Reuters
- レアアースの主要供給国という中国のポジションは、米中の貿易戦争が続いた場合、秘密兵器となる。
- 中国はレアアース供給を支配している。レアアースは多くのハイテク製品の製造に欠かすことができない。
中国は切り札を持っていた。
あるツイートが、もし米中の貿易戦争がエスカレートした場合、中国はレアアースの主要供給国としてのポジションをどのように利用しようとしているかに焦点をあてた。一方、28日(現地時間)もトランプ大統領は、アメリカは合意に達する準備ができていないと繰り返した。
「私の知る限り、中国はレアアースのアメリカへの輸出規制を真剣に検討している」と中国共産党系メディア、環球時報の編集長、胡錫進(Hu Xijin)氏はツイートした。
「中国は今後、他の対抗措置を取る可能性もある」
中国のレアアース供給の重要性は、先行きの見えない米中貿易戦争の解決策として注目を集めている。レアアースはスマートフォンや電気自動車といったハイテク製品の開発・製造に欠かせない。
中国は、バンクオブアメリカ・メリルリンチのレポートによると、地球上のレアアース生産の78%を占める主要供給国。貿易戦争にまつわる緊張が高まれば、中国によるレアアース規制は、交渉の大きな切り札になる可能性があると同行は記した。
中国がレアアースに注目しているサインとしては、習近平国家主席が先週、レアアース産地を訪問したことがあげられる。注目すべきは、習主席に劉鶴副首相が同行していたこと、副首相はアメリカとの貿易交渉の責任者だ。
レアアース(希土類元素)はホルミウム、エルビウムといった17元素の総称、地球の地殻に広く存在しているが、商業的な採掘な量が存在する場所はほとんどない。
トランプ大統領の大統領令に応じて記された2018年の政府報告書は、国防総省が中国のレアアース供給に依存している実体を強調した。
「レアアースは、アメリカが国の安全保障を託している主要な兵器システムの多くに使われている重要要素。レーザー、レーダー、ソナー、夜間暗視システム、ミサイル誘導、ジェットエンジン、装甲車両用合金などに使用されている」と報告書は記した。
報告書はまた、中国がレアアースを有利に利用しようとする姿勢を強調、2010年、尖閣諸島をめぐる問題に関して、中国が日本へのレアアース輸出を中止したことを解説した。中国は後日、この動きを否定した。
バンクオブアメリカ・メリルリンチのレポートによると、中国はさまざまな要因でレアアース供給を支配するようになった。その1つは、中国のレアアース生産に対する長期的な取り組み、中国はレアアースを戦略資源と捉えてきた。
加えて、中国のレアアース供給は1990年代、レアアース価格を引き下げ、西側諸国の企業がこの分野に注力することを妨げた。最終的に、アメリカのレアアースの代表的な供給源であったマウンテン・パス鉱山などの閉鎖には、そうした政治的思惑が影響した。
「レアメタルに対する需要が世界中で高まるにつれ、供給の安全性に関する懸念が大きくなっている。中国が世界的な生産を支配していることがその要因」とバンクオブアメリカ・メリルリンチのレポートは記した。
[原文:China could unleash a secret weapon in the tech Cold War]
(翻訳、編集:増田隆幸)