87.5億円調達の「LOVOT」 ── 教育分野で“プログラミング要素なし”を決断する理由

LOVOT

Pepper開発メンバーの1人である林要氏が率いるGROOVE Xが開発している家族型ロボット「LOVOT」。

ロボットベンチャーのGROOVE Xは6月12日、同社の家族型ロボット「LOVOT(ラボット)」の教育分野向けの展開を発表した。

デジタルハリウッド大学大学院教授の佐藤昌宏氏らをアドバイザーとして迎え、ベネッセスタイルケア、ファミリア、LITALICO(リタリコ)、髙島屋、メルセデス・ベンツ日本といった5社のパートナー企業と協力してLOVOTの子どもに対する影響などの研究を進めていく。

また、GROOVE Xは同時に30億円の資金調達の実施を発表。今回の出資者はINCJ、未来創世ファンド、中部電力の3社。GROOVE Xの累計調達額は87.5億円となった。同社代表の林要氏は、調達資金は主に「量産に向けた立ち上げに使う」としており、「今後も(調達額は)増えていく」と話している。

子どもの情操教育などにLOVOTを活用

LOVOT EdTechプロジェクト

写真左からLOVOT EdTech プロジェクトの発表会に登壇した、ファミリア社長の岡崎忠彦氏、GROOVE X代表の林要氏、デジタルハリウッド大学大学院教授の佐藤昌宏氏、LITALICOチーフリサーチャーの榎本大貴氏。

GROOVE Xは今回の発表した研究内容を「LOVOT EdTech プロジェクト」と称している。EdTechとはEducation Techの略称であり、同社は子どもの情操教育でのロボットの有用性や、家族の中でのロボットのあり方などに関する実証実験を行っていく。

ベネッセの例

ベネッセスタイルケアの保育園では、2019年1月からLOVOTが導入されている。

例えば、パートナー企業の1社で高齢者介護サービス事業や保育事業を手がけるベネッセスタイルケアは、2019年1月から実際の保育園にLOVOTを導入。同社が発表した該当施設の園長先生のコメントによると、園児たちの間で、LOVOTは「生き物に準ずる『仲間』として認知されている」とのこと。

LITALICOの例

LITALICOが検討している研究内容。

今後、園児たちがLOVOTとの生活の中で何を学び取れるか、メンタルケアなどにも活用できないかなど、可能性を追求していくとしている。

その他にも、障害児支援事業などを手がけるLITALICOは、LOVOTを自閉スペクトラム症と診断された子どもたちへの支援や、子どもたちだけではなくその親を対象にしたメンタルヘルス改善などの効果検証を予定している。

「プログラミング教育」用途に特化しないワケ

LOVOT

LOVOTは現在市販されている家庭向けロボットとは、違う戦略をとる。

EdTechや、ロボットの関わる教育というと、どうしてもプログラミング教材としての活用が頭をよぎる。実際、量販店などの売り場を見ても、市販されているロボットの多くは、2020年度からのプログラミング教育必修化を想定したアピールが目立つ。

林要氏

LOVOTで「ロボットネイティブの子どもたちを育てられるのでは」と語る林氏。

しかしLOVOTは、そういったプログラミング教育向けの機能を備えておらず、林氏は「今後の機能追加も考えていない」と話す。

その理由はGROOVE XのミッションやLOVOTの開発理念そのものにある。林氏はBusiness Insider Japanの取材に対し、以下のように答えている。

「現在から今後数年のプログラミング教育向けの需要は理解している。2020年より後、30年後の未来はどうなっているか。その頃には究極のダイバーシティが求められる。今は肌の色の違いなどで言われているが、生物や無生物の違いになっていくのではないか。

そんな世界が当たり前になったとき、時代の主役はロボットネイティブ(編集部注:生まれた頃からロボットに触れあっている世代)になっている。ロボットネイティブを育てることは(LOVOTやGROOVE Xにとって)必要なことだと考えている」(林氏)

ダイバーシティ

ロボットが当たり前の生活の時代まで、LOVOTは生き残れるか。

ロボットブームは新しい波ではなく、過去を振り返ると何度か発生している事象だ。もちろん、現代ではインターネットやセンサー技術の進化はめざましく、過去ではできなかった表現や機能が実装できる。

しかし、ブームに対して“世間や人間の飽き”は必ずやってくる。LOVOTは家族の一員という“価値”を確立し、今のブームが過ぎ去った後に備える生存戦略をはかっているように思える。実際、林氏は今回のEdTechの取り組み以外に、今後は介護分野向けへのLOVOTの活用を検討している旨を明らかにしている。

LOVOTは2019年秋頃に出荷を予定しており、すでに初回出荷分は売り切れ状態で、「2019年内の配送分に若干の余裕がある程度」(林氏)としている。ロボットが今後どのような形で日常生活に溶け込むのか。同社の動きから目が離せない。

(文・撮影:小林優多郎)

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