小川彩佳アナウンサーが報道番組に帰ってくる。
小川さんの新たな“職場”はTBSの「NEWS23」。TBSの看板報道番組のメインキャスターを担う。
初オンエアの6月3日を前に、テレビ朝日を退社した理由や、結婚・出産、なぜ報道の現場にこだわるのか……34歳の「等身大の思い」を単独インタビューした。
退社憶測に「ずっと反論したかった」
テレビ朝日時代から報道現場にこだわり続けた小川彩佳アナウンサーの、新たな挑戦が始まる。
一般男性との結婚を機に、4月にテレビ朝日を退社した小川彩佳アナウンサー(34)。現在は事務所に所属せず、フリーランスとして活動している。
テレビ朝日を退社すると報じられた際には、その理由について根拠のない記事も書かれたという。
「憶測も含めていろいろな情報がネットを飛び交って、反論したいことがたくさんありました。一緒に頑張ってきたスタッフに誤解されることがつらいし、怖かったです。
退社の決断は、30代半ばに差しかかる中で、自分のこれから歩む道について深く考えた結果でした。結婚が現実的になったのも大きな理由の一つです」(小川さん)
変わるなら今がラストチャンス
自分の言葉で伝えるイメージが強い小川さんだが、一方で「言葉を発信することへの畏怖の念や慎重さを大切にしたい」と話す。
現在のパートナーである一般男性との出会いをきっかけに、アナウンサーとしてのキャリアと結婚・出産などのライフプランを本格的に考えるようになったという。将来は子どもも欲しいと考えているそうだ。
小川さんは2007年4月にテレビ朝日に入社して以降、「サンデープロジェクト」の司会、「報道ステーション」のサブキャスター、直近ではインターネットテレビ局「AbemaTV」のニュース番組「AbemaPrime」の司会進行を務めるなど、一貫して報道番組に携わってきた。
もがく姿も見せて、問題提起したい
子育ての負担が女性に偏りがちな現状で、特に不規則な生活を強いられる報道現場の女性の悩みはつきない(写真はイメージです)。
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報ステもアベプラも月曜から金曜までの、いわゆる「帯番組」。生活が不規則になりがちで家族と過ごす時間が持てないことは、報道現場で働く多くの人が抱える悩みだ。結婚を機に仕事のペースを落とす選択肢もあったはずだが、そうはせず再び苛烈な報道番組に戻ってきたのはなぜなのか。
「女性って仕事を一番頑張りたい時期に結婚・出産・子育てなどいろんなことにいっぺんに直面しますよね。でも、保育園の待機児童問題に代表されるように、それらすべてをやり切れる環境は整っていない。
私も葛藤を抱えてもがく1人です。
その等身大の姿も、視聴者の方に共感していただけるかもしれないと思いました。番組として働く環境について考えたり、制作現場を整えたりすることでメッセージを発信していきたいと考えています」(小川さん)
「NEWS23」キャスターの誘いを受けた当初は悩んだ小川さんが、番組スタッフと話し合う中で出した答えだ。
発言を制限されたことはないが…
久しぶりのオフだった4月。長期で海外旅行をしたり、報ステ時代のスタッフとこれまでの取材先を訪ねて東北を巡ったそうだ。
小川さんがインタビュー中に何度も繰り返したのが、「等身大」という言葉だ。
報道番組が権力に「忖度」しているのではないか —— そんな視聴者の批判、メディアへの不信感は日ごとネットを中心に募っている。
そんな中で小川さんが支持されるのは、自身の意見を述べることをためらわず、たとえ言葉にしなくともその思いが表情から伝わってくることも多いからだ。昨年秋に司会進行に就任した「Abema Prime」時代はネット番組の柔軟さもあって、企画段階から関わることも多かったという。出演最終週には自ら企画した#MeTooの特集も組んだ。
小川さんはテレビ朝日時代も一貫して「発言を制限されたことはなかった」と言う。しかし、報道ステーションなどではサブキャスターだったため、「主体的に自分から発信していく機会があまりなかったんです」(小川さん)。
原稿を読むだけではなく
「NEWS23」はTBS系で月~木曜よる11時/金曜よる11時30分から放送(写真はイメージです)。
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一方、「NEWS23」での小川さんの役割はメインキャスター。「ニュースは客観的に冷静に、事実を忠実に描写して伝えることが至上命題」だとした上で、自身の感覚や思いは「言葉にしなくとも、大切にしたい」と語る。
「自分では『滞りなく放送できたな』と思ったことが伝わっていなかったり、思い入れのある企画でもどこか『小手先』の表現で伝えようとするとダメだったり。
一方で視聴者の方から良かったねと言っていただくのは、自分の感情が溢れ出したり、衝動があったりしたときなんです。
それを意識的にやるのは違うと思いますが、私はこのニュースに対してどう思うのか、視聴者のみなさんはどんな風に受け止めるだろうかというのは、常に問い続けていきたいと思っています」(小川さん)
批判コメントも紹介してインタラクティブに
「スタッフからもらう情報だけではなく、現場の空気感や温度を感じ取って伝えたい」と語る。「その感性を磨くには自ら取材を重ねて現場を多く踏むしかない」と。
入社時から報道志望だった。そのやりがいは「つながっていく感覚」(小川さん)だという。取材現場、スタジオ、そして視聴者へとポジティブな変化のきっかけを提示できることだ。
共に仕事をしてきたのは、田原総一朗氏や古舘伊知郎氏など自身のスタンスを明確にする司会・キャスターたち。番組には賛同と共に批判のコメントも多く届いたそうだが、意見を示すことで視聴者に考えるきっかけを提示できたのではと、手応えを感じることも多かったそうだ。
きれいごとに聞こえるかもしれないが、一生懸命やったことは必ず誰かが見ていてくれた。目の前のことにコツコツ取り組んでいった先に、未来が開けたと語る。
「『NEWS23』ではSNSの投稿など番組に寄せられたさまざまなメッセージを紹介して、視聴者のみなさんと対話しながら番組をつくり上げていきたいなと思っています。
私もどんどん現場に足を運んで取材する予定です。取り組みたいテーマは数多くありますが、これまでも取材してきた『性的マイノリティ』と『核廃絶をめぐる問題』などについては、今後も継続していきたいと思います。記者会見、街頭インタビュー、そしてカメラが回らない事前取材なども大切にしていきたいですね」(小川さん)
(文・浜田敬子、竹下郁子、撮影・稲垣純也)
※本記事は、Business Insider Japan編集部とLINE NEWSの共同企画です。フルバージョンの記事はLINE NEWSでご覧いただけます。