高精度位置情報システム戦争が勃発 ── IoT時代のソフトバンクとNTTドコモの戦い方

ソフトバンク 新サービス

ソフトバンクは“センチメートル級”とうたう、高精度位置情報システムの提供を7月から順次始める。

ソフトバンクは6月3日、新しい位置情報測位システムの展開について発表した。

7月から農機メーカーのヤンマーアグリ、建設業の鹿島建設、自動運転などの開発を行う子会社のSBドライブと実証実験を開始。11月末までに全国にサービス展開する予定だ。

野田真氏

ソフトバンクでモバイルネットワーク本部長を務める野田真氏。

従来から市場にあった位置情報測位サービスと異なる点は、誤差数cmの高精度な測位精度を持っている点と、場合によっては専用の受信機を導入企業に提供し、比較的安価に導入できる点。

ソフトバンクでモバイルネットワーク本部長を務める野田真氏は、新システムの狙いについて「あらゆるものがインターネットにつながる時代がやってきている。今後あらゆるものが自動オペレーションになっていく中で、高精度な位置情報は必要不可欠なインフラの1つ」と、IoT時代を見越した取り組みと説明した。

ソフトバンクはLTE基地局を基準点として活用

システムの仕組み

ソフトバンクの高精度位置情報システムの仕組み。

わずか数cmという誤差の測位精度の実現には、日本の準天頂衛星「みちびき」などの存在と、同社が設置する全国3300カ所以上の独自基準点が欠かせない。

一般的に企業や農業従事者がこのような位置情報に関するシステムを導入する際、活用するエリアに独自に基準点を設置する必要があり、設置だけでも1カ所100万円程度の費用がかかっていたという。

ソフトバンクのサービスの特徴

ソフトバンクのサービスの特徴。

しかしソフトバンクの独自基準点は、ソフトバンクが既に保有し運用している全国約20万カ所のLTE基地局を利用する。これにより、設置費用が省けるだけではなく、同社が「日本全国をカバー」と称する広いサービスエリアでの展開が可能となっている。

また、位置情報の配信方法には端末側で測位計算を行なうエッジ方式と、測位計算はサーバー側で行なうクラウド方式の2種類を提供する。

エッジ方式はよりリアルタイム性を求めるシチュエーションや装備する機材にスペース的な余裕がある場合に最適。一方、クラウド方式はウェアラブルデバイスなど演算能力やスペース的な課題のある端末に適している。

計算方法は用途に応じる

ケースに応じて、エッジとクラウド、2つの提供方式を用意する。

ソフトバンクによると、エッジ方式の場合、測位を開始してから完了するまでの時間(Fix時間)は平均3.4秒と、従来の市場で提供されているもの約4分の1まで短縮されていると言う。クラウド方式については、このFix時間とさらにデータ通信時の遅延も合わせた時間になるとのことだが、その測位結果は「理論的には同じ」としている。

同様のサービスの展開を発表したNTTドコモとの違い

NTTドコモ 資料

NTTドコモも高精度位置情報システムの提供を5月28日にリリース。

出典:NTTドコモ

前述のとおり、高精度な位置情報というものは、IoT時代における遠隔操作や自動制御のサービスを運用する上ではなくてはならないものだ。そのため、通信事業者ではソフトバンクだけではなく、NTTドコモも同じような高精度位置情報システムの提供について5月28日に発表している。

NTTドコモの場合も、同社独自の基準点を設置し、みちびきなどの衛星からの情報を組み合わせて計算を行い、約±2cmの測位精度を提供するとしているが、そのサービス展開の考え方はソフトバンクとやや異なる。

最大の違いは基準点の設置方法だ。ソフトバンクが基地局を活用するのに対し、NTTドコモは本サービスのために、原則新規で基準点となる独自固定局を建てていく方針という。

ソフトバンク 専用受信機

ソフトバンクの専用受信機。現存するほとんどの衛星に対応しており、サイズは幅129mm×厚さ50mm×奥行き90mmほど。

そのため、提供エリアを「LTEがつながる全国」としているソフトバンクに対し、NTTドコモはサービス開始を予定する10月1日時点のエリアは、フラグシップパートナーである小松製作所での活用領域に留まるとしている。

この理由をNTTドコモ広報部は「位置情報の測位計算というものの性質上、その機器と基準点の距離が短いほど精度が高くなるため」と説明する。また、NTTドコモはソフトバンクが提供するような安価な専用の受信機の取り扱い予定は現状ないが「協創するパートナーと検討を進めている」とする。

なお、ソフトバンクもNTTドコモも具体的な提供価格などはまだ明らかにしていない。両社ともに通信事業者としてIoTそして5G時代の展開を機に、来たる企業の需要の波に乗ろうとしている格好だ。比較的安価かつ自由度の高いソフトバンクと、精度を求めるため作り込みを重視するNTTドコモ。

同様のサービスを提供しながらも、立ち位置の違いが鮮明にあらわれているのが興味深い。

編集部より:初出時、専用受信機のサイズ表記に誤りがありました。単位をcmとしておりましたが、正しくはmmです。現在は正しいものになっております。2019年6月6日 12:00

(文、撮影・小林優多郎)

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