新型iPodが物語る、アップルの「今」

iPod touch

アップルの歴史の中で、iPodは同社を象徴するデバイスの1つ。

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Business Insider

  • アップルは5月28日、新しいiPod touchを発表した。
  • 前モデルの発表は2015年7月、ほぼ4年ぶりの新モデル発表となった。だが、新型iPod touchのデザインは前モデルと同じ。アップデートは内部のみに留まった。
  • iPodに対するアップルのアプローチは、同社について多くを物語っている。

アップルは5月28日、新型iPod touchを発表した。

だが「新型」とは言いがたい。今回のモデルは、2015年に発表された前モデルからのマイナーアップデート、しかも2015年モデルも、2013年に発表されたモデルに多少のアップデートを加えたものだった。

アップルはiPodをラインナップし続けている。だが、かろうじてという状態。新型iPod touchに使用されているチップは2016年に導入された古いタイプだ。

新型iPod touchは、アップルについて多くを物語っている。

収益性がすべて

アップルは、世界有数の時価総額と収益性を誇っている。だが、このレベルの成功を手にするためにアップルは、高品質なハイエンド製品を顧客に提供するとともに、製造コストを抑えるという難しい戦略を取り続けている。製品のクオリティと収益性のバランスを取るために常に決断を迫られている。

その一例が、ノートPC「MacBook」のキーボードに関する問題。

2015年に「バタフライキーボード」が採用されて以来、MacBookのユーザーたちは一貫して不満を述べてきた。だが導入から4年が経過した今に至るまで、アップルはキーボードの抜本的な再設計を行っていない ── 新設計のキーボードを搭載する筐体を新たに作成するコストは、再設計を行わずに現行のキーボードに微調整を加えるコストをはるかに上回る。

さらにアップルは、キーボード修理プログラムを立ち上げている。確かにこうしたプログラムにはそれなりのコストがかかる。だが、キーボードの問題を解決するためにMacBookシリーズの抜本的なモデルチェンジを行うよりは安くつく。

言い換えれば、アップルの新製品は、目標の利益を出すことが求められている。これが同社の稼ぎ頭であるiPhoneが通常、「現行」デザインを2年間(「S」モデルが発表される年を含めて)続ける理由。毎年、iPhoneの設計を刷新することはコストがかかり過ぎる。


アップルは、iPad、Mac、MacBook、他の多くの製品について同様の戦略を取っている。ハードウエアの設計や量産には膨大な費用がかかるため、アップルは一度のフルモデルチェンジから、可能な限りの利益を絞り出そうとしている。

アップルの小さな音楽プレーヤー、iPod touchについて考えてみよう。

iPodのイメージ

YouTube/EveryAppleAd

iPodは、アップルの最も象徴的なデバイスの1つであり続けてきた。最も愛されてきたデバイスの1つであるiPodを、販売不振を理由に生産中止にしたら、かなりの反発が起きることは想像できる。

iPodは単なるガジェットではない。

テクノロジーとアートの交わるところに立つ、アップルのユニークな企業哲学を表している。iPodは(iTunesとともに)、アップルがカルチャーの世界で独自の地位を築くことに貢献した製品。iPodが存在しなければ、現在のアップルはなかっただろう。

またiPodは、iPhoneの基礎となった製品でもある。

ポケットに収まるiPodはアップルを象徴する白いイヤフォンとともに、アップル流のやり方で人々をスマートフォン時代に導いたのかもしれない。売れ行きが振るわなくとも、iPodを生産中止にすれば、象徴的な観点から考えると寂しいだろう。

だからこそ、アップルは「新型」iPodを発表した。だが実は新型とは言えない。デザインは2015年モデルとほぼ同じ、2015年モデル自体、その1つ前の2013年モデルとほとんど変わらない。

新型iPodは前モデルの影

iPhone登場以前、iPodはアップルの稼ぎ頭だった。そしてアップルはiPodに多大な投資を行っていた。

2001年から2007年まで、アップルは毎年、新型iPodを発表した。6年間に6世代のiPodが登場し、毎回、フルモデルチェンジしていた。

当時、アップルは通常モデルに加えて、2モデルの「小型」iPodも作っていた。iPod Shuffleは4世代、iPod nanoは7世代が登場した。初代iPod touchは2007年に登場、初代iPhoneの登場と同じ年だ。

初代iPhone

初代iPhone。

Screenshot/YouTube

iPhoneはiPodから多くの魅力を奪った。

結局のところ、iPhoneはiPodに電話機能を加え、インターネット接続機能を加えた製品だった。

アップルがiPodをめまぐるしくフルモデルチェンジしていた時期は過ぎ去った。アップルはかつて多くの人から愛されたiPodへの関心を喚起する策をほとんど打たず、ときどき、内部をアップデートするだけだった。

iPodは、2000年代はじめのような稼ぎ頭ではないだろう。初代iPodから20年近く経った今、アップルはiPodを魅力的な製品にしようとする意思をまったく見せていない。

たとえ新型iPod touchが2015年のモデルを機能的に強化したものだとしても、アップルが顧客の興味を引くような新しいハードウエアデザインを導入するつもりがないことは寂しい ── Panic社が2019年5月に発表した奇抜なデザインの新型携帯ゲーム機「Playdate」の方が新型iPodよりもよほど面白く思える。

アップルは最新iPhoneのデザインをiPod touchに採用し、ホームボタンをなくし、全面ディスプレイのデザインを採用することもできた。だが、アップルにその意図はないようだ。iPodに対する関心が比較的低いことを考えると、iPodのフルモデルチェンジはコストがかかり過ぎるのだろう。

新型iPod touchはアップルについて多くを語っている。

アップルはイノベーティブであり続ける、だが戦略面/利益面でそうすべきと判断した場合のみ。そうでなければ、リスクを取るに値しない。

[原文:The new iPod says a lot about Apple as a company right now

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:増田隆幸)

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