フェデックスがアマゾンからの数百万ドルをはねつけた。
AP/Mark Lennihan
- フェデックスは6月7日(現地時間)、貨物航空のエクスプレスを使っていた配送について、アマゾンとの契約を更新しないとの決定を発表した。
- この決定により、フェデックスは数百万ドルの減益となりそうだ。だがアナリストは、この決定は長期的にみれば同社にとって良い結果につながると指摘する。
- フェデックスの長期戦略は、より採算の取れる荷物を運ぶこと。アマゾンの急成長に付き合う必要はない。
フェデックス(FedEx)はアマゾンから受け取ることができた数百万ドルのお金を拒否したのかもしれない。だが、心配は無用だ。
ムーディーズ(Moody's)のシニアバイスプレジデントで、フェデックス担当の主任アナリスト、ジョナサン・ルート(Jonathan Root)氏は次のように投資家宛て文書に記した。
「フェデックスは、そのキャパシティーをアマゾン以外の顧客に再展開することにより、エクスプレスネットワークへの投資からより高いマージン、より大きなリターンを得るだろう。アマゾンの穴を他の顧客で埋めるには時間がかかるだろうが、それでも我々は、このニュースは長期的な観点からはポジティブなことと判断している」
ルート氏は、アマゾンとの契約を更新しないと決定した後も、フェデックスはその損失から容易に回復できると考えている。
「フェデックスの700億ドル(約7兆7000億円)近い連結売上高のうち、アマゾンは1.3%未満、マージンでみれば利益率が最も低い顧客の1つであり、この決定はフェデックスが提示した金銭的条件にアマゾンが合意しなかったことを示唆していると我々は考えている」とルート氏は6月10日(現地時間)、投資家宛て文書に記した。
「我々の推定によると、荷物1つあたりの平均売上高はアマゾンの場合は約15ドル(約1650円)、これに対して公表されている平均売上高は18.5ドル(約1820円)」
トータルでみると、フェデックスのアマゾンとの取り引きは約8億5000万ドル(約935億円)相当とルート氏は見ている。エクスプレス(貨物航空)以外の契約はそのまま継続している。
フェデックスがアマゾンとのエクスプレスの契約を更新しないと決めたことは、将来受け取ることができた数百万ドルの売り上げを拒否したようなもの。だが、アマゾン以外のeコマースの大きな市場に集中することでカバーすることができると確信しているものと思われる。
この決定の影響を受けるアマゾンの荷物 —— ムーディーズの試算では、フェデックス・エクスプレスがアメリカ国内で1日に扱う合計290万個の荷物のうち、20万個以下 —— は、より高い単価を支払うeコマース事業者の荷物に置き換えられ、その結果、同じ量を運んだとしても増収となるとルート氏は主張している。
アマゾンとの契約についてのステートメントの中で、フェデックスはアマゾン以外のeコマース顧客へのサービス提供を検討中であることを明らかにした。
フェデックスはすでに、アメリカ郵政公社に委託するのではなく、自社で直接ラストワンマイルの地上配送を行うことなどを含め、ビジネスの拡大を始めている。また、新たに週7日の配送を2020年に開始すると発表した。
「アマゾンは急成長するeコマースにおいて大きなシェアを占めているが、そもそもアメリカ国内のフェデックスの荷物の大部分はエクスプレス・ネットワークを使っている」とルート氏。
「つまり、地上配送を担うフェデックス・グラウンド(FedEx Ground)が日曜日の配送を開始することは、競争力のあるサービスを維持し、オペレーション効率を高めるために配送センターの日々の業務を平準化したいという要求から生まれたもの。アマゾンの荷物の増加に対応するためではない」
アマゾンは7日、フェデックスの発表後、声明を発表した。
「我々はフェデックスの決定を尊重する。そして、長年にわたってアマゾンの顧客にサービスを提供してくれたことに感謝する」
[原文:FedEx says it will no longer deliver Amazon packages with its fast shipping service]
(翻訳:Ito Yasuko、編集:増田隆幸)