「民主の女神」現役大学生が訴える“香港103万人デモ”のリアル「日本も無関係じゃない」

香港の「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴える周庭(アグネス・チョウ)さん。

香港の「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴える周庭(アグネス・チョウ)さん。

まさに旬のタイミングでの来日となった。

2014年に民主的な選挙を求めた「香港雨傘運動」を主導した団体の主要メンバーの一人だった周庭(アグネス・チョウ)さんが6月10日、来日し、東京の日本記者クラブで会見した。

折しも香港では、審議中の容疑者を中国本土に移送できる「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴えた大規模なデモが爆発的に広がっていた。前日9日には、参加者は主催者発表では103万人にも膨らんだ(警察発表は24万人)。

周さんもまた、会見では条例改正案の撤回を訴えた。

2019年6月9日に香港であった大規模デモ

2019年6月9日に香港であった大規模デモ。主催発表では103万人が参加。

REUTERS/Tyrone Siu

周さんは、今回のデモに参加した後すぐに来日。まだ22歳の現役大学生だが、2014年に発生した香港の民主化運動「雨傘運動」に主要メンバーの一人として関わり、当時「民主の女神」として注目された。現在は政治団体「デモシスト(香港衆志)」に所属して活動している。

「中国化」が進む香港への危惧

香港の「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴える周庭(アグネス・チョウ)さん。

香港の「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴える周庭(アグネス・チョウ)さん。

日本記者クラブで会見を開いた周さんは、独学で学んだ流暢な日本語で「逃亡犯条例」改正案を香港の人々がなぜ危惧しているのか説明し、現在の香港が置かれてる状況がいかに危機的か訴えた。

「(現在審議されている)『逃亡犯条例』改正案は最も危険な法案だと思います。(法律が改正されたら)犯罪人を中国に引き渡されることになる。中国の司法制度は香港とは異なり、中国では恣意的な拘束、逮捕、拷問がある」

「昔から中国は政治犯を作り上げることが上手です。過去にはたくさんの弁護士、記者、活動家が、経済的罪、腐敗、交通などの罪で逮捕されている。本当はこのような罪を犯してないのに逮捕されて酷い目にあうことがある。

また、拘束中に一生障害が残る怪我を負わされたり、不可解な形で死んでしまった人もいました。今後、香港人や香港訪問者にも捕まる可能性がある。数年前、香港で銅鑼湾書店事件という、中国政権に反対する本を売る香港人(など)の5人が逮捕される事件があった」(周さん)

基本的には現在の香港は一国二制度のもと、中国とは異なる政治や法が認められている。

しかし年々、中国政府からの締め付けが厳しくなり、香港の「中国化」が進んでいると感じる香港人が多いという。こういったことも100万人超の大規模デモになった要因かもしれない。

2019年6月9日に香港であった大規模デモ

2019年6月9日に香港であった大規模デモ。キャリー・ラム行政長官を非難するプラカードや中国に抗議するプラカードを持つ参加者たち。

2019. REUTERS/Thomas Peter

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香港の大規模デモの直後とあって、日本の多くのメディアが関心を持った。

また、周さんは今回のデモの特徴として、初めて参加する人の割合が多いと感じるという。デモで怒りを訴えることが今後できなくなること、つまり最後のデモの可能性があると感じているからだという。

「改正案が可決されたら、これから香港でデモができなくなる場所になるかもしれないという気持ちを持っている香港人がたくさんいます。今回の改正案を反対するデモ、運動に参加している香港人は、これが最後という考えを持っている香港人も。

可決されたら、香港でデモするだけで中国に引き渡されるかもしれませんという考え方が多いし、これが事実になるかもしれません」

周さんはこれは香港だけの問題ではない、日本人にも影響があると訴える。

香港の「逃亡犯条例」改正案の撤回を訴える周庭(アグネス・チョウ)さん。

会見の最後に、周庭(アグネス・チョウ)さんは、日本語の手書きで「香港も日本も本当の民主主義がありますように」と記した。

「逃亡犯条例の改正案は日本と無関係ではありません。香港には在留日本人、企業、観光客、ビジネスマンなどたくさんいます。改正案が可決されたら、香港に住んでいる、また、香港に来る日本人の人権も影響を受けます」

つまり、香港人だけでなく、香港を訪れている外国人旅行者でも、中国政府に目をつけられたら香港から中国に移送される可能性がある、とする。

「香港人は今自分の家を守るために一生懸命抵抗しています。私たち自身のためだけではなく、これから(香港に)来る外国人たちのためでもあります。圧倒的な反対の声の前に、香港政府は改正案を撤回すべきです」(周さん)

実際、香港在住の日本人で、タレントとして活動するRieさんはデモに参加し、Twitter上でデモの様子を投稿している。

台湾の人たちも「人ごと」とは思っていない

また、台湾でも前回の雨傘運動の時と同じく、大きな関心を持たれている。

いま、台湾のメディアやSNS上での反応には「今日香港、明日台湾」というキーワードがところどころ登場する。これは、「今香港で起こっていることが、いずれ台湾でも起こるかもしれない」という危機感を表したものだ。

香港がこのまま「中国化」していき、その次には中国政府が台湾の「中国化」の圧力を高めてくるかもしれないということだ。

こういったことから、台湾の人気タレントがSNS上で香港のデモを応援している。

例えば、鶏のからあげ屋の美人売り子として有名になり、その後タレント、日本でも活動するイリーさんだ。からあげ娘を意味する「鶏排妹(ちーぱいめい)」の愛称で人気のイリーさんは、InstagramやFacebook上で香港を応援する投稿していた。

香港の「逃亡犯条例」改正案は6月12日から始まる議会で審議を進めるとされ、一方、デモは今後も継続的に行われるという。

(文、写真・吉田博史)

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