金融業界の女性へのいじめ、セクハラは全業種平均上回る。今なお男女格差も

PwCが5月20日に公表した「Seeing is believing: 金融サービス業界で働く女性の活躍を阻む壁」によると、金融業界でのいじめやハラスメントの発生率が全業界の平均を上回っていること、また金融業界の女性は他の業界で働く女性に比べ、組織内におけるキャリアの展望に悩みを抱えている割合が高いことが、明らかになった。

PwCは2018年に世界のさまざまな業界で正社員として働く女性3627人を対象に調査を実施。このレポートはその一環として、金融業界で働く28〜40歳の正社員の女性290人を対象とした調査結果をまとめている。

4割がいじめを経験

働く女性

金融業界で女性の活躍を阻む壁とは一体何か。

撮影:今村拓馬

調査によると、いじめやハラスメントの問題の項目で、金融サービス業界は全産業平均を上回っていた。

金融サービスで働く女性のうち、「不適切な言葉、侮辱、あるいはいじめを経験したことがある」と回答したのは半数近くの43%。全産業平均の34%を、10ポイント近く上回る。

「性的なほのめかし、あるいはセクシュアルハラスメントに遭ったことがある」(金融サービス36%)「実際に身体的ハラスメントを経験したことがある」(金融サービス28%)と答えた女性の割合も、全業界の平均を、それぞれ10ポイント以上も上回る結果に。

金融業界において、女性が安心して働ける環境が整っていないことが浮き彫りになった。

アイデアが別の人の功績に

ダイバーシティの進捗状況も芳しくない。

金融サービスで働く女性のうち「従業員のダイバーシティの状況(性別、年齢など)が組織内のキャリアアップの障害となり得る」と答えたのは54%で過半数を超え、全業界の女性の平均を、10ポイント近く上回った。

また、金融サービスの女性の6割ほどが「会議中に説き伏せられた/無視された経験がある」「会議において自身が想起したアイデアが別の人の功績になった」と回答している。

多くが「母親の育児ペナルティ」を経験

子育て

金融業界の女性の過半数が、子育てがキャリアに及ぼす影響を懸念している。

撮影:今村拓馬

安心して子育てができない環境になっているのも問題だ。

「子どもを持つことがキャリアに及ぼす影響について懸念している」と回答した金融業界の女性の割合は53%で、全業界の女性の平均42%を、大きく上回った。

さらに、「育児や介護を行うものとしての女性に対する期待が、雇用主による女性への偏見を抱かせていると思う」と答えた金融業界の女性は63%。「出産後職務やキャリアに貢献していないとみなされた」「キャリアアップの機会を逃した」と感じた割合も、軒並み過半数を超えた。

女性の働きにくさは各国に共通

働く女性

世界中の金融業界の女性が、業界の働きにくさに苦んでいる。

GettyImages

金融業界における女性の働きにくさは、世界各国で共通している特徴のようだ。レポートの中には各国の金融業界で働く女性の生の声が寄せられている。

「女性は今なお蚊帳の外に置かれており、適切な賃金を得ていません」(シンガポール)

女性は男性より評価されにくい、との声も。

「公式な場所では、より多くのアイデアを提案しなくてはなりません。そうでないと、耳を傾けてもらえないからです」(イギリス)

男女間で求められる役割に差がある。

「たとえ高い役職にあっても、女性は会議の日程調整を行い、机を拭くといった業務を行う秘書であるという意識が今なおあると感じます」(アメリカ)

子育てがキャリアアップの障害になる現状。

「産休や育休制度は整備・利用されていますが、実際にそれを自分が使った場合、現在の部署に復帰できるかどうか不安です。私のキャリアアップに少 なからず影響すると思います。このような不安を抱かずに働けるように環境の改善が必要です」(日本)

柔軟な働き方が求められている。

「働き方の柔軟性は、従業員にとっても、従業員の最大限の活躍を望む経営者にとっても重要です。組織は成果を評価すべきであり、勤務時間を評価する必要はありません」(南アフリカ)

日本でも女子学生に「蹴られる」銀行

就活生

今回の調査では、時代の変化に対応できていない金融業界の姿が浮き彫りになった。

撮影:今村拓馬

Business Insider Japanでは過去に、女子学生の間で、銀行で窓口業務などを担ってきた一般職人気が低下していることを報道。

「人工知能(AI)が発達して将来的になくなるかもしれない、しかも長時間労働でお堅い雰囲気の企業(銀行)に行くのはメリットを感じません」と話す女子大生や、銀行の一般職で働く女性たちが、転職や留学などで銀行から抜け出そうとしている姿を取材した。

実際、就職支援大手のディスコが2019年卒業予定の学生を対象に行った就職希望企業の調査でも、特に女子学生の間でメガバンク人気が低下している。さらに女性に限らず、メガバンク出身の若手社員の転職者も急増している。背景には、AIの活用による業務の見直しや、フィンテックの台頭といった、金融業界を取り巻く大きな環境の変化に対する危機感がある。

金融業界の、時代の変化への対応の遅さが明らかになった今回の調査。PwCは「金融業界の企業がその方針、文化、姿勢を改める必要性を浮き彫りにしている」と、警鐘を鳴らす。

女性が安心して働けるような柔軟な環境づくりのために企業が変革を行わなければ、ただでさえ人材流出の危機にある金融業界で、女性の採用はさらに困難になるだろう。

現状のままでは、将来を担う人材不足に直面している金融業界の未来は、決して明るいとは言えなさそうだ。

(文・分部麻里)

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