男性育休後転勤は“嫌がらせ”か。Twitterで告発。家族の事情無視の転勤はアリかナシか

2歳と0歳を育てる共働き夫婦で、日系一部上場企業に勤める夫が育児休業明けに転勤を命ぜられ、時期の延期など交渉をしたものの聞き入れられず、結局、退職を決意し専業主夫になった——。

妻によるTwitter上のこんな投稿が、「パタハラ(パタニティハラスメント=育児休業や時短勤務など育児を希望する男性に対する嫌がらせ行為)だ」「こういう会社が少子化に拍車をかけている」などと、大きな反響を呼んでいる。6月3日午後7時時点で4.6万いいね、3.8万リツイートを集めている。

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撮影:今村拓馬

投稿者とのやりとりで浮上した一部上場企業名「カネカ」は、ハッシュタグ付きで拡散。Twitter上では「あり得ない」との声が飛び交い、会社にも問い合わせが相次ぐなど、炎上騒ぎとなっている。

三菱UFJ銀行が男性行員に育休義務化を始めたり、自民党の有志議員が男性の育児休業取得の義務化を目指す議員連盟の発足に動き出したりと、#男性の育休義務化が、にわかに注目を集める中、男性の育児休業取得率5%台という厳しい現実を裏付けるような投稿だ。

ただ一方で、こうした「男性の育休を嫌がる会社」や「家庭の事情を省みない転勤」は、決して珍しくないという声も。現代日本においても、仕事のためには家族が犠牲を強いられることは、やむをえないのだろうか。

「産後4か月で家族4人を支えます」

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Getty:kohei_hara

注目を集めた一連のTweetによると、状況は以下のようだ。

  • この家族は東京都内在住。この出来事があったのは4月のこと。
  • 夫は育児休業明け2日目で上司に呼ばれて、5月付で関西に転勤の内示を受ける。
  • 内示が出た当時、妻は産後4カ月で、2週間後には正社員の仕事に復職予定だった。
  • 家族は社宅から建てたばかりの新居に引っ越したばかり。
  • 上の子どもはやっと入った保育園の慣らし保育2週目。
  • 下の子どもは5月の保育園入園が決まっていた。

こうした状況を告発する以下のTweetが、6月に入って大きく拡散され、投稿者によって社名もほのめかされている。

「改めて決意夫日系一部上場企業で育休とったら明けて2日で関西に転勤内示、私の復職まで2週間、2歳と0歳は4月に転園入園できたばかり、新居に引越して10日後のこと。いろいろかけ合い、有給も取らせてもらえず、結局昨日で退職、夫は今日から専業主夫になりました。

私産後4か月で家族4人を支えます」

投稿者は「組織に属している以上転勤は当然だが」とした上で、転勤のタイミングの延期を頼んだようだが、それも断られたという。

「上長と人事には、組織に属している以上転勤は当然だが、今のタイミングでは難しいから1、2か月延ばして貰いたいと依頼したところ、ダメと。都の連合からアドバイス貰い、会社の労働組合にも相談したが人事OK出てる以上仕方ない、と。最後、労働局に相談したら、紛争状態になったら事業主との間に入り、

解決や助言をする事は可能、とのこと。結局、違法ではないから、労働者の状況を配慮し、妥当なのかどうか?を、場合によっては指導する事しか出来ないらしい。 このタイミングでの転勤はムリだから夫退職するしか無いと考えてるが、男性育休とったらこうなる、という見せしめ、事例になるのは不本意。

育休明けに0歳と2歳のワンオペ育児という無理ゲー

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Getty:kohei_hara

Business Insider Japan編集部は、話題となっているTweetを投稿した女性に現在連絡を取っているが、まだ回答を得られておらず、直接話は聞けていない。

このTweetから推察するに、家族の負担が特に大きいのは、2歳と0歳という子どもの年齢と、妻が育児休業からの復職を控えているという点だ。

育休明けの復職後は、不慣れな生活を前に不安がいっぱいだ。とくに、保育園に入った直後は風邪や病気を次々にもらい、子どもの看病のために何度も休まなくてはならない。まだ手のかかる2歳児とのきょうだいならば、妻が時短勤務を選んだとしても、嵐のような毎日だ。

こんな時期に、夫が単身赴任となることなど、想像もしたくない。妻側は仕事を続けること自体、絶望的になるのではないか。

企業は社員の家族の事情にどこまで配慮すべきなのだろうか。今回の騒動が突きつけているのは、共働きが当たり前になった時代だからこその問題でもある。

「そりゃ少子化にもなるわな」

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撮影:今村拓馬

Twitterが拡散したのも、こうした状況に対する怒りの声、この家族に共感する声が大きかったからだろう。

周囲の反応から、「少子化になるのも無理ない」という指摘。

「カネカの件『育休取ったら左遷とか当たり前じゃん』『男のくせに育休とるからだろ』って言ってる輩が割と居る辺りに深い闇を感じる。

そりゃ少子化にもなるわな。政治のせいだけじゃないわ。」

仕事よりも、家族のために生きようとすることは、そんなに悪いの?

「酷いな。 すごく考えたし悔しかったと思う。 父親が育休取ることがそんなに悪か、憎いか。 そんなんだから皆子ども産まなくなるんだよ。家族のために生きようとすると嫌がらせされるから。 大変だと思うけど応援します。」

夫が単身赴任であれば、共働きの妻と、その妻の会社が、子育てを一手に引き受けることになる。結局、こうした「育児社員の押し付け合い」は、果たして、誰のためになるのか。

「育休あけ2日で内示・月途中で異動・退職に有給使わせない…完全に嫌がらせ。もう問答無用の転勤自体無くしてほしい。共働きの時代に、どちらかのキャリアを犠牲にしなきゃいけないなんて結果国益にならない。単身赴任を選んでも子どもが犠牲になる。」

育休明け2日目の転勤内示が、投稿者の夫が育休を取ったことへの、会社側の“報復”かどうかは分からない。ただ、このタイミングでの異動は、一般的にそう見られても仕方ない時代なのだ。

「自分も似たような境遇のお父さんです」

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Getty:Taiyou Nomachi

こうしたパタハラが「自分にもあった」という男性からの声も相次いでいる。

「はじめまして!自分もパピさんと似たような境遇のお父さんで、今は転職先を探してます。産後4ヵ月はまだまだ本調子じゃない時だと思うので、身体に気をつけてくださいね。

ちなみにその職場は名前を晒しても良いくらいにクソですね…。」

「周りの目を気にして早く辞めるべき」と、上司に言われたという人。

「私も育休明け後、息子の体調不良でやむを得ず退職しました。 その際上司からは、

・有給は消化不可。退職日は会社が決める

・周りの目を気にして早く辞めるべき

・退職時に有給を全て消化した人はいない

人事部長からの書面もありますが、 退職届は出さなかったので最終的に解雇となりました」

経験者からは、家族連れに対する転勤制度自体に、疑問を呈する声も少なくない。

「我が家は転勤族だった(長子が高校受験により単身赴任に切り替えた)んだけど、養護学級レベルではない発達障害ですら転向のたびに地獄だったし母親は当然パートしかできなかったので、家庭を持つ人間の転勤ってのは下手したら生活を根こそぎ吹き飛ばす行為だと企業は理解してほしい」

「事実があったかどうかも含めて答えられない」

今回、Twitter上で名指しで炎上中のカネカに問い合わせると、広報担当者は「Twitter上のそうした状況は認識しているが、コメントは差し控えたい」との回答。

反響を呼んでいる投稿内容から、こうした事実があったかどうかについては「社内調査はしているが、個人情報でもあり、(事実が)あったかどうかも含めて結果については答えられない」と話している。

ただ、今回のハッシュタグ付きでの拡散、元投稿への共感の声から見ても、こうした「男性の育休へのネガテイブな対応」や「家庭の事情を省みない転勤辞令」について、大きな時代の変化を企業は感じ取るべきだろう。

「妻のいる男性が育休を取るなんてありえない」という考え方が依然として根強い一方で、働き手は、こうした企業の実態に敏感だ。

共働きを応援する会社を選ぶ20代

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撮影:今村拓馬

世界一の少子高齢化が進む日本で、4月の有効求人倍率は1.63倍と、高度経済成長期以来の水準。深刻な人手不足が起きている。

若手の採用難はなおさらだ。マイナビの調査によると、2019年卒で、企業の採用充足率(採用目標への達成率)は84.4%。全国すべての地区で8割以上の企業が、採用は「厳しかった」と回答した。

さらに、1980年代に3組に1組であった共働き世帯は、1990年代後半に状況が逆転し、現在は3組に2組が共働き世帯。当然、共働きが前提と考える若手は多く、男性だろうが女性だろうが、家庭を省みないような働き方を強いる企業は、はっきりと敬遠される風潮が生まれている。

都内の私立大学に通う、大学2年生の男性(20)は、こう話す。

「男性育休に対してネガティブな会社には就職をしたくありません。夫は働き、妻は専業主婦のような考えはなく、もちろん自分も育児には参加する、という考えの同世代は多いです。働く両親を見て育ってきた、平成生まれの僕らのスタンダードは子育ては2人でするもの」

これから就職活動を控える中で、企業を選ぶ基準として、共働きを前提に、家族を大切にする働き方は欠かせない。

「大学進学のための奨学金の返済など、学生のうちから将来の収入に対して不安を感じている人も多く、どちらかだけの収入ではやってはいけないと感じる世代。今、企業に求めるのは、共働きを応援するための充実した福利厚生や女性と男性両方の育児休業です」

年功序列や終身雇用といった働き方と引き換えに、維持されてきた転勤制度そのものも、果たして共働きが過半数を占める時代に合っているのだろうか。

#カネカ の件、燃え燃えしてるみたいだけど、結局、転勤制度が酷すぎる。社員の背景を会社は全く考えてないってことだもん。育休取れてイメージ良さげだったのに。社員の一人かもしれないけどその社員には家族とか守るべきものがあるっていうことをいい加減企業は分かれと思う。悪しき慣習、転勤」

若手人材争奪戦の時代。目の前の社内の配置に囚われる前に、採用や人材確保の観点からも、企業は社員の働き方を考えることこそが競争力となっていることを、自覚すべきだろう。

(文・滝川麻衣子、臼井拓水、写真は全てイメージです)

編集部より:初出時、Tweetへの反響を6月4日午後7時時点としておりましたが、正しくは6月3日午後7時時点です。お詫びして訂正致します。2019年6月4日 8:30

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