ヤフー子会社化、PayPayへの出資…孫正義氏が狙うソフトバンクGのアリババ化

ソフトバンクは2019年5月8日、ヤフーを子会社化すると発表しました。同じタイミングでQRコード決済のPayPay(ペイペイ)にソフトバンクグループ(以下、SBG)が50%の出資を行うことも発表されました。

それぞれ大きな話題となりましたが、グループ全体の総帥でもあるSBG孫正義会長兼社長(以下、孫会長)の真の狙いは何かを読み解くには、大局的な視点、局地的な視点、双方の視点で広く深く分析することが重要です。

世界で最も注目される経営者に進化

孫正義 ソフトバンク

2019年3月期決算について説明するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。

撮影:小林優多郎

「10兆円ファンド」設立以降の孫会長の本質は、事業家であると同時に投資ファンドのジェネラルパートナーということが見逃せない点です。自らが主たるリスクを取り、自ら投資資金を投じるプリンシパルな投資家であるということです。

さらには孫会長が以前から標榜している「タイムマシン経営」(アメリカで成功したビジネスモデルを即日本で展開し、大きな利益を得る経営手法)の経営者ということも重要です。10兆円ファンドも含めて、私は孫会長のこれらの経営を「近未来への投資」であると捉えています。

最初に言っておきたいのは、孫会長は今や世界で5本の指に入るほど注目を集める経営者であるということです。「日本で最もグルーバルに注目される経営者」から、「世界で最も注目される経営者」に進化したということです。

ベゾスもザッカーバーグもかなわない

ジェフ・ベゾス アマゾン

アマゾンのジェフ・ベゾスCEO。写真は2018年9月13日、ワシントンでのイベント登壇時のもの。

REUTERS/Joshua Roberts

アメリカの雑誌『ファスト・カンパニー』は数カ月前、孫会長に関する巻頭特集を組み、そこで「シリコンバレーで最強の男」と評しました。その記事の全訳が『クーリエジャポン』2019年6月号に掲載されているので、引用します。

「いまこの地球で、テクノロジーの世界に起きる『次の波』にもっとも影響力を持っている人物は、孫正義以外にいないだろう。ジェフ・ベゾスも、マーク・ザッカーバーグも、イーロン・マスクも、孫にはかなわないのだ。資金力ではこの3人のほうが上かもしれない。だが、孫正義のように野心と想像力と胆力の三つを持ち合わせている人はほかにいない」

さらに指摘しておきたい点は、孫会長はこれまで大きな局面において有言実行してきたということ。もちろん全てではありませんが、根源的分岐点となるような大きな勝負どころでは「大ぼら吹き」であることを武器にするかのように有言実現してきています。

ソフトバンクはこれまで局面局面で「今度こそソフトバンクは倒産か」とさえ言われてきましたが、そのすべてをはねのけてきたのです。

25−4=9?という数式で言いたかったこと

ソフトバンクグループ 決算

ソフトバンクグループ 2019年3月期第3四半期決算説明会のプレゼンテーション資料より。

出典:ソフトバンクグループ

今回はまずこの数カ月間のSBGやヤフー、ソフトバンクの決算説明会の孫会長の重要な言葉を振り返ってみたいと思います。それだけでも、冒頭の2つの重大な取引の意義がおぼろげに見えてくるからです。

SBGが単独で上場して初となる2019年2月6日に開かれた2019年3月期第3四半期の決算説明会で目を引いたのは「25−4=9?」という数式です。

引き算の答えは「21」なので、「?」が付いているのですが、ここで孫会長が言いたかったのはこういうことです。

「25=投資先の企業価値の合計(上場、未上場問わず)」

「4=SBGが直接的に責任を持つべき有利子負債」

つまり、株主価値は本来「25−4=21」あるはずだが、現在の時価総額は「9」なので、価値が毀損している。つまり現在の株価は割安だと言いたかったのでしょう。

PayPayはSBGがリード

ヤフー 川邊健太郎

2019年4月25日、2018年度通期決算を発表するヤフーの川邊健太郎・最高経営責任者(CEO)。

撮影:川村力

そして、2019年4月25日の2018年度ヤフーの決算説明会。この時点で、ヤフーの川邊健太郎社長はおそらく、ヤフーが子会社化されるとは想定していない、もしくは正式には決まっていなかったのではないかと想像します。

川邊社長は、成長戦略としてオンライン上の生活をさらに便利にし、オフライン上の生活に新たに進出すると述べ、PayPayがその中核を担っていくことや、持ち株会社「Zホールディングス」の下にヤフーをぶら下げるという説明をしました。

いずれも完全にヤフー単独のことを述べていて、あれが演技だったとは考えにくい。ヤフーはヤフーでやっていくと思っていたと思われます。

2019年5月8日に行われたソフトバンクの2019年3月期決算説明会ではヤフーの子会社化が発表されましたが、この話題がこの日一番の目玉でした。

足元までは過去最高益更新という発表もありました。ただ今後は、各社の携帯料金の価格競争が始まるので、本業である通信事業が相当厳しい状況になることは明らかで、宮内謙社長も「(本業では)もう成長戦略はない」と淡々と説明していました。

WeWork(ウィーワーク)やPayPayといった期待できる活きのいい話題も出ましたが、そのPayPayへの出資についても発表がなされ、SBGが50%、ソフトバンクは25%、ヤフーは25%に過ぎず、実際はSBGがリードする事業であることが明らかにされたのです。

決済を入り口に広がるアリババモデル

ジャック・マー アリババ

イスラエルのテルアビブ大学で講演するアリババグループのジャック・マー会長。

REUTERS/Amir Cohen

それでは、なぜソフトバンクはヤフーを子会社にしたのでしょう。

最先端のフィンテック大国である中国では現在、アリババが手掛けている決済アプリ「Alipay(アリペイ)」と、テンセントが手掛けるWeChatのウォレット機能「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」が熾烈な争いを繰り広げています。

アリペイの年間アクティブユーザーは約8億7000万人(2018年3月期プレスリリース)、ウィーチャットペイの月間アクティブユーザーは約10億5700万人と言われています(2018年6月期四半期報告)。

アリババのビジネスモデルを見ると、アリペイは「入り口」で、そこからアリババのEC小売りサービスや金融サービス、各種の生活サービスなどに導かれる仕組みになっています。

このアリババの事業構造にこそ、孫会長の狙いを読み解く核心があります。これは決して、決済ビッグデータを取得するとか、ましてやデジタルでの広告収入を伸ばそうというような「小さな」話ではないのです。

アリババの筆頭株主として取締役会メンバーでもある孫会長はもちろん、このビジネスモデルを熟知していますし、アリババ・テンセントの熾烈な争いを見てきて、覚悟を決めて取り組まなければ覇権は取れないという厳しさを痛感していたことでしょう。

PayPayを中核的存在に位置付け

PayPay

PayPayが2019年2月に打ち出した「第2弾 100億円キャンペーン」の特設サイト。第1弾ほどではなかったものの、PayPayのイメージを定着させるには十分なキャンペーンだった。

出典:PayPay HPより編集部キャプチャ

「新生ソフトバンク帝国」の「入り口役」を担わせようと、それをさらに加速させようと企図したものがPayPayなのです。

PayPayはすでにユーザーの度肝を抜くような「100億円還元キャンペーン」を展開し、目論見通り、その認知度は競合他社のなかで抜群になりました。SBGが筆頭株主となったことで、これからさらに桁違いのことを仕掛けてくるのではないかと私は予測しています。

なぜならアリババが中国でまさにそうしてきたからです。PayPayを顧客接点の重要な入り口として、5年単位で、いや3年単位でEC小売り事業を先鋭化させ、金融サービスやライドシェア事業、通信・エネルギー事業等、さまざまなサービスに顧客を誘導していきたい。「AI群戦略」の日本での中核的存在としていきたい。これが本音でしょう。

アリババの強みは中核のEC

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激しい覇権争いを繰り広げるアリペイとウィーチャットペイ。

REUTERS/Mark Blinch

もう一つ、重要な点を指摘します。

ウィーチャットペイは現時点ではアリペイを凌駕しつつありますが、完全に追い越すのは難しいかもしれません。顧客接点ではアリペイを凌駕しているものの、収益化では見劣りしていると判断されるからです。

大きな相違点は、アリペイを手掛けているアリババはEC小売りを直接的に手がけていること。ウィーチャットペイを手掛けているテンセントは自社で直接的にはこれらの事業が展開できていない。アリババが個人の信用をスコア化する「ジーマクレジット(芝麻信用)」を大きく成長させている一方で、テンセントが同サービスをなかなか本格的に展開できていないのは、実はこの相違点が最大の要因であると私は分析しています。

それがわかっているからこそ、孫会長は日本でもヤフーの同事業をテコ入れしたいと考えてきたはずです。

ヤフーのEC事業へのテコ入れか

ヤフー

ヤフーはEC小売りを伸ばそうとしてきたが、その目標を十分に達成できていない。

撮影:伊藤有

EC小売りは「商人の世界」で、泥くさい営業や単純な作業を愚直に積み重ねないとなかなかうまくいきません。

グーグルは何度もEC小売りをやろうとして失敗しています。日本でのEC小売りを握っているのはアマゾンや楽天で、ヤフーはなかなかそこができていない状況です。

ヤフーはメディアの売り上げ比率を下げて、EC小売りを伸ばすと宣言してきましたが、いまだできていない。孫会長は業を煮やして、叩き上げの宮内さんに陣頭指揮を取らせようとした。私は、これがヤフーをソフトバンクの子会社にした大きな理由の一つだと考えています。

ソフトバンクにいた営業職をヤフーに移してPayPayの営業を担当させましたが、今後は、彼らをEC小売り部隊に転換して取引店を開拓していくのかもしれません。

孫会長の目指しているアリババのようなビジネスモデルは、EC小売りが中核で機能していないと成功しないのです。

もう一つ強調したいのは、日本のほかの決済会社はアリペイがなぜここまで急成長したのか、そして孫会長が何を目指しているのかということまで、本当にきちんと分析できているのだろうかいうことです。

競合他社の多くは、「ビッグデータの取得」「位置情報の取得」などから広告収入を上げるとか、信用サービスを展開するとしていますが、テンセントのすごさと同時に制約要因も理解する必要がある。EC小売りにおけるビッグデータの有用性を真に理解する必要があるのです。これが大局的、戦略的な見方です。

ビジョンファンド2号のための資金作り

ソフトバンク ビジョンファンド

ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の出資先は82社(2019年5月9日時点)。

出典:ソフトバンクグループ2019年3月期決算説明会プレゼンテーション資料

次に短期的、局地的、戦術的な視点で、ヤフーの子会社化を見ていきましょう。

ヤフーとソフトバンクのシナジー追求が目的なら両社の合併でもよかったのではという見方もありますが、それではお金がSBGに入ってこない。「10兆円ファンド」第2弾のための「ジェネラルパートナー」としての投資資金を作る。これが大きな目的でしょう。

すでに指摘されているように節税というメリットも見逃せません。SBGがヤフーの株を売却すると、配当を受け取ったとみなされ課税対象になりますが、今回のやり方だと、ヤフー株の3分の1以上を持つSBGは非課税で済むのです。孫会長が戦術的な目的で同取り引きを仕組んだであろうことも重要です。

AIビジネスの事業化に初めて言及

ソフトバンク 孫正義

2019年5月9日のSBG決算発表会。孫会長はAIの意義について発言した。

撮影:小林優多郎

さらに私が孫会長の考え方がよく表れていると思ったのが、5月9日に開かれたSBGの決算説明会での発言。画期的だったのは、孫会長がAIの意義とマネタイズの仕組みを初めて具体的に解説したことです。

「AI=推論」だとして、AIが需要を予測し、供給を最適化する、つまり需要と供給をマッチングして、マネタマイズするものだと明確に定義しました。

これまで日本のほとんどの経営者はビッグデータの活用法を抽象的にしか説明できず、せいぜいマーケティングデータとしての活用程度にしか表現できておらず、どのように収益化するのかを具体的に説明できていませんでした。孫会長は、AIが実際のビジネスで事業化、キャッシュ化できるということをここで言語化したのです。

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2019年5月10日、ウーバーは新規株式公開(IPO)を実施し、米ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。

REUTERS/Brendan McDermid

実際にUber(ウーバー)と、中国で2016年に創業したオンラインの中古車販売会社「Guazi」の事例を挙げて、「AI=推論→収益化」について話しました。

アメリカで従来のタクシーを呼んでから到着まで15分程度かかっていたものが、ウーバーだと3分ほどで来ます。ビッグデータをAIで最適化すれば、何分後に人がどこに集積するかを推論できる。だからウーバーは、人の集まりそうな場所にあらかじめ車を用意しておいて、オーダーが来たらすぐに配車でき、マネタイズに成功している。

GuaziではAIの活用で車を自動査定し、客をオンライン・オフラインで行動分析し、さらに、その車がいくらで、いつまでに売れるかを予測します。非常に効率がいい。売り手からも買い手からも仲介料を取らないため、2018年度の取引台数は70万台、売り上げは倍速で伸びています。

AIのおかげで、収益率も成長率も急激に伸びたいい例です。

AIは本質的な構造転換をもたらす

人工知能

孫会長は、AIの発達はあらゆる業界を革新できると話した。

Shutterstock.com

孫会長がAIについて、「AI=推論」という文脈でここまで具体的なビジネスと結びつけて説明したのは今回が初めてだと思います。数多くの投資先から「AI=推論」で収益化が実現されることを感じさせるものでした。非常に明快で腹落ちする説明でした。

さらに、このような数字も示されたのです。

インターネットの台頭はたしかに革新的なものでしたが、実は大きな影響を業界として受けたのは広告と小売りだけでした。しかし、アメリカのGDPに占める割合は広告が1%、小売りは6%に過ぎません。ほかの業界ではキャッシュ化する術がなかなか見つからなかったのです。

ですが、AIの発達はあらゆる業界を革新できると言っています。つまり、AIは単なるデジタルトランスフォーメーションではなく、本質的な構造転換を起こせると言ったのです。

時価総額世界トップへの野心

ソフトバンク 孫正義

「NO2は嫌い。やる以上は必ずNO1にならないと気が済まない」という孫会長。写真は2018年11月のもの。

REUTERS/Kim Kyung-Hoon

孫会長は、この決算発表会において、「SBGがグローバルでの時価総額でトップ10に入っていないのは恥ずかしい」「NO2は嫌い。やる以上は必ずNO1にならないと気が済まない」と強調しました。

AIを活かしたインターネットトラフィックが新たなゲームのルールになるなかで、時価総額で世界トップになるという決意表明をしたというのが、私の見立てです。

最後にソフトバンクグループのリスクを考えてみたいと思います。

一つ目は組成ファンドへの資金の出し手としてサウジアラビアへの依存度が高いこと、二つ目はソフトバンクグループが主張する有利子負債の捉え方とその規模。三つ目が地政学リスクです。

ソフトバンクビジョンファンドはとんでもないリターンが上がっている実績を孫会長は提示しました。

投資期間内の1年当たりの利回り(2019年3月)が手数料を差し引いても45%、さらに株主の利益は62%もあるという驚異的な数字です。

ただし、今回はサウジアラビアの件(ジャーナリストのジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ総領事館内で殺害され、関与を疑われるサウジ政府との関係が深いビジョンファンドの評判に傷がついたことを指す)で痛い目にあったので、依存から完全に脱却できないにしても、今後は薄めていこうという方向のようです。そのために今回具体的な収益率まで公表したわけです。

有利子負債は4兆円「もある」か「しかない」か

ソフトバンク 決算

孫会長は「23」が、正当な時価総額であるべきだと言いたかったのではないか。

出典:ソフトバンクグループ2019年3月期決算説明会プレゼンテーション資料

二つ目の有利子負債に関してですが、孫会長はSBGが実際に直接負担する有利子負債は4兆円だと主張しています。

直近の決算説明会(2019年5月9日)では「23(株主価値)=27(保有株式)-4(純負債)」という数式を示しました。孫会長は「23」が、正当な時価総額であるべきだと言いたかったのでしょう。時価評価 27兆円から有利子負債の4兆円を引いた23兆円がSBGの企業価値。つまり、企業価値が23兆円もあるんだから、有利子負債が4兆円「もある」と見るのではなく、「しかない」と見てほしいということです。

ですが、金融の世界に長年従事している私からすると、この捉え方には無理があると思います。孫会長は、「ノンリコースローン」のような親会社には訴求されない契約条件の負債はSBGの負債からは控除されるべきという計算をしています。

もっとも、何らかの市況が崩れたときに、銀行は契約上では直接の返済義務がなくても「ローンを返済しろ」と言うケースを、私自身がさまざまなバブル崩壊の局面で目の当たりにしてきました。「返さない」と言うと、「それならコーポレートローンを返せ」と言われる。結局は契約条件よりも取引関係がバブル崩壊時にはより重要になってしまうのです。

そんなこともあって、国内の格付会社はSBGを「投資適格」としていますが、世界的な格付機関である「S&P」や「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」は「投資不適格」と判断しているのでしょう。

深刻な被害をもたらす米中貿易摩擦

トランプ大統領 習近平国家主席

米中貿易戦争の政治的リスクの影響は大きい。

REUTERS/Kevin Lamarque

三つ目は米中のリスクに直接的に対峙しないといけない存在になっているということです。この被害をもろにかぶっています。

例えば投資先の1社であるアリババでは、日本人向けのビジネスに力を入れようとは夢にも思っていないようです。日本に来ている中国人をさらにケアするだけで莫大なマネタイズを生むことができます。

2年前にはこのようなことは明言していなかったので、おそらく米中の政治的リスクを鑑みて、日本人向け事業は、今は手を広げても仕方ないと思っているのでしょう。矛先が自分に向かって来て、ファーウェイのようになるのは困ると考えているはずです。

もちろんファーウェイの中国リスクが顕在化したことで大きな影響を受けている日本企業の1社としてもソフトバンクが挙げられるでしょう。

NO1企業になりたい大義とは

最後に、孫会長に期待されることについても指摘しておきたいと思います。

2019年2月に開かれたSBGの決算説明会で、「純有利子負債は4兆円」としたうえで、厳密には純有利子負債額は3.6兆円だが、「4000、5000億円は誤差だ」と言っています。同じように、日本でライドシェアが認められていないのも「誤差である」と発言しています。

グローバルでライドシェア事業の覇権を握っているなかで、参入障壁も高くマーケットも縮小している日本で同事業ができないことは「誤差」に過ぎないということを意味しています。

SBGは日本に本社がありますが、その投資メリットは必ずしも日本の社会的問題を解決するためには使われていないように感じられます。孫会長が何を目指してSBGを時価総額でもNO1企業にしたいと思っているのか。

このところ孫会長からは、日本をどうしたいのか、といった強い想いが感じられません。ともすると、「孫正義帝国を巨大化させたいだけではないか」という見方も必要になってくるようにも感じられます。

ソフトバンクが世界的にもこれだけの影響力を持つようになった以上、もう一度、ソフトバンクの社会的な使命というものをもっと顕在化させ、「日本は誤差」ではなく、日本の社会的問題をどのように解決していくのかにについても熱く語ってほしいと期待しています。

その方向性のなかにこそ、ソフトバンクの時価総額も「コングロマリット・プレミアム」の状況となる、つまりは、投資先企業の時価総額の総和をソフトバンクの時価総額が大きく上回るという状況が生まれてくるのではないかと思うのです。

(編集協力:宮本由貴子)

田中道昭:立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)などを歴任し、現職。上場企業取締役や経営コンサルタントも務めている。主な著書に『アマゾンが描く2022 年の世界』『2022年の次世代自動車産業』など。2019年4月、『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』の2冊を刊行。

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