提携や合併が進む自動車業界、誰もイーロン・マスクと手を組まない理由

イーロン・マスク

テスラCEO、イーロン・マスク氏。

Tesla


opinion

Business Insider

  • 提携や合併は世界中の自動車業界で進んでいる。
  • テスラはそのトレンドの中で我が道を歩んでいる。
  • 過去にはテスラと手を組むことはメリットがあったかもしれない。だが、今は違う。
  • テスラは今、単独で事業を進めなければならないようだ。

フィアット・クライスラー(FCA)とルノーの経営統合に向けた動きが明らかになった。実現すれば、フォルクスワーゲン、トヨタに次ぐ、そしてゼネラルモーターズ(GM)を上回る世界第3位の自動車メーカーが誕生する。

自動車メーカーの提携が盛んだ。ルノーのグループには日産、そして2017年には三菱自動車が加わった。フォードはフォルクスワーゲンとの業務提携を発表、GMとホンダは自動運転スタートアップ「GMクルーズ」に共同出資している。メルセデスベンツとBMWは、自動運転EVプラットフォームに共同出資しようとしている。

一方、テスラは大手自動車会社に匹敵する時価総額を誇り ── 2019年前半に株価が下落した後でさえも約350億ドル(約3兆8500億円) ── 他社との提携などは求めていないようだ。

テスラは単独で事業を進めている。

過去に、トヨタ、あるいはメルセデスベンツの親会社ダイムラーから出資を受けていた(2社にとっては、かなり有利なものだったが、すでに資本提携は解消済み)。だが、ここ数年は株式や社債によって資金を調達してきた。テスラの株式市場からの資金調達力は、ウォール街をATMとして活用できない競合他社に勝る点。テスラの資金調達力を侮ることはできない。

GMが2016年にクルーズオートメーションを10億ドル(約1100億円)で買収したように、大手自動車メーカーはスタートアップを買収し、その後、外部からの投資を受け入れている。ソフトバンク・ビジョン・ファンドとホンダの追加投資により、GMクルーズの評価額は約200億ドル(約2兆2000億円)に達した。これはGMの時価総額の半分近くにのぼる。

テスラと手を組む時期は去った

ルノー会長(左)のジャンドミニク・スナール氏はFCAとの統合を模索している。右は日産の西川社長。

ルノー会長(左)のジャンドミニク・スナール氏はFCAとの統合を模索している。右は日産の西川社長。

Associated Press

テスラに大規模な購買力は期待できないし、他社と連携して購買コストを削減したり、車を開発・製造し、発売するまでの伝統的なプロセスの改善を支援してもらうことは望めない。実際、テスラに誰も助けを求めていない。その時期は過ぎた。

その理由はテスラが競合だからではない。EV市場はがっかりするほど小さく、参入にもコストがかかる。なので、ほとんどの自動車メーカーはまだ様子見の段階。

テスラは伝統的な高級車のセールスを脅かし始めている。しかし、イーロン・マスクと彼のチームが何年にもわたって継続して取り組むことができなければ、BMWとポルシェが慌てることはない。

単独で事業に取り組むというテスラの戦略は、実際はパートナーになることを希望する企業がほとんどいないから。EVは目新しく見えるかもしれない。だが、100年以上前からなんらかの形で存在してきた。テスラはそれを魅力的なものにして、2018年には25万台以上を販売し、一時、時価総額は500億ドル(約5兆5000億円)以上に達した。

しかし、そのテクノロジーに注目すべきところはない。結局のところは、バッテリーとモーター。テスラはいくつかのイノベーションを行った。だが、目を見張らせるほどではない。その価値はパッケージングから生まれている ── 巧みにデザインされ、オーナーから愛されている。

テスラはユニークな存在ではない。自動車メーカーであり、自動車メーカーはすでに世界中に何十社もある。それがテスラの株価が見直され始めた理由。市場はテスラが何に取り組んでいるかを理解した。

テスラはパートナーのどんなコストを削減できるのか?

GMクルーズの評価額は200億ドル。

GMクルーズの評価額は200億ドル。

GM Cruise

自動車メーカーは、主にコスト削減のために合併や提携を行う。自動車業界は極めて資本集約的、かつ循環的であるため、売り上げの下降局面に入ったときは、新規投資と内部留保のバランスを取る必要がある。

テスラとの合併あるいは提携(テスラの高い時価総額では合併は考えられない)が、どのようなレベルのコスト削減につながるかを判断することは難しい。テスラはキャッシュを約50億ドル(約5500億円)しか持っておらず、創業から現在までの15年間、3四半期以外はすべて損失を出してきた。

テスラは、EVにおける先駆者としてのリスクを取り、EV市場を確立するために何十億ドルもの資金を投じてきた ── その結果、他社は資金を費やす必要がなくなった。他のメーカーは今、EV分野に参入できる。だが他のメーカーはテスラが単独でリスクを負うことを選ぶだろう。

だから、イーロン・マスクはパートナーを探していないし、どこかと合併するつもりもない。最高のシナリオは、この分野でやや遅れを取っているが、強いバランスシートを持っている既存の大手自動車メーカー(トヨタが思い浮かぶ)がテスラに投資すること。

提携と合併は今、自動車業界のトレンドだが、テスラが逃しているのはそれだけではない。テスラはアメリカにおける4年連続の記録的な自動車セールスから、わずかしか恩恵を受けていない。テスラが生産台数と販売台数を大きく増やすようになって状況は変わり始めている。だが新車を開発して、市場に投入するには遅すぎたかもしれない。

テスラが大きなトラブルに見舞われているという意味ではない。ここ数十年で初めて、新しくスタートして成功したアメリカの自動車ブランドがその強みを生かすか、失敗するかの瀬戸際に立っているだけだ。

[原文:Tesla is going it alone while other carmakers are partnering and merging — here's why Elon Musk doesn't have a choice

(翻訳:Toshihiko Inoue、編集:増田隆幸)

ソーシャルメディアでも最新のビジネス情報をいち早く配信中

あわせて読みたい

Popular

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み