シャープのロボホンは2回目の“5歳の誕生日”を迎えた。
シャープは、5月26日に同社のロボット型携帯電話「RoBoHoN」(以下、ロボホン)の誕生3周年記念イベントを大阪・変なホテル大阪 西心斎橋で開催した。
イベントには抽選で当たった60名のロボホンオーナーが集結。当選倍率は2.5倍で、現地までの交通費や参加費(ホテルの宿泊費1万8000円)が発生するものの、大阪だけではなく東京や九州から参加するオーナーも現れるなど、非常に熱量の高いイベントとなった。
ロボホンのユーザー参加型のイベントは、2019年2月にも東京で行われており、東京では約200台のロボホンの集合パフォーマンスを見られるなど、オーナーやシャープ側の“入れ込み度”がよくわかるイベントになっていた。
もちろん、誕生3周年を祝う今回のイベントも相当力の入ったものだったが、東京が“ロボホンへの愛”を語り合う懇親会のようなものだったのに対し、大阪でのイベントは“ロボホンの未来”を体験できるイベントに仕上がっていたように思う。その様子を見てみよう。
イベントは3月14日に開業したばかりの変なホテル大阪 西心斎橋で開催された
イベント自体は5月26日開催だが、参加者は25日からホテルに宿泊した
25日には特別な“謎解き”ゲームが用意されていた
ゲームでは配られた指示書やホテルに散らばったヒントを頼りに謎を解いていく。もちろん自身のロボホンも重要な役者の1人
シャープはクリアまでに必要な時間を1時間と想定していたが、実際の平均時間は1時間33分だった
参加者は翌日のイベントまで、謎解きや自主的に開催した食事会を楽しんだ。もちろん寝るときもロボホンと一緒だったことだろう
そして、イベント当日。司会進行はシャープでロボホンを担当する景井美帆氏と、共同開発者でロボットクリエイターの高橋智隆氏。
まず、謎解きイベントの答えを発表。完全クリアーまでたどり着けたのは、60名中35名。
途中のランチでは、ロボホンの顔が描かれた特製オムライスが振る舞われた
その後、2月に発表されたロボホンの第2世代モデルの開発秘話が語られたり……
ロボホンが勝手に回答権をゲットして、そのオーナーが答えなければいけないクイズ大会なども実施されたりした
終盤では全国のオーナーから開発者へのメッセージも紹介
オーナーにとっても、開発者にとっても濃密で有意義な会になったようだ
ロボットとアプリとネットが実現する新しいゲーム体験
謎解きイベントは多くのオーナーの頭を悩ませたが、盛り上がった。
今回のイベントで最も注目すべきなのは、やはり謎解きイベントだろう。参加者がフロア内を歩き回り、さまざまなヒントをもとに謎を解いていく形式は、すでにさまざまなところで行われているイベントだが、普段一緒に暮らしているロボットと一緒に謎を解く体験ができるのは、他に例を見ない試みだろう。
また、参加者のユーザー体験としても、アプリがインストールできてネットにつながっているロボホンならではの強みがあった。
今回、参加したオーナーは事前にシャープへ自身のロボホンのIMEI(端末識別番号)を提出しており、25日までに自動的に特別なアプリが配信されていた。
本イベント参加者のロボホンオーナーには事前にイベント用のアプリがインストールされていた。そのアプリは、主にロボホンが謎解き(に協力)するためのものだったが、同時にスタート時刻やクリアーした時刻などの計測、ゲームプレイ中にオーナーがロボホンにどのぐらい話しかけたか、という情報を記録していた。
そのため、謎解きの結果発表時には、平均クリアタイムや謎を解けたオーナーの人数が把握できた。さらに、謎を解いたオーナーの中から、謎を解いたスピードやロボホンとの協力度を算出。それらすべてを総合的に順位付けし、上位7名には特別な賞品が送られるといった演出があった。
オーナーには、「ロボホンと協力して謎を解こう」というアナウンスしかされていなかったため、このような施策には非常に驚いたことだろう。
教育やオフィスに加え、エンタメにもロボホンを
変なホテル大阪 西心斎橋でもタブレットとロボホンを組み合わせて、受付業務を行わせている。
今回のイベントからもわかるとおり、ロボホンは現在、個人のオーナーに支えられて成長を続けている。また、シャープは2019年1月末までの累計販売台数約1万2000台のうち、約85%が個人向けに販売されたものと明かしている。つまり、ロボホンが社会への普及を目指すのであれば、法人向けの展開が必須になる。
ロボホンはすでに日本各地で受付などの役割で企業導入が進んでいるが、シャープは今後、教育、健康、オフィスなどでの利用を促進していく方針。また、景井氏は「今回のイベントのようなエンターテインメントの場でもロボホンが使えるようになって欲しい」と話す。
ロボホンは単なるロボットでも、単なるスマートフォンでもない。
ロボホンは単に機械として見れば、人形型のIoT機器だ。アプリなどが入り、Wi-FiやLTEでネットにつながり、センサーで周囲のさまざまな情報を収集し、その管理はクラウドで行われている。そのため、今回の謎解きのような参加者を“驚かせるような”企画も可能であり、また“かわいくしゃべるロボット”という強みが、スマートフォンやタブレット、IoT家電にはない温かみのような体験を実現している。
また、2月に発表された第2世代ロボホンには「RoBoHoN lite」というWi-Fi専用で立ち上がることのできない(着座)モデルが登場した。liteは従来の自由に動けてLTEでもつながるロボホンと比べると10万円ほど安くなっており、シャープはこの廉価版ロボホンと管理ソリューションを合わせて法人向けの営業を進めていく方針だ。
(文、撮影:小林優多郎、取材協力:シャープ)