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- 多くの人が知らない病院の真実について、看護師に聞いた。
- 非営利病院と営利病院の違い、大学病院と総合病院の違いなどだ。
- 病院は、思ったよりも不衛生な場所のようだ。
誰でも、病院に行かなくてはならないときがある。しかし、よほどの事情がない限り、行かずに済ませるという人も多い。
シカゴ大学の調査によると、アメリカ人の半数近くが医療費を気にして病院に行かなかったことがあると回答した。病院という場所自体を怖がる人もいて、「病院恐怖症」(nosocomephobia)という症状もある。
病院を恐ろしく感じるのは、病院に行くと何をされるのか分からないせいもあるが、同時に、そもそも病院がどんなところなのかという知識が足りないせいではないだろうか。
そこでBusiness Insiderは、病院で働く看護師に、多くの人が知らない病院の事実を聞いた。
現場に理解のない経営陣から思いがけない不衛生さまで、看護師が明かす、多くの人が知らない病院の真実7つを見てみよう。
経営陣の要求と現場の要求は、ほとんど一致しない。
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多くの看護師は、病院の経営陣は医療の現場をよく知らないのに意思決定に介入しがちと語った。
「上層部は、医療の経験はなく、治療の目的や方法を知らない。だがしばしば、治療の方針について決定を下す」とメリーランド州の元看護士リンは述べた。
「管理側にいる人間の多くは、経営学の学位しか持っておらず、医療の現場については何の知識もない」とテキサス州の外傷専門病院に勤務する看護師エイミーは語った。
「お金のことばかり考えて、患者のことなど考えない」
ニュースサイト「アクシオス(Axios)」の分析によると、2018年、医療関連分野のCEOの報酬の中央値は770万ドル(約8億5000万円)、医療関連会社177社のCEOが手にした報酬は合計26億ドルに達した。
勤務はかなり過酷。
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看護師の仕事をするうえで最も大変なことは、長時間労働と人手不足と以前、多くの看護師がBusiness Insiderに語った。
「スタッフがどれだけオーバーワークの状態にあるか、一般には知られていない」とニューメキシコ州の看護師ショーンは語った。
「少し大げさに聞こえるかもしれない。怠けて、1日中ゴシップ話をしているような現場もあることは知っている。だが、それは本当にごく一部」
フロリダ州の元看護士デボラによると、病院は表向きには人員は足りていることになっていても、実際は人手不足。
「病院で働くスタッフは皆、一人ひとりの患者に最善を尽くしたいと考えている」とノースカロライナ州の看護師アンは述べた。
「それでも時々、医療スタッフはイライラしていると思われてしまう。ただ忙しすぎて、手いっぱいになっているだけ」
看護師の仕事は病院にとって大部分を占める。だが地位は低い。
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手術や診断、一次診療といった医療サービスの中には、入院を必要としないものもある。しかし入院治療については、24時間365日、看護を行う看護師に依存している。だが経営陣や医師は、依然として看護師にその働きに見合った報酬も価値も与えていないとオレゴン州の看護師テリーサは述べた。
「我々は、いわば病院の最大の売り物を提供している。だが、まるで厄介者のような扱いを受ける」とテリーサ。
「看護師はどこの病院でも最大のサービスを提要しているのに、コストとしか見られていない」
大学病院とそうではない病院では、治療方針が異なる可能性もある。
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「大学病院などのティーチング・ホスピタル(研修医が研修を行う病院)は最新の研究に精通している」とオハイオ州の看護師スーザンは述べた。
ティーチング・ホスピタルは、大学の医学部と連携し、医学生が実地で研修を受けられる医療機関。一方で、ティーチング・ホスピタルは、納税者により負担をかけてもいる。他の病院に比べて、メディケア(アメリカの高齢者向け医療保険制度)からより多くの支払いを受けており、患者が支払う医療費もより高額。
複数の調査によると、ティーチング・ホスピタルは一般的な病院よりも良好な医療を提供し得る。「Journal of the Association of American Medical Colleges」に2014年に発表されたレポートによると、主要なティーチング・ホスピタルでは、マイノリティの患者や重症患者の受け入れ率が一般的な病院よりも高い。また最近のレポートでは、死亡率も低いことが明らかになった。
非営利病院も利益を追求している。
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ティーチング・ホスピタルと同様に、非営利病院と営利病院の違いも理解されていないと看護師たちは語った。
アメリカのコミュニティ・ホスピタル(地域住民向けの病院)の60%は非営利病院で、州や地元自治体に納める税金を免除されている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジル・R・ホーウィッツ(Jill R. Horwitz)教授の分析によると、営利病院は財政面をより優先させるため、精神科の緊急医療のような利益につながらない医療を提供しない傾向にある。
だが、非営利病院の方が常に良い選択肢とは限らないとアリゾナ州の手術室看護師デイビッドは指摘した。
「非営利病院も利益追求の姿勢は変わらない。ただ株主がいないだけ」
2018年に発表されたレポートは、非営利病院の約3分の1が、税免除の恩恵を受けながら、それを上回る貢献を地域社会に提供できていないことを明らかにした。
期待されるほど清潔ではない。
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ノースカロライナ州の看護師ジュリエットをはじめ、複数の看護師は、病院は患者が期待しているほど清潔な場所ではないとBusiness Insiderに語った。
医療関連のニュースサービス「カイザー・ヘルス・ニュース(Kaiser Health News)」によると、患者は病院から帰る時に、ウイルスや細菌を運んでしまう可能性があることが複数の調査で明らかになった。
テネシー州の看護師ブリトニー・ウィルソンは、病院では患者が変わるとリネン類を取り替えているが、ドアノブやナースコールのボタンなどは必ずしも消毒していないとブログに記した。
「毎日、大勢の患者や訪問者が病院の廊下を行き来するなか、高いレベルの衛生状態を維持できていない病院もある」とウィルソンは記した。
室温は、病室ごとに調整できないのが一般的。
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次に病室が寒すぎると感じることがあったら、自分だけではないことを思い出そう。看護師や他の医療スタッフは、病室ごとに室温を調整できないことが多い。
「通常、室温は部屋ごとには調整できない」とニューヨークの看護師マットは述べた。
「病室が寒すぎたり、暑すぎたりしたときは、おそらくフロア全体がそうなっている」
(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:増田隆幸)