スタンド別売で53万円! アップルのプロ液晶「Pro Display XDR」はなぜ高いか

Apple Pro Display XDR

  • 8年ぶりの新型アップル純正ディスプレイ
  • 「マスターモニター級性能」で解像度はRetina 6K 32インチ(6016×3384ドット)
  • 今秋発売、価格4999ドル(約53万9700円)から、ただしスタンドは別売

WWDC19基調講演にて、新型Mac Proに合わせて発表された、アップルの純正ディスプレイ「Pro Display XDR」だ。2011年7月発表の「Apple Thunderbolt Display」以来、実に約8年ぶりの新型アップル純正ディスプレイで、完全新設計。一方、その価格も非常に高価で、4999ドルから(約53万9700円)。しかもこの価格は「スタンド別売」(999ドル、約10万7800円)。

Apple Pro Display XDR

先に行われた新型Mac Proのデモのなかでチラチラと映っていたため「これは?」となった基調講演参加者も多かったはず。

新型Mac Pro(5999ドルから、約64万7700円)とセットで買うと、120万円を超える買い物になってしまう計算だ。

どんな特徴をもった液晶なのか?

ライバルはソニーの400万円級「マスターモニター」

Apple Pro Display XDR

この超高価な液晶ディスプレイは、基本的にスタジオでの使用などの「プロ向け」をターゲットにしている。具体的な競合は、基調講演でも実物写真を見せて言及したソニーのマスターモニターだろう。

基調講演で例に出されたソニーのマスターモニター

どの機種なのか型番までは不明だが、「ソニーの価格は4万3000ドル」と説明していたことから、可能性としては30インチの4K有機ELマスターモニター「BVM-X300」(価格428万円・税別)、少なくとも31インチ4K液晶マスターモニター「BVM-HX310」(価格398万円・税別)ということになる。

Apple Pro Display XDR

アップルらしいのは、iPad ProやiPhoneなどにも採用されている、周囲の環境光に応じてディスプレイの色や明るさを自動調整する「TrueTone」機能も搭載していることだ。

性能を比較すると、一般的なディスプレイでよく扱われる、輝度1000nits、明暗表現の幅の広さを表すコントラスト比100万:1という性能は確かにソニーと同等。

いずれにしてもアップルは、ソニーよりは解像度も高く高性能、「約53万円」だとしても大幅に安いと言いたいわけだ。

576個のブルーLEDを個別に制御する高品位仕様

この高価な液晶ディスプレイがどういう駆動をしているかは、アップルが公開しているディスプレイパネルのCGからある程度読み取ることができる。

LED576

アップルの解説によると、バックライトには576個のブルーライトLEDを「エッジ」(両端)ではなく平面上に配置。これを高画質なテレビで使われる「エリア駆動」のように、ある程度個別に制御することで、明暗表現を豊かに(コントラスト比を高める)している。

作品の「仕上がり」確認をするプロの道具であるマスターモニターが4K解像度を採用しているのに対して、アップルが6K解像度なのは、動画編集の「作業領域」のためだ。

6K解像度があると、下の画像のように、編集中の4K映像を縮小表示することなく(いわゆるドットバイドット)、動画編集ソフトで作業を続けられる。

6K

もちろん、プロがマスターモニター的に使うためには、ディスプレイごとの色のバラつきをなくすカラーキャリブレーションも欠かせない。そうしないと、作業環境によって微妙な色合いの違いが出てしまうからだ。

これについても、アップルは「576個のLEDを個別に調整」する最先端のカラーキャリブレーションで「校正済み」だと説明している。

ソニーのマスターモニターに比べてどの程度の性能があるかは未知数だが、「微妙な階調まで、同一の色表現が保証されたモニター」が制作過程で一貫して使われることには、1つ大きな意味がある。「53万円でもお買い得だ」という見方は、用途次第では確かにそうかもしれない。

なお、接続端子は、現行機種のすべてのMacとケーブル1本で接続できるThunderbolt 3(USB Type-C)だ。

tb3

「Pro Display XDR」

「Pro Display XDR」の主な仕様。

独特の格子型デザインと、回転機構付き「別売」スタンド

スタンド

アップルによると、新型Mac Proと統一された格子型の不思議な加工によって、表面積を2倍以上に増やし、本体の冷却能力を高めている。

格子状の、個性の強いデザインとは対照的に、スタンドは1枚の厚いアルミの塊を撃ち抜いたような、シンプルなデザインになっている。

アップルの説明によると、別売999ドルのスタンドは、画面の回転機構だけではなく、マグネットコネクターで簡単の脱着できる仕組みになっている。透視図をみるとたしかに凝ったデザインと設計のように見えるが、普通のスタンドに10万円というのはなかなかの高価さだ。

stand2

やや複雑な構造をもつスタンドの内部機構。上下の移動と、画面自体の角度調節を1つのアームでできるようにしている。

スタンド代の10万円を節約したい、あるいはすでに社外品のディスプレイアームを使っているという人には、別売で「VESAマウントアダプター」もある。ただし、こちらも199ドル(約2万1400円)とそれなりの価格だ。

VESAマウントアダプター

右のX型のものがVESAマウントアダプター。一般的なディスプレイマウントに装着するときに使う。199ドル。

(文、写真・伊藤有)

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