米アマゾンCEOベゾス氏、キレッキレで熱弁した 「本当の未来予想」 【re:MARS登壇】

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今回が初開催の「re:MARS」。

米アマゾンは、6月4日から7日まで、ラスベガスで「re:MARS」と題したカンファレンスを開催した。

“MARS”とは「機械学習(Machine Learning)」「自動化(Automation)」「ロボティクス(Robotics)」「宇宙(Space)」の略。現在の社会を変えつつあるコアテクノロジーについて、関係者を集めて語り合う場となっている。

初日の基調講演には俳優のロバート・ダウニー・Jrも登場、「アイアンマン」を初めとしたマーベル・シネマティック・ユニバース作品出演の思い出を絡めながらAIについて自説を語り、「AIとロボティクス、ナノテクを使えば、現在の環境問題を解決できる」として、2020年に自然環境保護団体「Footprint Coalition」を立ち上げると発表した。

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トニー・スターク役でおなじみのロバート・ダウニー・Jr。まるでアイアンマンの主人公トニー・スタークさながらに、自然環境保護とテクノロジーの関係をアピールした。

そして、3日目となる6月6日(現地時間)の基調講演の最後には、Amazon.com 共同創業者兼CEO兼社長兼会長のジェフ・ベゾス氏が登場した。登壇中、不審者が壇上に上がり込んでセキュリティに取り押さえられる、という一幕もあったが、終始にこやかに、「ビジネスを進める上での考え方」「10年先の予測」、そして「月を目指す理由」について語った。

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ベゾス氏の登壇中、突如女性が壇上に。家畜の保護を訴える目的だったようだが、すぐにセキュリティに取り押さえられた。

ベゾス「誰の中にも“ドリーマー”と“ビルダー”がいる」

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re:MARSに登壇する米アマゾン共同創業者のジェフ・ベゾス氏。

Re:MARSでは、様々な場で「ビルダーとドリーマー」という言葉が語られた。現実にモノを作る人と、世の中を変える方法を夢想する人のコンビネーションが重要だからだ。その関係性について、ベゾス氏は「実はシンプルなこと」と話す。

ベゾス「みなさんもご存じの通り、まずはドリーマーが先導します。(音声AIの)Alexaはスタートレックのコンピューターに触発された技術ですが、SFなどから影響を受けることはたくさんあります。ビルダーはビルダーに触発され、ドリーマーがもっと夢を見ることができる基盤を作ります。

こんな風に言うと、全然別の人物の話をしているように思えるかもしれません。でも、実際には、同じ体のなかに、両方が存在することが多い。誰もがドリーマーであり、誰もがビルダーなのです。ただし、双方の割合は人によって違うでしょうが」

ベゾス氏は、Eコマースとその基盤となるクラウドプラットフォームのビジネスが大きなものになると見抜き、投資し、実現することで成功を収めた。

では、10年後はどうなるのか? 予測を問われたベゾス氏は、「未来を予測する水晶玉は作れない」と笑いつつ、次のように語った。

ベゾス「おそらく今後10年で“文章の意味を理解する”ことが可能になり、商業的に利用可能になるでしょう。

30年から40年前に遡ってみましょう。その頃の研究者に聞いたら、現在のようなマシンビジョンや音声認識は“実現するのが難しい”と答えるはずです。むしろ“意味の理解”の方が、ずっと簡単に、最初に実現されると予測されていたんです。

しかし、それは間違っていた。現在は、それがきわめて難しい課題だと判明しています。

私の専門領域以外では、バイオテクノロジーの分野で、驚くべき発展が見込まれると思います。機械学習とAIの進化の恩恵を受けて、劇的な発見が続くと思います」

なにが変わるかでなく「なにが変わらないか」を予測せよ

「10年先を予測する」ような質問は、ベゾス氏にとっては日常茶飯事だ。そもそも、そうした予測をベゾス氏は重視していない。見るべきところは違う、と考えているからだ。

ベゾス「私は『今後10年でなにが変わるのか』を頻繁にたずねられます。

なにが変わるかよりも、むしろもっと重要なのは“なにが変わらないか”の方です。そのことを真剣に考えることをおすすめします。なぜなら、どこにあなたのエネルギーを注ぎ込むべきかを自分で判断できるからです。

Eコマースビジネスについてなら、わかります。10年後にも、消費者は安いものを求めるでしょうし、素早い配送も求めるでしょう。品数の豊富さを求めることも変わらないはずです。これらのニーズは非常に安定的なものです。

私はアマゾンが大好きですから、正直に言って、もっと高く売りたいしゆっくりと配送したいと思います。でも、きっとそうはいかない(笑)」

ベゾス氏は続ける。

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ベゾス時間経過に対して安定している、大きなアイデアを見つけることが重要なんです。それらは結局、“顧客のニーズ”そのものです。それ以外の要素は非常に激しく変動します。

競合他社が誰であるか、その活動がどのようなものであるかなど、動的に変化するものに基づいて戦略を立てているのであれば、常に戦略を変更する必要があります。しかし、顧客のニーズは時間が経過しても安定しています。

例えば、(顧客のニーズである)低価格を提供するため、低コスト構造を実現するには何ができるのか? それを自分のビジネスの中で考え続けることが重要です。

とはいえ“なにが変わって、なにが変わらないのか”を深く研究する必要はありません。重要なのは、“あなたにとっての答え”をすぐに示すことができること、そして、それにあわせて組織を整えることです」

未来のために月への「インフラ」を作る

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re:MARS会場に展示された、ブルー・オリジンの宇宙船。

ベゾス氏は、「最近アマゾンで行ったリスクの大きな決断はなにか」と問われて、「低軌道衛星への投資」だと答えている。

プロジェク・カイパー」と名付けられたこの計画は、3000個を超える衛星を打ち上げ、地球のあらゆるところでブロードバンド・ネットワークを利用可能にすることが目的だ。かなり長期的なビジョンに基づく計画だが、「こうした全世界に奉仕するビジネスは、結局アマゾンのためにもなる」という。

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米アマゾンが公開しているProject Kuiperの求人情報。6月8日時点で77のポジションを募集している。

出典:Amazon

ベゾス氏は、宇宙ビジネスに多くの時間を割いている。彼が率いるもうひとつの企業である「ブルー・オリジン」は、5月に「ブルームーン」と名付けられた月着陸船を公開している。彼は長期的計画に基づき、本気で月へ行くことをビジネスにしようとしているのだ。なぜ月を目指すのだろうか?

ベゾス「“ブルームーン”プログラムでは、月着陸船を作り、月に戻るために働いています。

月は資源豊富な隣人であることが分かっています。

いまや、月の影のあるクレーターの中には氷の形の水があることを知っています。水はロケットの推進剤に必要な、非常に貴重な資源です。それに、重力も非常に小さい。地球の6分の1ですから、地球から打ち上げるのに比べ、24分の1のエネルギーで済みます。

宇宙で大きなことをするためには、宇宙にある資源を使う必要があります。だから、月は素晴らしいんです。

私達が宇宙に行く理由は、地球を救うためだと考えています。

私達は、この文明を持続せねばなりません。重工業を地球外に移す必要があります。電力へのアクセスは宇宙ではもっと簡単になり、地球は住居と軽工業に分けられます。それが私たちの未来です。成長し続けるなら、我々はこの惑星を守る必要があります。

そのために、まずやらなければいけないのは、“真に運用可能で、再利用可能なロケットを持つ”ことです。現在のロケットは高すぎる。旅客機のように、最初から合理的なデザインでなければいけないんです」

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BlueMoonプロジェクトの公式ページ。

出典:BLUE ORIGIN

ベゾス氏は、ブルー・オリジンでのビジネスを「インフラ作り」に例える。それは、アマゾン創業時とはまた違うチャレンジだ。

ベゾス「 思えば、アマゾンを1994年に創業するのは簡単でした。小額の資本で良かったんです。アメリカの郵便網と輸送システムがあったので、自ら輸送ネットワークを構築する必要はありませんでした。支払いシステムとしては、すでにクレジットカードがあり、長距離電話網も、その先にあるインターネットもありました。アマゾンのような企業を作るための基盤は、すでに社会にあったんです。

しかし、宇宙ビジネスの会社を、今日すぐに立ち上げることはできません。あまりに必要な資本、すなわち入場料が高すぎるからです。

そしてその理由は、宇宙のためのインフラが存在しないことです。

だから、ブルー・オリジンでの私の使命は、米国郵政公社を作ることと同じです。

私がアマゾンをアメリカのインフラの上で創業したように、将来の世代が、我々の作った宇宙へのインフラの上に立つことができるようにしたいんです」

(文、写真・西田宗千佳)

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