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- トランプ大統領がファーウェイをブラックリストに加えたことを受け、グーグルはファーウェイへのアンドロイドOSへの提供を打ち切ると発表した。
- つまり、今後発売されるファーウェイ製スマートフォンは、Google Play ストアからアプリをダウンロードできなくなり、グーグルは年間数億ドルを失う可能性がある。
- 野村インスティネットのアナリストは、グーグルは「最悪のケース」では、年間3億7500万ドル(約410億円)から4億2500万ドル(約470億円)を失うと記した。
- ウェドブッシュ証券のマネージングディレクター、ダン・アイブス氏は、年間1億5000万ドル(約165億円)から2億ドル(約220億円)と推定した。
グーグルは、ファーウェイとの関係を断つという決断をしたことで年間4億2500万ドル(約470億円)の損失を被る可能性がある。
この金額は、グーグルがファーウェイへのアンドロイドOSの提供を打ち切るというニュースを受け、株式調査会社の野村インスティネットが推定した。
今回、グーグルには選択肢はほぼない。トランプ政権は2019年5月、ファーウェイをブラックリストに加え、同社とアメリカ企業が取り引きすることをほぼ不可能にした。
つまり、今後発売されるファーウェイ製デバイスはすべて、最新のセキュリティパッチが適用されたアンドロイドの最新バージョンを使うことも、Google アシスタントなどの最先端のグーグルのサービスにアクセスすることも、Google Play ストアからアプリをダウンロードすることもできなくなる。
ファーウェイ製品がGoogle Play ストアにアクセスできなくなることで、グーグルはトランザクションの30%を失う。これがグーグルにもたらされる最大の損失だ。野村インスティネットは、Google Play ストアの売り上げは年間3億7500万ドル(約410億円)から4億2500万ドル(約470億円)減少すると推定した。
最大の影響はヨーロッパ市場に
野村インスティネットによると、ファーウェイ製スマートフォンのユーザーは現在、世界中に約5億人。
Instinet
だが、52%はGoogle Play ストアが利用できない中国のユーザー。つまり、グーグルが影響を受けるのは、ヨーロッパ、そして中国を除くアジアなど、現在、アプリ販売から利益を得ているマーケットに限られる。
グーグルは2018年、世界中のGoogle Play ストアで70億ドル(約7700億円)を売り上げたと野村インスティネットは推定した。そのうち、ファーウェイ製スマートフォンからのアクセスは、約3億8800万ドル(約430億円)。その最大の牽引役はヨーロッパ市場で売り上げは1億9000万ドル(約210億円)、また、中国を除くアジアのファーウェイ・ユーザーがもたらした売り上げは約1億3700万ドル(約150億円)と同社は見ている。
ファーウェイからの「乗り換え」は?
だがグーグルが被る影響は緩和されるだろうと野村インスティネットは記した。一部ユーザーは、最新のアンドロイドOSを使うために他社製スマートフォンに乗り換えるためだ。ファーウェイは自社製デバイス向けにアンドロイドに代わる独自OSを開発していると発表した。だが、専門家はファーウェイの独自OSを消費者が受け入れることにはかなり懐疑的だ。
Shona Ghosh/Business Insider
「違うOSを開発することは可能……、しかし、グーグル検索、グーグルマップ、YouTubeを使うために消費者は何をするだろうか?」と調査会社クリエイティブ・ストラテジーズ(Creative Strategies)の主席アナリスト、カロリーナ・ミラネシ(Carolina Milanesi)氏はBusiness Insiderに語った。
「こうしたサービスにはすべて別の選択肢があるが、なぜ使わなければならないのか? ファーウェイのスマートフォンがどれほど素晴らしいものだとしても、私が長年使ってきたサービスをすべて放棄することはない」
ベアード(Baird & Co.)のシニア株式リサーチアナリスト、コリン・セバスチャン(Colin Sebastian)氏は「最も影響を受けるファーウェイ・ユーザー」は他社製デバイスへの切り替えを検討し始めているだろうとBusiness Insiderに語った。
「一般的に言ってアンドロイドOSとGoogleのアプリに代わるものはないと私は考えている。最も影響を受けるユーザーは他のアンドロイドデバイスに移行するだろう。もちろん移行期間はあるだろうが、かなり速く進むと思う」
だが、ファーウェイがヨーロッパなどの市場でいくらかシェアを失ったとしても、それは世界第2位のスマートフォンメーカーにとっては最悪のシナリオにはならないと考えるウェドブッシュ証券(Wedbush Securities)のマネージングディレクター、ダン・アイブス(Dan Ives)氏のような人たちもいる。
グーグルの損失という点では、アイブス氏はその損失は年間1億5000万ドル(約165億円)から2億ドル(約220億円)になると見ている。2018年に1300億ドル(約14兆円)以上を売り上げたグーグルにとっては、この程度の損失は「誤差」であり、「最終的にはそれほど悪い結果にはならないかもしれない」とアイブス氏は語った。
(翻訳:Toshihiko Inoue、編集:増田隆幸)