アップルは5月28日、約4年ぶりの登場になる新型iPod touchを発表した。最新型の特徴は、一言でいえば「中身の現代的なアップデート」だ。新型を読み解く5つのポイントを見ていこう。
1. 処理性能がiPhone7相当にアップデート(A8→A10)
画像はiPhone 7発表時のもの。
心臓部のSoC(System on a Chip、統合半導体)がアップデート。最新世代ではないものの、iPhoneでいえば、iPhone 6世代(A8搭載)から、iPhone 7世代(A10 Fusion搭載)相当になった。アップルは、処理性能が従来の2倍、グラフィックが3倍に向上したと説明している。
ゲームのパフォーマンス向上には大きな意味がある。
2. ARアプリがiPod touchでも動作可能に
A10 Fusionチップの採用は、ゲームなどアプリ動作が快適になる以上に、最新のiOSが対応する「AR機能(ARKit 2)が最安のiOS端末でも動作するようになった」ことに大きな価値がある。
新型iPod touchの登場によって、オンラインのアップルストアで販売するすべてのiOS端末がAR対応したことになる。
3. 本体サイズ、デザイン、カラバリは従来モデルと完全に同じ
新型iPod touchのイメージ。表・裏ともにデザインの変更はほぼないようにみえる。
一方で、デザイン面はまったくのキープコンセプトだ。
本体サイズと重量は、2015年に登場した従来のiPod touchと完全に同一。また液晶の解像度(1136×640ドット)、画面サイズ(4インチ)にも変更はない。公式画像の外観写真を見る限り、デザインも同一と考えて良さそうだ。
4. イヤホンジャックは残った
「イヤホンジャック付き」はやっぱり使い勝手の点では評価できる。
本体のデザインが同じだから当然かもしれないが、イヤホンジャックは引き続き搭載している。iPhone 7以降、アップルは本体からイヤホンジャックを廃止したが、これを不満に思っている人もいる。iPod touchでは、まだ有線イヤホンをアダプターなしで使える。
5. 最安モデルは32GB/2万3544円から。今週後半から出荷開始
現代的なアップデートとして、新型iPod touchの最大ストレージ容量は256GBモデルが選べるようになった(従来は128GBまで)。ラインナップは、32GB/128GB/256GBの3種類だ。オンラインのアップルストアの出荷日は5月31日になっている。
アップルは2017年のARKitの発表以来、iOSデバイスを世界最大級の「ARプラットフォーム」と位置付け、開発環境も整えてきた。ある意味で、その欠けた最後のピースがiPod touchだったわけだ。
こうして要点を見ていくと、アップルにとって重要だったのは、iPod touchを「AR対応」にさせることだったことが見えてくる。
来週、日本時間6月4日午前2時にカリフォルニア州サンノゼで開催される「WWDC2019」(アップル世界開発者会議)の基調講演では、例年どおりARKit関連の発表も期待される。次期iOSのアナウンスも含めて、新iPod touchの「A10 Fusion採用」がどういう布石だったのかは、一見の価値がある。
(文・伊藤有)