必要となる。
ファーウェイは、アメリカ政府が同社を貿易に関するブラックリストに載せたことを受けて、グーグルのモバイルOS「アンドロイド(Android)」の一部へのアクセスを禁じられた。
ファーウェイ製端末が全面的に禁止されたわけではないが、ブラックリストへの掲載は今後、ファーウェイ製端末に影響を及ぼす可能性があり、既存のファーウェイ製端末はアンドロイドのアップデートが提供されなくなる可能性がある。
アンドロイドOSがなければ、ファーウェイ製端末はガラスとシリコンチップでできたただの板。アンドロイドOSは、すべてのアンドロイド・スマートフォンの機能的な基盤となっているだけでなく、Gmail、YouTube、Google Mapsといったグーグルの人気アプリと、増え続ける人気サードパーティー製アプリがすべて揃ったGoogle Play Storeの提供基盤となっている。
アンドロイドOSが使えなくなる可能性に備えて、ファーウェイは自社製スマートフォンで動作する独自のモバイルOSを開発しているようだ。
これまでに分かっていることを見てみよう。
独自モバイルOSの名前は「HongMeng OS」
Eric Gaillard/File Photo via Reuters
ファーウェイの独自モバイルOSは「HongMeng OS」と呼ばれていると、政府系英字紙Global Timesは国内メディアの報道を引用してツイートした。
HongMeng OSはおそらく以前、同社が言及した「プランB」のOS
Antonio Villas-Boas/Business Insider
HongMeng OSは、ファーウェイの「プランB」のOSになり得ると同社コンシューマー・ビジネス・グループの責任者リチャード・ユー(Richard Yu)は2019年3月、ドイツのニュースサイトDie Weltに語った。
ファーウェイはHongMeng OSを2012年から開発しているようだ
Sean Gallup/Getty Images
中国の情報筋が引用したファーウェイのニュースサイトHuawei Centralによると、HongMeng OSは2012年から7年間にわたって開発が進められているようだ。
独自OSの開発にかかわらず、同社には対処すべき大きな問題がある
Antonio Villas-Boas/Business Insider
同社コンシューマー・ビジネス・ソフトウエア・エンジニアリングの社長、Wang Chenglu氏は2018年9月、OS自体の開発は難しくないが、ファーウェイ製モバイルOSにとって最大の問題となるのはエコシステムとアプリのサポートと中国メディアに語った。
スマートフォンには健全なエコシステムが絶対に必要、特にアプリにはエコシステムは不可欠。アプリのサポートがなければ、スマートフォンへの新規参入者にとっては死も同然。マイクロソフトのウインドウズフォンでは、これが常に最大の問題だった。
マイクロソフトにとっては、終わりの見えないサイクルだった。ウインドウズフォンはマーケットシェアが最も小さかったため、アプリ開発者はウインドウズフォン向けアプリの開発に時間とお金を費やそうとはしなかった。また人気アプリがウインドウズフォンで利用できるようになるまでには時間がかかった ── つまり、ウィンドウズフォンは常にシェア獲得に大きな問題を抱えていた。
サムスンも2015年に自社開発OS「Tizen」を搭載したスマートフォンの提供に取り組んだ。言うまでもなく、サムスンのTizen搭載スマートフォンはほとんど人気がない。Ars Technicaはレビューに「印象はなかった。アプリのない、アンドロイドのコピーのようだった」と記した。おそらくファーウェイのOSも似たようなものだろう。
独自OSは中国では実際、問題ないだろう。だが、他の国ではファーウェイ製端末の魅力は低下する
Reuters/Edgar Su
中国のスマートフォンユーザーはすでにアンドロイド・スマートフォンをGoogle Play Store(グーグル製アプリや人気サードパーティアプリが揃っているストア)にアクセスせずに使っている ── Google Play Store とグーグル製アプリは中国では禁止されているためだ。
しかし、Google Play Storeにアクセス可能で、グーグル製アプリと数多くの人気サードパーティアプリが存在する他の国では、消費者は欲しいアプリにアクセスできないファーウェイ製スマートフォンをほぼ使わないだろう。
グーグルのサポートが得られないことは、同社の世界的なスマートフォンビジネスに大きな影響を及ぼす可能性がある。世界第2位、もしくは第3位のスマートフォンメーカーという現在の地位は危うい。
複数の報道によると、ファーウェイのスマートフォンは、同社独自のEMUIインターフェイスを備えたアンドロイドのベーシックバージョンで動作する可能性がある。だがこれは同社にとっては大きな変化ではない
Shona Ghosh/Business Insider
ファーウェイがオープンソースのベアボーン版アンドロイドを採用する可能性はある。ファーウェイ製スマートフォンでは、アンドロイド上で「EMUI」と呼ばれる同社の独自インターフェイスが動いており、一般的なスマートフォンユーザーはグーグルによる禁止措置に気づかない可能性もある。ファーウェイは、少なくとも中国の消費者にとっては、通常通り、ビジネスを再開できるだろう。
だが、新機能、将来のアップデート、アンドロイドの新バージョンに対するグーグルの積極的なサポートがなければ、ファーウェイは今後登場するスマートフォンにハイエンドな機能を搭載するという、より大きな負担に直面することになる。
グーグルとアンドロイドの直近の開発が、期待の折りたたみスマートフォン「Mate X」にどのような影響を与えるかもまだ分からない
Reuters
グーグルのサポートは、期待の折りたたみスマートフォン「Mate X」に搭載されるアンドロイドの開発にとっても重要なものだった。
しかし今、ファーウェイは開発を自社で行わなければならなくなった。同社の通常のスマートフォンだけでなく、折りたたみスマートフォンが今後どうなるかもまだ分からない。
(翻訳、編集:増田隆幸)