関税は大量閉店につながる可能性も。
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- 中国製品の関税の引き上げは、1年で1万2000店舗の閉店と400億ドル以上の売り上げをリスクにさらす可能性があると、UBSのアナリスト、ジェイ・ソール(Jay Sole)氏は顧客向けのメモに書いた。
- ソール氏は、「市場はいかに多くの小売店が苦しんでいるか、いかに25%という関税が大量閉店につながりかねないか、気付いていない」と指摘する。
- 商業不動産会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(Cushman & Wakefield)によると、大手チェーン店の閉店は、9000店舗近くが姿を消した2017年がピークだった。2019年に入って、これまでに6400以上の店舗が閉店を発表している。
UBSの調査によると、中国との貿易摩擦は、アメリカがこれまで経験したことのないような大量閉店のきっかけになる恐れがある。
中国製品の関税の引き上げは、1年で1万2000店舗の閉店と400億ドル以上の売り上げをリスクにさらす可能性があると、UBSのアナリスト、ジェイ・ソール氏は顧客向けのメモに書いた。
ソール氏は、「市場はいかに多くの小売店が苦しんでいるか、いかに25%という関税が大量閉店につながりかねないか、気付いていない」と指摘する。
アメリカの店舗閉鎖率はすでに加速していて、第1四半期にはここ10年で最も高い数字となった。背景には、eコマースの台頭や、消費者のアパレルやフットウェアにお金をかける「気のなさ」の広まりがあると、ソール氏は言う。
同氏は、「そこそこの実店舗がすでにストレスの兆しを見せている」とした上で、こうした店は「eコマースの台頭により、来店者数や利益率の低下に負けつつある」と付け加えた。
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トランプ大統領は最近、2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げ、残り全ての中国製品にも25%の関税を課すと警告した。これらの輸入品にはアパレルやフットウェアも含まれる。
関税の引き上げは、中国から製品を輸入している企業の売上原価を上げる。ウォルマート(Walmart)など、一部小売業は関税の引き上げにより、消費者への販売価格を上げざるを得なくなると警告している。
アメリカでは近年、小売店が大量閉店していて、「小売業の崩壊」として知られている。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、大手チェーン店の閉店は、9000店舗近くが姿を消した2017年がピークだった。
2019年に入って、ペイレス・シューソース(Payless ShoeSource)やジンボリー(Gymboree)、ファミリー・ダラー(Family Dollar)、シャーロット・ルッセ(Charlotte Russe)など、これまでに6400以上の店舗が閉店を発表している。
大量閉店の波が業界を一変させる
1万2000店舗のさらなる閉店は、「非常にマイナスだ」とソール氏は書いている。
短期的には大幅な値下げが横行し、健全な小売業者にまで悪影響を及ぼし、小売業界の様相を一変させるだろうと、同氏は指摘する。
さらに、苦戦を強いられている一部のショッピングモールを崩壊に追いやる可能性もあり —— こうしたモールに入っている健全な小売業者にさらなるプレッシャーを与える —— 大量失業によって、経済全体を圧迫しかねない。
しかし、長期的に見れば、大量閉店は生き残った小売業者にアドバンテージを与える可能性がある。
大半のリテール・アナリストや専門家は、アメリカは依然として、1人あたりの店舗数が多すぎると指摘している。
UBSは、2026年までに2万1000近くの店舗が閉店する必要があると見ている。ソール氏によると、中国製品の関税引き上げは1年でその半数以上の閉店につながりそうだ。
(翻訳、編集:山口佳美)