世帯年収1000万円以上の30代の子育て世帯が増えている。
撮影:今村拓馬
ビジネス誌やニュースサイトでは、しばしば年収1000万円以上の者を「1000万円プレイヤー」と呼び、そのライフスタイルや読んでいる本、習慣などを特集しており、ビジネスパーソンの一種の憧れや目標となっている。
1人の稼ぎで「年収1000万円」を達成することは難しいが、「世帯年収1000万円」なら大きくハードルは下がる。
増加する共働き年収1000万円世帯
従業員1000人以上の企業の平均年収は30代でおよそ500万円になるので(※1)、夫婦とも大企業に勤めていれば、世帯年収は30代のうちに1000万円に達する計算だ。
以前は、結婚・出産を経ても働き続ける女性は少なかったが、2010~2014年には正規職員の女性の69.1%が第1子出産を経ても就業を継続するようになった(※2)。
この結果、世帯年収1000万円以上の30代の子育て世帯が増加しているのである。
※2内閣府「「第1子出産前後の女性の継続就業率」の 動向関連データ集」
下の図表は、30代子育て世帯(夫が30代で夫婦と子からなる世帯)の世帯年収の分布であり、世帯年収1000万円以上の世帯は2007年時点の6.9%から2017年には9.9%へと大きく増えている。
また、年収600万円以上の世帯の割合も2007年から2017年にかけて上昇しており、全体として30代子育て世帯の世帯年収は上昇していることが分かる。
年収分布は共働きと片働きで二極化
2017年の30代子育て世帯の年収分布について、片働き世帯と共働き世帯に分けたものが次の図表だ。
世帯年収600万円以上の世帯の多くが共働き世帯である。
他方、年収400万円未満の世帯の過半数は片働き世帯であり、年収分布は共働きと片働きで二極化してきているものと言える。
政府は近年、育児休業給付金の拡大や保育所の増設など子育て支援を充実させてきた。
それにもかかわらず出生率が伸び悩んでいるのは、世帯年収の向上や子育て支援の充実の恩恵を受けられたのが事実上共働き世帯ばかりであり、片働き世帯が取り残されていたからかもしれない。
2019年10月からは、消費税率の10%への引上げを前提として幼児教育無償化が施行され、3歳以上の子どもの保育所や幼稚園の保育料が無償化される。
民主党政権が一時実施した「子ども手当」以来の(主に幼稚園を利用する)片働き世帯にもあまねく届く子育て支援策が、出生率向上につながるか注目される。
是枝俊悟:大和総研研究員。1985年生まれ、2008年に早稲田大学政治経済学部卒、大和総研入社。証券税制を中心とした金融制度や税財政の調査・分析を担当。Business Insider Japanでは、ミレニアル世代を中心とした男女の働き方や子育てへの関わり方についてレポートする。主な著書に『NISA、DCから一括贈与まで 税制優遇商品の選び方・すすめ方』『「逃げ恥」にみる結婚の経済学』(共著)など。