殴り合い、マネキン丸裸…「ユニクロ×カウズ」巡り中国転売ヤーが“暴徒化”

yuni

中国のユニクロ店舗に客が殺到。何のため?

「どけどけ~」「俺のだ~」

障害物競争のようにシャッターの隙間をくぐり、おいはぎのようにマネキンの服を引き脱がす。

暴動か米騒動かと見まがうような動画で、人々が時につかみ合いながらも奪い合っていたのは、ユニクロのTシャツだった。

ユニクロは6月3日、ニューヨークの著名アーティスト「KAWS(カウズ)」とコラボしたTシャツを中国で発売した。

現地の報道によると、アリババのECサイトTmall(天猫商城)では0時の取り扱い開始後数秒で売り切れた。買えなかった客は近隣店舗に殺到。開店数時間前から列ができ、各地のショッピングセンターでは正面玄関が開くと同時に、大人たちが全力ダッシュ。冒頭の描写のような、大混乱となった。

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Scenes from the Kaws x Uniqlo release in China today

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テレビのニュース番組は開店直後の様子を一斉に報じ、SNSでも大量の動画が上がった。何十着も抱えてレジに向かう中年の女性も映っており、転売目的の客も少なくなさそうだ。

カウズは若い中国人たちの間で非常に人気がある“ブランド”だったが、この騒動で国民に広く認知された形だ。なぜ、こういうことになったのか。

転売価格は8倍にも

カウズはニューヨークを主拠点に活動しているアーティストで、有名キャラクターの目を「×印」にする作風が特徴。1990年代から注目され、服飾ブランドとのコラボを多く手掛けている。

中国でカウズの知名度を高めたのは、ほかならぬユニクロだと言われる。

2016年からカウズとコラボし、Tシャツなどを販売してきたユニクロは、中国でもインフルエンサーやメディアを使いカウズの情報を配信。クールで個性的というイメージの形成に寄与した。

カウズ

×の目がトレードマークのカウズの作品。

shutterstock.com

さらにカウズのブランド力を高めたのは、クリスチャン・ディオールとのコラボだった。2019年、中国でディオールとカウズのコラボ商品が発売されると、その「転売価値」が大きくクローズアップされた。

7500ドル(約80万円)の大きなぬいぐるみが、フリマアプリで3倍以上の価格で取引されたのだ。ナイキ・エアジョーダン・フォーとのコラボスニーカーも定価2400元(約4万円)のところ、フリマアプリでは8倍に値上がりした。

また、2019年4月1日にサザビーズ香港で開かれたオークションでは、日本のファッションデザイナーであり、起業家のNIGO氏が出品したカウズのアートが、予想落札価格を大きく上回る1478万4505ドル(約16億4000万円、1億元)で落札された。

ユニクロが6月3日に売り出したTシャツ(UT)の価格は1枚99元(約1500円)。「作品が1億元で売れるアーティスト」の箔がついたTシャツが99元で買えるとあって、ディオールなどの高価格品に手が届かない層も殺到したのだった。

現在、中国のフリマアプリでは既にこれらTシャツが200元前後で出品されている。

カウズとのコラボTシャツは、日本では4日遅れて6月7日に発売される。

(文・浦上早苗)

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