2025年には、世界の労働人口の75%を占めるようになる35歳以下層。日本でも彼らの考える「働き方改革」を、発信しようという動きが生まれている。
撮影:今村拓馬
長時間労働で知られる日本社会でも近年、働き方改革が盛んに言われるようになったが、ミレニアル世代(1980年代~2000年代初めに生まれた世代)の考える「働き方改革」とはどんなものだろう?
2019年に日本マイクロソフトの呼びかけで発足した働き方コミュニティー「MINDS」は、JALやパナソニックコネクティッドソリューションズ、三菱地所など複数社の異業種を巻き込み、ミレニアル視点の「全ての個人が自分らしく働く社会」の実現を目指している。
20代前半から30代半ばの若手が、企業の壁を超えて横のつながりを持つことで、2020 年に向けた理想の働き方を実践するという。
終身雇用や年功序列といった、旧来の価値観が大きく揺らぎ、日本社会の「働き方」はパラダイムシフトを迎えている。こうした中、働き方や組織改革について考える組織は近年、あちこちで発生しているが、その中でもMINDSが有力な改革の種子として、注目を集める7つの理由を見てみよう。
1.ミレニアルつまり若手で構成する組織である
出典:MINDS
2025年までに世界の労働人口の75%が35歳以下になる。日本でも右肩下がりの生産年齢人口のうち、2025年ごろの35歳以下の割合は50%程度で、必然的にその存在感は増している——。
こうしたインパクトを反映し、MINDSは20代前半から30代前半の50人のメンバーで構成されている。
2.脱・大企業病を大企業の社員が目指している。
出典:MINDS
マイクロソフト社員で、MINDSメンバーの山本築さん。
撮影:今村拓馬
MINDSには、日本マイクロソフトの呼びかけで、業界を代表する大企業9社が参画している。人口構成から行けば、存在感を増していくミレニアル世代。では実際にその考えや発言が、会社という組織で生かされているのか。これについて、日本マイクロソフトのプロダクトマーケティングマネジャー・働き方推進担当の山本築さん(28)は言う。
「民間企業は層が上に厚く、若手も横のつながりに乏しい。大企業病と言われるような現状をどう打破しようかと模索する中で、異業種で横のつながりを作ろうとなりました」
ただし、若手が連携し、これからの働き方について考えるからといって「若手が若手のためにやりたい世界を作る、と言うことではありません。みんなにとって持続可能社会を作りたいのです」(山本さん)。
3.1年後に、各社や国へ働き方の提言を行うというミッションがある
定例会に参加したMINDSのメンバー。会社の壁を超えた、横のつながりが生まれている。
MINDS提供
MINDSとしての活動は期間限定だ。立ち上げから1年を迎える、2019年11月には、国への提言を行うというゴールを据えている。MINDS参加企業のうち希望する会社には、ITツール導入やコワーキングスペース導入など具体的な取り組みを実践してもらい、効果測定する。その結果は最終的に、政府への政策提言のかたちに落とし込むと言う。
4.各社の役員クラスを巻き込んだ「業務」であること
有志の集まりではなく、参加者は会社の業務の一環としてやっている。
MINDS提供
若手で組織するMINDSだが、同時に、各社の役員らによるエグゼクティブコミュニティを作っている。会社や社会に対する危機感を持つ、改革推進派のエグゼクティブが参加することで、業務として優先されること、ここで決まった内容が、会社にフィードバックされることを目指している。
5.ミレニアル世代の意識は「やりがいのある仕事」と「自由な働き方の選択」と分析
MINDSでは、1年間の活動期間中、分科会ごとに徹底したディスカッションを重ねている。
MINDS提供
MINDSでは「やりがいのある仕事」と「自由な働き方の選択」を、5つのテーマに分類。
- 現在と今後の働き方の評価軸の変化について
- 人生100年時代の働く人のスキルアップとは
- ミレニアル世代のモチベーションアップとは
- 時間・場所の制約から解放されるためには
- 働くスタイルの多様性を実現するには?
それぞれ今秋の提言に向け、アクションプランの検討と実証・検証を、8チームに分かれて重ねている。
6.目指す先は、個人と社会の幸福な関係
こうしてMINDSが目指す世界は、2つのミッションに集約されている。
①「全ての個人が自分らしく働く社会を実現する」
②「業界、会社の枠を超えたミレニアル世代から多様性ある働き方を日本社会に浸透させる」
7.効果測定を重視、持続可能でなければ意味がない
労働時間の短縮だけが、働き方改革でいいわけがない。
撮影:今村拓馬
一連のMINDSの取り組みで、山本さんは「生産性の効果測定を重視している」という。単に残業時間削減やリモートワークを行うだけでは「日本全体の生産性につながらず、結局は続かない取り組みになる」と、考えるからだ。
各業界を代表する企業の若手が集結し「日本を変えたい」という取り組みが、2020年に向けてどこまで実現するのか。今後の展開に注目だ。
(文・滝川麻衣子)