住宅版テスラ・HOMMAの作る「夢のスマートホーム」とは?

HOMMA Inc.が手がけた家

今日は住宅スタートアップのHOMMA Inc.を立ち上げた本間毅さんとの対談第3回です。2019年1月に完成した実験住宅のHOMMA ZEROにお邪魔しました。第1回・第2回をご覧になってない方はこちらからご覧いただけます。

住宅版テスラ・HOMMAの作る「夢のスマートホーム」を実際に見せてもらったよ(第1回)

・実はアメリカの家のクオリティは低いという現実

・アメリカの戸建て建築、販売事情

・日本方式でアメリカの家にイノベーションを起こす

・アメリカの住宅業界で成功する勝算

住宅版テスラ・HOMMAの作る「夢のスマートホーム」を実際に見せてもらったよ(第2回)

・HOMMA Inc.が手がけるビジネス

・日本のモノがとこまでアメリカで受け入れられるか

・都市型のプレミアムコンパクト住宅というコンセプト

・スマートホーム HOMMA ZERO

・ユーザーもハッピーになる継続課金型収益モデル

・自分が使ったことがないものは、人に売れない

・ユーザーエクスペリエンスを豊かにするテクノロジー

HOMMA Inc.の3つの成長戦略

本間:ちなみに、HOMMA X(ten)の話を少し戻すと、 今3つのエリアでプロジェクトの場所を探しています。ロサンゼルスとかテキサスのオースティン、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)の開催地ですね。あと、オレゴンのポートランド。今、この3つの地域で見ています。現地にそれぞれパートナシップを組める建築会社がいるので、そういう人たちと組みながら土地の開発から進めています。

シバタ:まず、土地を買わなきゃいけないですよね。

本間:それこそ土地によって値段が全然違うのですが、10軒建てるとしたら、日本円でいうと最低5億円から20億円くらいのプロジェクトになります。大きなプロジェクトを成功させるために僕らの成長戦略が3つあります。

一つ目は、「プロダクト」。家の販売です。日本製品を入れたりとかスマートホームにするとか、あと、建てるやり方をよくしたりとか。どれだけすばらしい家を作るのかというのがプロダクトです。

二つ目は、「オペレーション」。シバタさんはよくわかっていると思いますけど、アメリカは郡や州によっても建築基準が違うので、地域毎にローカルプレイヤーと組まないと絶対できないです。だから、成長するにはまず、ローカルオペレーションが必要になります。

そして実は三つ目が一番大変なんですけど、「ファイナンシャル」。お金です。アメリカのプライムレート(銀行が企業に資金を貸し出す際に最も優遇された金利)は今5.5%なんです。

シバタ:そうですね。

本間:日本は長期プライムレートで大体1%くらいですよね、だから日本のほうが調達金利がすごく安いんです。なので日本の企業からプロジェクトファイナンスということで資金を調達することを考えています。日本で銀行に入れておいてもお金は増えないけれど、アメリカでプロジェクト投資したらファイナンシャルリターンがある。さらに、例えば住宅や住宅設備関連の会社であれば、その会社が持っている建材やプロダクトがアメリカに進出していないのであれば、投資したお金で作られた住宅に、その会社の持っている建材やプロダクトを使うことができる。つまりアメリカ進出の足掛かりになるわけです。

市場の理解もできるし、トラックレコードもできる。ファイナンシャルリターンもありながら、事業のリターンも得られるという形で、日本の企業とパートナシップを組もうというふうに進めています。

シバタ:それはすごく面白いですね。HOMMA X(ten)を建てる場合を考えるとまず土地を買わなきゃいけないですよね。土地を買ってから8ヶ月とか1年くらいで建つんですか?

本間:場所によりますね。例えば、LAだったら一番最初に建築申請を出してから2~3年ですね。

シバタ:なるほど。パーミッションに時間がかかるということですね。

本間:はい。もう少し小さな規模だったり、早く許可が下りる地域だったりすると1年半とか2年とかも考えられます。

シバタ:なるほど。仮に3年としましょうか。仮に5億円で土地を買って、建てて売るまでに3年かかるわけですよね。

その3年間、この5億円は、

本間:寝ています。

シバタ:寝なきゃいけない。寝るお金。そのファイナンスが必要だということですよね。

本間:はい。

プロジェクト型ファイナンスの考え方

室内の様子

シバタ:これをプロジェクトファイナンス型で調達して、ファイナンシャルリターンと事業リターンがあるかたちできちんと返ると。

本間:そうです。

シバタ:これは非常に面白いモデルだなと思いますね。

本間:お約束はできないんですけど、例えば大体20%前後のリターンがプロジェクト全体のファイナンスのリターンとして出るとして、それを我々とパートナーの方々でシェアしましょうという形ですね。

シバタ:それを当然、エクイティ(Equity:株式)ではなくてデット(Debt:借入)に近いかたちで調達するんですよね?

本間:両方あります。金融機関からデットで調達してっていうのは、大体全体の6~7割くらいですね。3割くらいがエクイティで。エクイティだとリスクを取らなくてはいけないんですけど、リスクを取ればリターンも当然増えますね。

シバタ:エクイティというのは、HOMMA Inc.に直接投資するっていうことですか?

本間:いや。このプロジェクトへの投資です。

シバタ:なるほど。そこはやっぱりプロジェクト単位でやるんですか?

本間:そうです。

シバタ:それはなんかすごい。

本間:僕らの会社のエクイティで調達したら、めっちゃダイリューション(Dilution:株式が希薄化)するし、いくらあってもお金が足りないので。

シバタ:取っているリスクが違うので、僕も、もちろんプロジェクトの方はプロジェクトで調達された方がいいと思います。楽しみですね。

ところでHOMMA ONEは2軒しか作らないんですか? 何かもったいないですね。もっと作ったらいいのにって思うんですけど。

本間:やっぱり、シリコンバレーは土地が高いんですよ。でもショールームは近くにあった方がいいし、人に見せる場所にあった方がいいんと考えています。スケールさせるのはもっと広いところでやった方がいい。だから、LAに行ったり、オースティンに行ったり、ポートランドに行ったりしています。若者がたくさんいて、テック企業の仕事がたくさんあって、今も成長を続けているエリアっていうところで、色々なデータを算出した結果、この3つの地域だろうと。 それと自分がそれぞれ訪れて魅力的かどうかということでこの3地域に絞っています。

シバタ:すごく納得感があります。それは。

HOMMA X(ten)の資金は絶賛募集中?!

HOMMA Inc.が手がけた家

シバタ:ちなみに、HOMMA X(ten)のさっきのプロジェクトベースのファイナンス、資金調達というのはどういうフェーズなんですか? 例えば、この記事を見て協力したいという人がいたら?

本間:絶賛募集中です。

シバタ:絶賛、いつでも?

本間:はい。プロジェクトは別にHOMMA X(ten)にしても1個だけしかやらないということはないです。常にパイプラインを増やし続けていくということが会社の成長としても重要ですし、パートナーさんにとっても、どんどんいい案件を出していきたいので。

シバタ:例えば、LAで何ヶ所かやる、とかオースティンで何ヶ所かやるって当然あり得るわけですよね?

本間:もちろんです。すでにお話をしている会社さんもたくさんありますが、これからと言われても大丈夫です。ちなみに、プロジェクト丸抱えっていうご希望もあったり、あるいは複数でファンド型にして出資をしたりという話もあったりもします。

シバタ:それはあるでしょうね。丸抱えは丸抱えで面白いですね。じゃあ、HOMMA Inc.とは別に、プロジェクトベースでそれぞれ箱を作ってそこにどんどんファイナンスをしていくっていう感じですね。

本間:そうです。それがやがて大きくなって、10が50になり、50が100になり、100は1000になり、としていくのが、僕らの成長のマイルストーンだと思っています。

シバタ:それは面白いですね。でも、2~3年かかると思うと結構足の長い話なので、僕らみたいなソフトウェアのスタートアップから見ると、結構忍耐力がいるなっていう感じがします。

本間:そうですね。 そういう意味でいうと、僕らはこうやって培ってきたいろんなスマートホーム向けのノウハウとか、システムとかを短期間でスケールするかたちで提供する話も考えてはいます。

家はプロトタイプ作りもスケールも難しい:家作りの高い参入障壁

シバタ:これ実際できちゃったら、めちゃくちゃ参入障壁高いですよね。プロトタイプ作ろうと思っても、家買わなきゃいけないっていう話じゃないですか(笑)。

本間:そうなんです。土地買って、家を設計しないといけません。

シバタ:しかも、いろんなデバイスを全部試して。当然そこには、僕がまだ見たことがないようなものすごい思考錯誤がたくさんあるんだと思うんですけど。

本間:だから、大変さでいうと車も同じかもしれないですね。ソフトウェアもハードウェアも全部あるので。

シバタ:イーロン・マスクがこの間、面白いことを言っていたんですけど、電気自動車をデザインしてプロトタイプを作るのは簡単だと言っていて、工場で車を大規模に量産するほうが100倍の桁で難しいって言っていました。

ロケットは100倍じゃないと。ロケットはプロトタイプができたら実際に飛ぶロケットを作るのは10倍くらいの難しさだと。多分、家はもっと難しいんだろうなっていう感じですかね。

HOMMA Inc.ではどんな人が働いているの?

本間さんとHOMMA Inc.で働いている人たち

シバタ:今HOMMA Inc.で働いている人がいまいち想像できないんですが……。家も作りながらソフトウェアも作っているわけじゃないですか。当然、ファイナンス的な仕事もかなり普通のソフトウェアの会社に比べたら大きい仕事だと思いますし。どんな人が働いているんですか?

本間:なかなかカオスで面白いんですけど。

シバタ:カオス具合を教えてください(笑)。

本間:例えばここで会議をする時に、どういう人たちが会議テーブルを囲んでいるかというと、当然ですが建築家、アーキテクトがいます。ファイナンスの人がいます。ゼネラルコントラクター、いわゆる現場をまとめて家を建てる人がいますよ。

そこにテック系でいうと、IoTやデバイス系の人が入り、時にはマーケティングの人やユーザーエクスペリエンスデザインの人が入ったりします。それでここで何を話しているかっていうと、「家」のことを話している。つまり家を作ることってそれだけ多岐に渡るんです。

シバタ:そうですよね。

本間:テック×リアルビジネスが新しいって言うじゃないですか。僕らはテック×家なんです。だから僕らは実現したいことに対して、じゃあ建築は何やってくれるの? じゃあテックは何やってくれるの?みたいな話をして一つのものを作り上げていきます。

例えば、家の電気をコントロールするとしても、単純に人がセンサーで感知されたら点灯するとかじゃなくて、家の中と外の明るさを考えて、どのような状態だったら電気を点けるとか、家の玄関のドアを開けたら電気が点くとか考えられますよね。

でも、もし家族が全員寝ている夜中にお父さんが帰ってきてドアを開けたらバンって家中の電気がついたら、それは迷惑な話ですよね。建築的な努力でできる部分もあるし、テクノロジー、ソフトウェアで解決するところもいっぱいあります。

こういうのはどうやって作るんだ?ということと、それが経済効率性的にどうなのかっていうことを色々な方面から考えて、モノを作らなくてはいけないんです。

シバタ:なるほど。ちなみに、今募集しているポジションやこれからどういう人が欲しいとかっていうのはあるんですか?

本間:幸い、このところ立て続けに良い人材の採用が決まりつつあって、今現在は実はそんなに空いていないかもしれないんですが、新しいプロジェクトをこれからどう立ち上げるかによりますね。

シバタ:なるほど。

本間:お陰様で様々なオファーをいただいていて、本当にラッキーな状況です。僕らのチームは、日本人ばっかりでもアメリカ人ばっかりでもありません。ダイバーシティをちゃんと確保したいので、日本のよさも理解しつつ、アメリカの人たちの好みも分かりながらみたいなことをやれるようなチームを一生懸命作っています。

HOMMA Inc.でこれから必要な人材とは?

シバタ:なるほど。日本で働いている人はいるんですか?

本間:グッドクエスチョンですね。超最近、日本をベースにしてファイナンス系を取りまとめるコアな人が採用できて、この記事が出る頃にはもう入っていると思います。

シバタ:じゃあ、割とファイナンス系のチームが日本にできる可能性はもしかしたらあるかもしれない?

本間:まだチームにはなっていないですけどね。あとは、日本で実は開発チームを確保したいなと思っていて。

シバタ:それはソフトウェアですか?

本間:そうです。こういうことを言うと若干、語弊があるんですけど。日本って安いんですよ。語弊でもないかな。アメリカからするとソフトウェア開発は同じレベルで半額以下じゃないですか。

シバタ:うん、そうですね。

本間:かと言ってアメリカの生活習慣が分からないと家のことは分からないし、言葉の問題もありますよね。だから今やろうとしているのは、日本で開発をガリガリやるチームを作って、プロダクトの企画とかマネジメントはアメリカでやるというスタイルです。

日米合作でアメリカの家、あるいは日本の家も、もっとイノベーションしていきたいなと。

シバタ:最近、シリコンバレーでは日本に限らず、エンジニアリングチームがアメリカの外にいるというケースはかなり増えていますよね。特にシリコンバレーは人件費が高いので、 割と常識になりつつはありますね。そういう意味では日本にソフトウェアのエンジニアリングのチームを作るというのはすごく理にかなってますね。

本間:時々出張に来てもらって理解を深めたりとかも考えられますよね。ビザは今、めちゃめちゃ取りづらいですけどね。

本間さんと社員のみなさん

シバタ:なるほど。ありがとうございます。じゃあそろそろ大体聞きたいことは聞けたと思うんですけど、最後に一言ありますか?

本間:シバタさんもそうですけど、日本からアメリカに来て起業するって、結構なチャレンジをしているなとは思っています。

でもアメリカの家ってもっともっとよくなる可能性を秘めているので、ここにぜひ日本の力を使いながら、日本のお金であったりプロダクトであったり人材であったり、いろんなものを使いながら、イノベーションを起こしていきたい、という思いでやっています。皆さん、ぜひご協力と応援のほどよろしくお願いします。

シバタ:今日はHOMMA Inc.の本間毅さんにお時間をいただきました。夜遅くにありがとうございました。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中

決算が読めるようになるノートより転載(2019年5月27日公開の記事)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中