アップルがカリフォルニア州サンノゼで開催中の世界開発者会議「WWDC19」。その初日朝の基調講演は2時間18分に及ぶ、かなりの長丁場だった。
MacBook ProやiPod touchといったこの時期に合わせた「新製品」が先にデビューしていたものの、噂どおりの新ハードも出てきた。完全新設計となった新型「Mac Pro」と、プロ向けディスプレイ「Pro Display XDR」だ。
価格はMac Proが5999ドル(約64万7700円)から、Pro Display XDRが4999ドル(約53万9700円)。まさにプロ級の価格だ。発売はいずれも、今秋の予定だ。
※Pro Display XDRについては別記事でお届けします
先祖返りした「ネオクラシック」なデザイン
新型Mac Proのスケルトンにしたイメージ。スペックシート上の重量は約18kg。それなりに重いので、「脚」にキャスターを後付けできるオプションがある。
Macのプロ向けワークステーション「Mac Pro」の最大の注目は、形状が従来の円筒形から、金属素材の四角の形状に「先祖返り」したことだろう。
円筒形のMac Proがデビューしたのは2013年だったが、大幅なコンパクト化とおよそワークステーションらしくないインテリアのような優れたデザインの一方、コンパクト設計ゆえの拡張性の乏しさは、「プロ」を名乗り続けるためには大きなネックになっていた。
全世代のMac Pro。大幅な小型化にこだわるあまり、拡張性・汎用性を犠牲にした部分は否めない。
新型Mac Proは、ある意味で2013年の「戦略ミス」を刷新するように、求められる姿をもう一度考えたモデル、という印象がある。
形状は「ワークステーションらしい」四角いボディーに戻り(ただしデザインは極めて現代的で美しい)、メモリーは最大1.5TB、CPUは最大28コアのインテルXeonプロセッサーを搭載できる。
拡張スロット(PCI Express)は8つで、そのうち下型の4つは、主に「MPX Module」(Mac Pro Expansion Module)と呼ばれるグラフィックス強化モジュールを想定した配置になっている。
1つ言えるのは、前世代のMac Pronに比べて「大幅に拡張性を確保した設計」になっているということだ。
「いろいろな拡張ができる」というだけではなく、メンテナンス性も良さそうなことが見て取れる。
公式サイトを見る限り、少なくともケースのカバーはほとんどネジを外すことなく、上部の持ち手を90度ひねるだけで、上側に持ち上げて外すことができる。
カバーを外した状態になると内部の構造がよく分かるが、上部に飛び出た2つの持ち手部分がそのまま、ボディーのメインフレームになっていて、内部構造には遮蔽物がほとんどない設計に見える。
アップルは冷却(空冷方式だ)のエアフローの良さについても基調講演でアピールしていた。
この先、この新型ボディーのプラットフォームを4〜5年使う可能性は高いわけだから、なるべく余裕があるに越したことはない。
(文・伊藤有、写真・アップル)