ダイソンが2017年、イギリスにオープンした「ダイソン インスティチュート オブ エンジニアリング アンド テクノロジー」に通う70人あまりの学生たちは、20倍以上の倍率をくぐり抜けて入学した、優秀な学生たちだ。
ウイークデーのうち3日をダイソンでの勤務、残りの2日を勉強の日々に充てているという学生たちの生活とは?
1. 面接回数は10回近く
テストは「壊れた扇風機を直せ」?
最初の年である2017年には定員が25人のところ、750人以上の応募が殺到(合格者は33人)。2年目には950人以上の応募があったという。その試験内容もユニークだ。
「壊れた扇風機を直せという課題が出た」(ソフィー、20歳)「面接は10回近くあった。単なるテストの点数ではなく、能動的に課題に向かえるかという姿勢が見られたと思う」(ジェイ、20歳)など、座学だけでなく、実践的なスキルが重要視されているようだ。
2. 夏休みは2週間だけ
多忙な生活を送る「ダイソン大学」の学生たち。
「ダイソン大学」の生活はものすごく多忙だと、話を聞いた学生全員が口をそろえた。
週3日はダイソンの研究開発拠点で働かなくてはならないため、授業は週2日のみ。数学、物理学、プログラミングなど、朝9時から夕方4時まで、びっしり授業が入っているという。
イギリスの大学生の夏休みは3カ月程度が普通だが、「ダイソン大学」では授業内容をこなすため、たった2週間しかない。その代わり、学生には社員と同じように有給休暇が与えられているそうだ。
3. 学生でも新製品開発に関わることができる
「学生にも社員と同じように情報のアクセスを与える」(ジェームズ・ダイソン氏)が実践されている。
ダイソンには新製品を開発するための専門の部署があり、そこでは毎月数百から数千の新しいアイデアが実用化を検討されている。
学生たちはエンジニア見習いとして、主に社員のサポート業務に就くが、そうした部署で新しいプロダクト開発に関わることもできる。
4カ月に一度の配置換えがあるため、学生と社員とのネットワークが築きやすいのも大きなメリットだ。ダイソンが新規参入を予定している電気自動車(EV)の開発に関わった、という学生もいた。
4. 1年生は「ダイソン寮」で共同生活
ポッドは特殊なつくりをしており、壁一面が窓ガラスになっている。
1年生は「ポッド」と呼ばれる特殊な宿舎で暮らす。ひとつひとつの部屋が独立した直方体のようになっており、ベッドルームとバスルームがついている。1カ月の家賃は550ポンド(約7万6000円)。
キッチンやリビングルーム、ランドリーなどはシェアしている。ポッドからクラスルームまでは歩いて5分ほどの場所にある。
2年生になると、隣町などで自分で暮らすようになる。キャンパスから車で1時間ほどの場所にある街・ブリストルから毎日車で通学しているという学生もいるそうだ。
5. 背景には就職難が……
イギリスでは若者の失業は大きな問題だ。
イギリスの若年層失業率の高さは大きな問題になってきた。高い競争率の中で、学生のうちにインターンシップなどの経験を積む重要性も高まっている。
実際、学生たちになぜ「ダイソン大学」への進学を決めたのか聞いてみると、勉強しながら就業体験もできることを理由にあげた学生が多かった。
大学に通いながら給料がもらえ、かつ就業体験もできるというダイソンの大学は、イギリスの就職難のひとつの解決策として、期待されている。
(文・写真、西山里緒、取材協力・ダイソン)