高齢職業ドライバーの事故削減にAI活用、DeNAが新事業「ドライブチャート」提供開始

DeNA(ディー・エヌ・エー)の専用車載器の内向きカメラで撮影した映像

専用車載器の内向きカメラで撮影し、DeNA(ディー・エヌ・エー)のドライブチャートを利用して、運転手の視線などを判別する。

DeNA

スマホゲーム大手DeNA(ディー・エヌ・エー)は6月4日、新サービス「DRIVE CHART(ドライブチャート)」の提供を開始したと発表した。商用車向けの事故削減支援サービスで、同社の持つAIとIoTの技術を活用する。

JVCケンウッドと共同開発した専用車載器を、タクシーやトラックに設置。外向きカメラでは「車間距離」や運転する「道路状況」を撮影、内向けカメラでは「運転手の目の動き」などを記録する。車載器に装備したGPSや加速度センサーの情報も交え、AIによる画像認識技術を使って危険運転状況を把握し、運転手の技術改善に結びつける。これにより、交通事故の抑制を図る。

DeNA(ディー・エヌ・エー)とJVCケンウッドが共同開発した専用車載器を手に持つ、オートモーティブ事業本部スマートドライビング部の川上裕幸部長。

DeNA(ディー・エヌ・エー)とJVCケンウッドが共同開発した専用車載器を手に持つ、オートモーティブ事業本部スマートドライビング部の川上裕幸部長。

現在、交通事故の死亡事故発生件数は減少傾向にある。とはいえ、内閣府の平成30年度版交通安全白書「平成29年度中の交通事故発生件数」によると、全国で年間47万2165件の事故が発生し、商用車だけでも3万2655件発生しているという。

事故の原因は、90%以上がヒューマン・エラーと言われている。DeNAのドライブチャートでヒューマン・エラーにつながる要因を分析して、運転手の交通事故防止につなげていくという。

DeNA(ディー・エヌ・エー)が配布した発表資料_11

交通事故の原因の大半がヒューマン・エラー。

DeNAの配布資料

2018年4月から約半年をかけてDeNAは、タクシー配車の京王自動車、トラックなどによる物流を行う日立物流と実証実験を行い、事故率をそれぞれ約25%、約48%改善した(過去5年の同時期平均との比較)。

実証実験期間中、例えば、タクシー、トラックの運転手が急ブレーキや急ハンドルの操作を行った際、ドライブチャートを通して映像を切り出し、運転業務を終えた後、翌日などに運転手に自らの運転を映像で確認してもらい、振り返った。そうすることで、事故にもつながる運転の改善を図ることができ、また、利用するルートの危険なポイントを確認できるという。

DeNA(ディー・エヌ・エー)が配布した発表資料_23

DeNAの配布資料

高齢者による交通事故が社会問題

DeNA(ディー・エヌ・エー)が開発した交通事故削減支援サービス「ドライブチャート」について説明する、同社常務執行役員でオートモーティブ事業本部の中島宏本部長。

DeNAが開発した交通事故削減支援サービス「ドライブチャート」について説明するオートモーティブ事業本部本部長の中島宏常務執行役員。

DeNAのオートモーティブ事業本部長の中島宏氏は「(ドライブチャートの)リスク検出能力の高さを生み出しているのが、DeNAが得意としているAIの技術」と胸を張る。一方で、中島氏は運転手の高齢化問題を念頭に置いた発言も度々していた。

「日本は世界で最も進んだ高齢化問題が影を落としている。近年の傾向として、高齢者による交通事故が社会問題になっている。昨今の高齢者の事故でも見られるように、横断歩道や道路標識が見にくいという交通環境が遠因というのも考えられる。得意分野であるAIとインターネットを活用して、事故ゼロ社会に貢献していきたい」

DeNA(ディー・エヌ・エー)が配布した発表資料_07

DeNAの配布資料。

ドライブチャートは真正面からのサービス

タクシーやトラック業界は、運転手の高齢化問題を抱えている。

「特にご高齢の方は、事故の特徴を考えると、徐々に年齢を経るごとに運転の判断ミスが多くなっていく。事故という結果が出てから『危なかったね』と言っても手遅れ。刻々と変わりゆく要因を、きちんと経年で分析することが大事。(今回の新サービスのような)要因にアプローチできる事故削減サービスでなければ、高齢の方の事故を未然に防ぐというのは無理だと思う。これは真正面からのサービス」(中島氏)

発表会見に出席した神奈川県タクシー協会の伊藤宏会長も期待する。

「ドライバーの平均年齢も上がってきている。今までは運転の映像だけでそれ以降の事故防止に繋がるものがなかったが、今回の新システムはさらなるPDCAサイクルが行なえる。ドライバー自身の運転行動をウェブを使って振り返りもできる。一時停止不履行とか車間距離の超過とかは以前のドライブレコーダーにはなかったので、大いに期待できる」

一方で、日立物流のスマートロジスティクス推進部の館内直部長は、運転手の評価に繋がるとした。

「これまでは事故を起こしたとか結果だけしかわからず、その課程、運転技術まではなかなかわからなかった。このシステムによって、運転手の技術や、(業務で関係する)配送会社の評価もしやすくなる」

DeNA(ディー・エヌ・エー)が開発した交通事故削減支援サービス「ドライブチャート」の発表会。

(左から)京王自動車の石井正己常務取締役、DeNAの中島宏常務執行役員、神奈川県タクシー協会の伊藤宏会長、横浜市の立石建経済局成長戦略推進部長。

ドライブチャートは、専用車載器の料金が5万円が基本で、月々の利用料も支払う必要がある。導入台数によっても価格は変わるという。

DeNAは、この数年、収益を大きく落としている。これまでゲーム事業が収益の大半を占めてきたが、スポーツ事業やオートモーティブ事業など、新たな収益の柱を生み出すことに力を入れている。

(文、写真・大塚淳史)

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