サウナ職人の想いが激アツすぎる「熱波甲子園」を見てきた

熱波甲子園のポスター。

熱波甲子園のポスター。

撮影:大塚淳史

熱波甲子園(ねっぱこうしえん)。そんな名前の熱い戦いが5月20日、横浜市のスーパー銭湯「ファンタジーサウナ&スパ おふろの国」で開かれた。名前だけ見て、何の大会か理解できる人は、かなりの「サウナ好き」だろう。

熱波甲子園とは、サウナの職人である「熱波師」たちが日本一を目指して競う大会。熱波師はサウナ室、サウナストーンに水やアロマ水をかけて水蒸気を発生させたり、タオルや団扇であおいで発生した蒸気を室内に対流させる。専門用語では「ロウリュ」という。高い技術やパフォーマンスで人気の熱波師もおり、数は少ないながらもプロもいる。

記者は東京の下町の銭湯によく行く。その行きつけの銭湯の壁に、1、2年ほど前から「熱波師来たる!」という告知ポスターを定期的に見かけるようになり、個人的に熱波師とはどんな人たちか興味を持っていた。

そんなわけで、熱波甲子園をのぞいてきた。

熱波師の技術向上のための全国大会

熱波甲子園の様子。

サウナ用タオルをあおいで少量の水入りペットボトルを何本落とせるかも競った。

撮影:今村拓馬

熱波甲子園は日本サウナ熱波協会が主催する。協会の林和俊代表は「技術向上のための業界内向けイベント。年々レベルが上がっています。大会があることで、熱波師たちが、これを目標にして、技術向上にもつながります」と大会の目的を説明する。

一方で、業界内のつながりを広げる目的もある。

「もともとサウナ店やスーパー銭湯は、各地にある銭湯協会さんと異なって、当時は団体も存在せず、あまり横のつながりがなかった。そこで協会を立ち上げ、こういったイベントを通じて、他地域の店との交流につなげてもらおうというのがあります」(林代表)

そういった背景から、2010年に第1回大会が始まり、今回で第10回を数えるまでになった。

熱波甲子園の様子。

各チームが特色あるパフォーマンスを披露。

撮影:今村拓馬

熱波甲子園の様子。

女性チームも登場。

撮影:今村拓馬

今回はスーパー銭湯や企業など18チームが参加した。午後2時、高校野球の方の「甲子園」でおなじみの入場曲が流れて、大会がスタートした。各チームは、サウナの知識を問うクイズ、タオルあおぎによる風速の計測やペットボトル倒し、そしてサウナ内でのパフォーマンスを競い合った。

特にサウナ内でのパフォーマンスは、各チームに特色があり面白い。

技術を持つ熱波師だと、タオルを巧みにあおぐとブオッ!という音と共に、こちらに強烈な熱波が届く。サウナ内にいる審査員や観覧客からも「おぉ!」と声が上がった。

熱波神社。

会場である「おふろの国」には「熱波神社」がある。

撮影:今村拓馬

一方で、今回取材するまで全く知らなかったが、熱波師とは技だけで見せるのでなく、トークなどでも魅せることを求められる。いかにサウナにいる客を楽しませるか、満足させるかが重要だそうだ。

例えば、熱波師が客に「ねーねーねー!」と声掛けし、客はそれに「ぱーぱーぱー!」と返す。客との掛け声のキャッチボールで、一体感を生み出し、不思議な高揚感を生んでいた。

初優勝した「癒しの里 小京都の湯」チーム。

初優勝した「癒しの里 小京都の湯」チーム。

撮影:今村拓馬

3時間以上にわたる熱戦の末、愛知県から参加した「癒しの里 小京都の湯」が念願の初優勝を決めた。副支配人の丹野直紀さん(34)は喜びを語った。

「店として第1回から参加していて、ずっと優勝できていなかった。優勝するぞというよりは、小京都の湯の魅力を伝えらえれたらと思いながらパフォーマンスをしました」(丹野副支配人)

熱波甲子園の様子。

初優勝した「癒しの里 小京都の湯」による「生姜焼きパフォーマンス」。

撮影:今村拓馬

丹野さんは、サウナ内に熱波を送りながら、施設内のレストランで出す生姜焼きを提供する異色のパフォーマンスを行った。サウナ内には生姜焼きの匂いが充満し、食欲をそそらされた。

「美味しいものを食べて、ご家族や友人と話すのも癒しの時間だと思う。お風呂以外の部分でも、こういう癒しがありますよという思いで生姜焼きパフォーマンスを行いました」(同)

普段サウナ内で生姜焼きを食べられるわけではないという。

19歳の新人熱波師も奮闘

熱波甲子園の様子。

「ザ・グランドスパ南大門」の村岡正貴さんは19歳。

撮影:今村拓馬

参加した熱波師は30代以上が大半だったが、10代の若者もいた。

「ザ・グランドスパ南大門」(宇都宮市)の村岡正貴さんは19歳。タオルではなく大きな団扇でひたすら一生懸命にあおいで熱風を届けた。

「前回は優勝経験のある先輩が出場して、今回は参加しないということで急遽、僕が出場しました。初めてで緊張が止まらなかったです」

審査員からその真摯な姿勢が評価されていた。

ここ数年、若者や女性を中心にサウナブームが来ている。大会参加チームからも実感している声が出ていた。優勝した「癒しの里 小京都の湯」の女将・高須久美子さんは、「うちもロウリュは男性のみでしたが、女性のお客様が増えてきて、女性もロウリュを楽しめるように提供し始めました」と話した。

参加チームの一つ、東京スカイツリーのふもとにある銭湯「薬師湯」でも、若者や女性客のサウナ利用が増えているという。

「1年前から若者、女性客のサウナ利用が増えています。おそらくきっかけは1年ほど前にテレビでサウナのことを紹介されたからだと思います。それ以前にサウナをやめようかと思っていた矢先に若者など客が増えたので良かったです」(薬師湯の店主の長沼秀三さん)

プロ熱波師が語るサウナの魅力

熱波甲子園の様子。

「社会人の部」で優勝した「大日本プロレス」。右手を掲げるのがプロ熱波師の井上勝正さん。

撮影:今村拓馬

10年に渡って熱波師として活躍する、プロの井上勝正さん(49)は、今回は大日本プロレスチームの一員として熱波パフォーマンスをして、スポンサー企業のチームなどが争う「社会人の部」で優勝した。サウナの魅力をこう語ってくれた。

「サウナに入って水風呂に入ったら、皆機嫌が良くなりますよね。仕事でカーっとなった時に、頭を冷やしてこい、って言いますけど、それと一緒ですね。あとはご飯やビールが美味しくなる!」

サウナという場所が、ただ熱い水蒸気に耐えるだけでなく、熱波師との交流や技も楽しめる場であるということを今回の取材で知った。思いもよらぬ深い世界だった。

熱波甲子園の様子。

表彰式の前には、銭湯アイドルグループ「OFR48」によるパフォーマンスが。

撮影:今村拓馬

(文・大塚淳史)

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