中国・北京の金融街。企業のブランド価値は大きな変化に直面している。
SeanPavonePhoto/iStock
広告代理店世界最大手WPPの調査部門カンターが、「2019年、中国で最も価値のあるブランドトップ100」を発表した。
中国経済については、成長の減速や日中貿易戦争の影響を不安視する声が高まっているものの、トップ100にランクインしたブランド価値の合計は、2018年比で3割増の8897億ドル(約96兆円)へと膨らみ、ランキング発表の始まった2011年以降で最大となった。
カンターが区分した全産業24分野のうち、13分野でブランド価値の総計が増え、とりわけエンタテインメント分野は前年比186%と最大の伸び率を示した。教育分野(157%)、小売り分野(155%)がそれに続いた。
予約サイト、フードデリバリー……新たなサービス分野が躍進
第24位にランクインしたフードデリバリー「Ele.me」の配達ドライバーたち。2017年9月、北京市内で撮影された光景。
REUTERS/Thomas Peter
トップ100入りした企業の数ではテクノロジー分野が最も多く(11社)、通信機器大手のファーウェイ(華為技術、6位)、スマホメーカーのシャオミ(小米科技、11位)、パソコンメーカーのレノボ(聯想集団、47位)、ドローンメーカーのDJI(50位)、通信機器大手のZTE(中興通訊、72位)、ロボットメーカーのUBTECH(優必選、85位)などがランクインした。
2019年版のランキングからは、消費者向け金融サービス、ライフスタイルプラットフォームなど新たに複数の産業分野が加わり、人工知能(AI)やeコマース、ニューリテール(オンラインとオフラインの融合による新しい小売り)、ソーシャルメディアプラットフォームを手がける企業の躍進が目立った。
ランキング入りした企業では、動画共有サイト運営のiQiyi(愛奇芸、28位)はブランド価値が前年比158%、同じく動画サイト運営のYouku(优酷、31位)が同136%と、大きな成長を見せた。
2019年に初めてランクインした企業は17社で、サービス予約プラットフォームのMeituan(美団、13位)、フードデリバリーのEle.me(餓了麼、24位)、フィンテックのLufax(陸金所、26位)がその最上位に名を連ねた。
アリババ、テンセントがケタ違いのブランド力
中国ブランド価値ランキング第1位のアリババグループ、ジャック・マー会長。2019年5月、パリで開催されたスタートアップイベント「VivaTech」で講演中のもの。
REUTERS/Charles Platiau
トップ10ブランドには、次のような企業が名を連ねた。
【第10位】JD.com(京東商城)
[分野]小売り[ブランド価値]212億米ドル[2018年比]145%
【第9位】中国建設銀行
[分野]銀行[ブランド価値]228億米ドル[2018年比]114%
【第8位】バイドゥ(百度)
[分野]テクノロジー[ブランド価値]267億米ドル[2018年比]107%
【第7位】中国平安保険
[分野]保険[ブランド価値]270億米ドル[2018年比]121%
【第6位】ファーウェイ(華為技術)
[分野]テクノロジー[ブランド価値]332億米ドル[2018年比]138%
【第5位】マオタイ(茅台)
[分野]アルコール[ブランド価値]366億米ドル[2018年比]158%
【第4位】中国移動通信(チャイナ・モバイル)
[分野]通信プロバイダ[ブランド価値]391億米ドル[2018年比]79%
【第3位】中国工商銀行(ICBC)
[分野]銀行[ブランド価値]407億米ドル[2018年比]109%
【第2位】テンセント(騰訊)
[分野]テクノロジー[ブランド価値]1382億米ドル[2018年比]104%
【第1位】アリババ(阿里巴巴)
[分野]小売り[ブランド価値]1410億米ドル[2018年比]159%
トップ100を眺めるだけで中国が見えてくる
カンター作成の「中国で最も価値のあるブランド」トップ100もまるごと転載しておきたい。表の右側に並ぶ数字は、左からブランド価値(単位は100万米ドル)、2018年比の増減率(NEWは初のランクイン)。まずは1位から50位まで。
出典:KANTAR CHINA INSIGHTS
次に51位から100位まで。
出典:KANTAR CHINA INSIGHTS
(文:川村力)