アップルは、iOSからiPad向けの機能などをスピンアウトさせる。
アップルは日本時間6月4日、同社がカリフォルニア州サンノゼで開催中の世界開発者会議「WWDC19」のキーノートで突如登場したタブレット向けOS「iPadOS」。
iPadOSはiPadの2017年発売の第5世代以降、2015年発売のiPad miniの第4世代以降、2014年発売のiPad Airの第2世代以降、そして当然すべてのiPad Pro(9.7/10.5/11/12.9インチ)で利用可能。一般公開は2019年秋の見込みだが、すでにApple Beta Software Programではパブリックベータの受付を開始している。
従来、iPadはiPhoneと同じくiOSで動作しており、カラム表示や2つのアプリの表示機能など、一部のみiPad限定のインターフェースや機能として搭載してきたが、基本的には同じ「iOS」と表記されてきた。
今回発表されたiPadOSも従来通りのアプリが使えるなど、根本的なエコシステムに変わりはない。ただし、今後、名称を明確に区別してiPad専用機能を増やす方針をとる、ということだろう。iPad OSの注目機能をみていこう。
まずはホーム画面。天気や次の予定などのウィジェットを固定できるようになった
Split VIew(画面分割機能)も進化。ノートやSafariなどでは同じアプリを2つ起動できる
マルチタップ操作で「コピー」「貼り付け」「戻る」が利用可能
キーボードも強化され、画面のどこでも文字が打て、スワイプ操作での入力も可能
最近流行の黒基調のUI「ダークモード」もサポート。有機ELディスプレイ搭載のiPad Proでは多少の節電効果も?
ファイル機能も強化。macOSのFinderようなカラム表示ができるようだが、iOS自体にはmacOSやWindows、Androidと同等のフォルダー階層の概念はない
Apple Pencil絡みの機能強化もある。パレット機能が一新されているほか、書類やスクリーンショットへの書き込み機能が多機能化している
Macユーザー向けの機能だが、ついにiPadをMacのセカンドディスプレイとして使う機能が公式に実装。名称は「Sidecar」
※2019年秋登場のmacOS Catalinaが必要。
しかも、Adobe Illustratorなどの対応アプリであれば、iPadをペンタブレットとしても利用できる
※2019年秋登場のmacOS Catalinaが必要。
iPadOSはiPadの仕事で使うタブレットとしての地位を確立させる
第2世代iApple Pencilやキーボードフォリオ対応となった新しいiPad Proシリーズが、記憶に新しい。
近年、アップルはiPadをPCに変わる新世代の道具としてアピールしてきた(iPad Proを持つ子どもが「What’s a computer?」と問いかけるCMが象徴的だ)。
その流れからしても今回のiPadOSの「iOSからの独立化」は納得のいくものがある。iPhoneとiPadはどちらも仕事に使えるが、その用途や目的は大きく異なるからだ。
アップルが公開している現状の「Sidecar」対応のアプリケーション一覧。
さらに、アップルが「Sidecar」と呼ぶiPadとMacとの連携機能は、iPadの新しい使い方を提案している。iPadユーザーの間では有名だが、従来も画面をミラーリングしたり、Apple Pencilと一緒にペンタブレットのように使うサードパーティー製アプリはあった。それとの大きな違いは、アドビやMAXON Computerのような「プロ向けのツールのメーカー」がいち早く対応を表明していること。「公式対応」ならではのメリットだ。
アメリカの調査会社・IDCによると、グローバルにおける2018年のタブレット市場は2019年から2023年にかけて縮小傾向にある予測としている。
IDCの調査によると、2018年第 3四半期のタブレット出荷は、シェア圧倒的トップのアップルも6.1%減少している。
出典:IDC Worldwide Quarterly PCD Tracker, November 2, 2018
同社が2018年11月に公開した2018年第3四半期におけるタブレットの出荷台数調査では、全体で前年同期比8.6%の減少、アップル1社でも前年同期比6.1%の減少としている。
iPadというカテゴリーに新しい価値をもたらすことは、アップルにとって重要な課題となっている。
(文・小林優多郎、写真・アップル)