社外取締役で“旬を過ぎた”経営者が復活。元有名企業経営者というだけで選んでいいのか

リクシル

LIXILの経営陣をめぐる泥沼「潮田vs.瀬戸」とは別に、社外取締役の資質という問題も浮上している。

撮影:今村拓馬

株主総会の季節がやってきた。

今年最大の注目はLIXILグループだろう。

メディアが「泥仕合」と書き立てるため、一般的な理解は「創業家出身の潮田洋一郎氏(現CEO)と、その潮田氏に事実上解任された瀬戸欣哉氏(現取締役)の対決」だが、潮田氏が取締役とCEOを辞めるとした今、株主総会で何が問われているのかが判然としない。

株主総会でも変わらぬ「潮田vs.瀬戸」

まず簡単に経緯を振り返ろう。

潮田氏は2018年10月、経営方針を巡って対立した瀬戸氏を解任した。

手口はかなり稚拙で、瀬戸氏には「(トップ選任に大きな権限を持つ)指名委員会の総意としてあなたは辞めてほしい」と言い、一方、指名委員会には「瀬戸氏が辞めたいと言っているから後は自分たちがやる」と言った。

会社の命運を左右するといっても過言ではないCEOの人事が、創業家出身とはいえ発行済み株式の約3%しか持たない潮田氏の二枚舌で決まってしまうという事態が起きたわけだ。

解任された瀬戸氏は今回の株主総会で、自身を含む8人の取締役候補(うち4人は社内取締役候補)の選任を求めた。対して会社側は混乱を招いた当事者を全て排除、これまでのLIXILグループに関係のない7人を社外取締役として招き、再出発を図るとしている。

もっとも会社側提案は、いたるところに潮田氏の影響力が見え隠れする。今回の株主総会はその実、「潮田vs.瀬戸」の構図が変わっていない。

社外取締役とは何か

会社の中の上司と部下

社外取締役に求められる資質とは(写真はイメージで本文とは関係がありません)。

getty images/ visualspace

さて本稿で書こうとしているのは、この泥仕合の詳細ではない。株主に求められている「潮田氏か瀬戸氏か」という選択に登場してきた社外取締役についてである。

5月31日、LIXILグループは会社側が提案する社外取締役候補が出席する機関投資家向け説明会を開いた。

出席したのはコニカミノルタ取締役会議長の松﨑正年氏、元リコー社長兼CEOの三浦善司氏、元ミネベアミツミ専務の内堀民雄氏、元JVCケンウッド会長兼CEOの河原春郎氏、元日本政策投資銀行取締役の竹内洋氏、ベネッセホールディングス副会長の福原賢一氏。

この6人を相手にした機関投資家とのやりとりには、社外取締役とは何かを考えさせるものがあった。

例えばこんな場面があった。登壇者の1人が冒頭挨拶で、

「外から見ていると、潮田さんと瀬戸さんの対立は喧嘩両成敗ではないかと思う」

といった趣旨の発言をした。これに対して機関投資家の1人が、

「騒動のきっかけは潮田さんが諮って瀬戸さんを解任したことに始まっている。それは喧嘩両成敗なのか」

と質問すると、登壇者は回答に窮した。

代わりに説明会で多くの時間が割かれたのが取締役候補の実績。例えば元JVCケンウッドの河原氏は、

「私はケンウッドの社長になって半年で債務超過を解消し、9カ月後に過去最高益を更新した」

と繰り返した。

具体的な質問になると…

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社外取締役にふさわしい人物とは。過去有名企業の経営者だったというだけで選出されていいのか(写真はイメージです)。

getty images/ Thomas Lai Yin Tang

「LIXILグループのコーポレートガバナンスを健全化する」

会社側取締役候補は口々にそう語ったが、

「直近の業績が振るわないのは瀬戸氏のせいと指摘するが、原因はその前のCEOだった潮田氏などにあるのではないか」

といった具体的な質問になると、

「会社の内情をよく知らないので答えようがない」

とかわしてしまう。

「潮田氏の経営はどちらかといえば売り上げ重視。瀬戸氏の経営はどちらかといえば利益重視。今後の経営はどちらが望ましいと思うか」

という質問には、

「売り上げか利益かという短絡的な質問は危険だ」

と答える取締役候補者までいた。

有名企業元トップというだけでいいのか

東芝

撮影:今村拓馬

そもそも各自の実績の根拠も不確かだ。河原氏はケンウッドの社長になった後、旧日本ビクターとの経営統合を主導。しかし、統合会社の経営規模は縮小の一途を辿った。

元リコーの三浦氏は社内抗争の当事者としてトップの座を射止めたものの、業績悪化を理由に在任4年でCEOを事実上解任された人物だ。

ベネッセの福原氏は、「プロ経営者」として同社に招かれた元日本マクドナルド社長の原田泳幸氏が業績悪化で辞任した後の社長だが、「私には荷が重い」という趣旨の発言をしてわずか3カ月で副会長に退いた。

こうしてみると、LIXILグループの株主総会は引き続き「潮田vs.瀬戸」という構図であると同時に、“旬を過ぎた”元経営者がもう一度スポットライトを浴びようとしていること、表現は悪いが「ゾンビ経営者復活」の是非を問うているような気がする。

LIXILグループだけではない。

東芝が5月13日に社外取締役候補として発表した藤森義明氏は、瀬戸氏の前のLIXILグループCEO。

自身が主導して買収した独グローエの中国子会社の粉飾決算で、LIXILグループが巨額赤字を計上した責任を取って辞任した過去がある。

株主に対して取締役候補として提案される人材の経歴に、こうしたことが触れられることはない。ただ有名企業のトップを経験したという事実だけが提示される。

日本企業のコーポレートガバナンス強化策として、社外取締役の重要性が指摘されている。しかし、ふさわしい人材はどれだけいるのか。足りなければ、トラックレコードを不問に付して人数合わせをしているようでは、当初の目的など達成できるはずもない。

(文・悠木亮平)

悠木亮平:ジャーナリスト。新聞社や出版社で政官財の広範囲にまたがって長く経済分野を取材している。

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