「魔性の女」というイメージ打ち消した山ちゃんの筋力ある言葉

山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見様子1

お笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太さんと女優の蒼井優さんが開いた結婚会見。山里さんの相方である「南海キャンディーズ」の山崎静代さんも参加した。

6月6日、山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見の翌日、きゃりーぱみゅぱみゅさんがTwitterでこうつぶやいていた。

「ここ何回見ても泣いちゃう」(/ _ ; )」

自宅のテレビを撮ったらしい動画には、その日の「バイキング」(フジテレビ系)が映っていた。鼻をすする音も入っていたから、ぱみゅぱみゅさん、泣きながら録ったのだろう。

「魔性」心配は一切ございません

山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見様子2

「みなさんの目の前にいる蒼井さんと違う蒼井さんを僕は見せていただいているんで」(山里さん)

どこで泣いたのか、「ここ」とはどこか、というと「魔性」の場面だった。

山里さんが「みなさんの思う『魔性』から発生する心配は、一切ございません」と言い切り、横で蒼井さんが涙を見せている。その場面だった。

質問者は「蒼井優さんは芸能界一のモテ女優で、芸能界の男性でもファンが多い。ファンの人たちへのメッセージはありますか?」と聞き、「魔性」という言葉は使っていない。

だが、質問の意図を山里さんは汲み取ったのだろう。

蒼井さんを好きになった人々はたくさんいたと思うが、その人たちより自分の「好き」が強かったと説明した。そして「世の中の狙ってた方々には申し訳ない」と言って、「ちょっと1回鏡見てきましょうか」と笑いをとった。

「自虐」で笑いをとるのは、山里さんの得意技。4月からMCが3本増え、全部でレギュラー番組16本という売れてる芸人・山ちゃんの力量をさらりと見せたに過ぎない。

ところが、ここから山里さんは雰囲気を一転させ、真剣な表情でこう語った。

「そうですね、みなさん心配されますよね。さっきから出ている単語、あるじゃないですか。そういうの、一切心配してないです。

みなさんの目の前にいる蒼井さんと違う蒼井さんを僕は見せていただいているんで。ほんとに純粋で、楽しい時には笑って、おいしいものを食べた時はコロコロ笑って、泣きたい時はすごく泣く。みんなが思い描くのって、ちょっと違うでしょ。

魔性って言葉使ってるけど、僕はそんな人間じゃないっていうのを一緒にいて、ずっと見てたんで」

だから「魔性」から発生する心配は一切ない、そこまで一挙に言い切った。

「言葉の筋トレをしている」

山里亮太さん

聞く人を引きつける山里さんの「言葉」へのこだわり。

山里亮太という人は、言葉にこだわる芸人だ。週刊誌「AERA(アエラ)」5月13日号で、山里さんの人物ルポを6ページにわたって書いたばかりの者として、そのことは強く感じていた。そして結婚会見で山里さんの発言に触れ、言葉にこだわるとは思いを作ることなんだ、そう実感した。

山里さんは「蒼井優の過去の恋愛について述べよ」という質問者の意図を理解した。だからまず、得意技を繰り出して笑いをとり、会場と蒼井さん本人を和ませた。そして自分から「魔性」という言葉を使い、一番自分が言うべきことを言ったのだ。「そんなの全然、関係ないよ」と。

カッコいいぞ、山ちゃん。誰もがそう思ったはずだ。根本にあるのは、山里さんの蒼井さんを愛する気持ちの強さだ。だが、見る者、聞く者を引きつけるスピード感、熱量は、山里さんの言葉へのこだわりの賜物だと感じだ。

AERAでの取材で山里さんは、「言葉」についての思いをさまざまに語っていた。例えば

「言葉にして明確にしていくと、自分の中で理解できるようになる」

と言い、

「言葉の筋トレをしている」

と言った。

「魔性」否定したいからこそ?

蒼井優さん

「恋多き女性」という蒼井評は山里さんの一言で否定された。

前者は、言葉を追求すると自分の考えをはっきりと自覚できる。そういうことの表現だろう。後者は、どのように言葉を増やしているかと質問した時の答えだった。

「何かをする時、いつも言葉を残すというルールを持っている」

と語り、具体的な方法をこう説明してくれた。

テレビを見て気に入った言葉があったら、その言葉を分析する。こんな副詞の使い方をするのかとか、体言止めだから面白いんだとか、こことここが逆説だから好きなんだとか。西加奈子さんの本を読むと、なんて面白い表現をするんだろうと思う。

そうしたら分析して、ルールを頭に入れておく。頭の中にそういう引き出しがたくさんあれば、あとは引き出しを開けるスピードを「筋トレ」で上げていくのだ、と。

そんな筋トレを重ねた人だから、ぱみゅぱみゅさんも泣けるような言葉になったと思う。

同時に山里さんの愛ゆえに、会見が必然だったのでは。そんなことも考えた。もしかしたら、蒼井さんの「魔性」を否定したいからこそ、会見を開いたのではないか。そんなふうに深読みをしたのだ。

「私を好きになってくれる男気です」

山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見様子3

2人の橋渡し役をしたのは相方しずちゃんだった。

芸能界において、結婚会見はとっくに過去のものになっている。それでも会見をしたことについて山里さんは、

「いつもお世話になっているマスコミのみなさんにお知らせして、これからの2人を応援していただきたい」

と説明していた。

だけど「言葉」にこだわり、「言葉」の力を知っている人だからこそ、「魔性」という言葉を消す必要を感じた。それも、公の席で。そう思ったのは、会見での蒼井さんの言葉や表情を見たからでもある。

蒼井さんは、山里さんを選んだ理由を何度も聞かれていた。その中で、「恋多き女優が選んだ人が山里さん。決め手はなんですか」という質問に、

「私を好きになってくれる男気です」

と答えていた。その答えを聞いて、ひょっとしたら蒼井さんは過去を「負い目」のように感じているのかしら、と思った。

「心の底からうれしかったです」

山里亮太さんと蒼井優さんの結婚会見様子4

会見では涙を見せることが何度かあった蒼井さん。こらえるように下唇を噛んでいた。

山里さんが即、

「そんな覚悟が必要な人だっけ?」

とフォローし、「愛」と筋トレゆえの反応だと思ったのだが、「両家への挨拶は済んだか」と尋ねられた時の答えも、私には少し意外だった。

「私の自宅で会っていただいたんですけど、泣いてくれてました。たくさん心配かけて生きてきたので、心の底からうれしかったです」

日本を代表する女優の1人で、舞台に映画に、その実力を示してきた人なのだ。恋が多かろうが少なかろうが、そんなのはその人の人生であり、人に何を言われようと関係ない。そう私は思うけれど、蒼井さんはきっとそれよりずっと繊細なのだろうし、1人の娘としての感情は別なのだなあ。

そんなことも含めて、「みなさんの目の前にいる蒼井さんと違う蒼井さんを」山里さんは見た。だからそのことをきちんとマスコミの前で言葉にしよう、そう思った。

と考えを進めると、私もなんだか泣けてきた。

会見が終わり、撮影の時間が設けられた。それも終わり、司会者が「最後に改めてお二人からご挨拶を」と言ってから、蒼井さんが雄弁になった。山里さんを選んだ決め手を聞かれた時、一番大事なことを言うのを忘れていたと言い、意を決したかのように語ったのはこんな趣旨だった。

山里さんの仕事に対する姿勢を尊敬している、自分も仕事をトコトンやってしまうのだが、それで間違っていないと勇気がわく、これからは自分の仕事を精一杯やりながら、できる限り亮太さんを支えたい。

この時だけ「亮太さん」と言って、深々と頭を下げた。

舞台の最後に観客の前でするような、深い、優雅なお辞儀だった。

(文・矢部万紀子、撮影・今村拓馬)


矢部万紀子(やべ・まきこ):1961年生まれ。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、「AERA」や経済部、「週刊朝日」などに所属。「週刊朝日」で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長を務めた後、2011年退社。シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に退社し、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』。最新刊に『美智子さまという奇跡』。

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