ダイソー快進撃を支える「毎晩105億件データ処理」する需要予測システムはどう生まれたか

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小売業にとって、在庫管理は店舗ごとの売り上げを最大化させるための重要な業務だ。

1コイン業態の大手大創産業(ダイソー)を支える在庫管理・需要予測システムがどのように作られたのか。先週開催されたAWS Summit Tokyo 2019のセッションでその一端が明らかにされた。

人力管理が「ほぼ不可能」なほど多様な商品点数

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小売業の特徴は、いわゆる「ニッパチの法則」(売り上げを支える売れ筋商品は全体の2割という法則)。いかにして売れ筋商品の在庫を把握し、将来の需要を予測して、欠品なく並べ続けるかは生命線だ。

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大創産業情報システム部課長の丸本健二郎氏。

一方、ダイソーの特徴は、取り扱う商品点数が非常に多いことだ。

大創産業情報システム部課長の丸本健二郎氏によると、ダイソーは全世界27カ国で5270店に展開し、新商品は毎月約800。「均一価格」は日本と同じだが、価格レンジは各国地域の物価に合わせている。

こういう状況では、「人間の能力では在庫を把握するのは難しい」という前提に立って、丸本氏が取り組んだのが、POSデータの統計的解析から個店ごとの需要予測をして欠品をなくす「自動発注システム」(2015年導入)だった。

着想後、いくつかの店舗で試験的に導入したところ、着実に欠品率が下がり、「チャンスロス」が解消された。

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自動発注システムのトライアルの結果。多商品の動向を把握し、季節変化も加味して欠品率を下げることは、コンピューターに仕事をさせる方が向いている。実際効果は非常に高かったという。

すぐに経営陣から「全世界でこのシステムを導入すべき」とGOが出たが、そこで大きな問題に突き当たった。

全世界で1日の処理件数「105億件」で需要予測

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当初のシステムでは、一晩に処理するのは200店舗の処理が限界。国内店舗数の7%にすぎず、全世界展開にはちょっとしたチューニング程度では難しい落差があった。

自動発注は毎日処理する必要があるため、基本的に店を閉めて翌日開店するまでの「夜の時間」にすべてを終える必要がある。

全世界5270店舗あるなかで、既存の方法で処理すると、一晩の間に処理できるのはわずか200店舗だった。国内に限ったとしてもわずか7%でしかない。

処理件数の数字を見積もったところ、この先30日の需要予測も含めて、全世界の店舗に適用するには、毎晩「105億レコード」という莫大な数を処理しなければならないことが判明した。

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「(既存のシステムで高速化するため)チューニングするにも限界があった」(丸本氏)。

なんらかのイノベーションを取り入れなければ解決できない……そう考え、技術的な検証を重ねた結果、データベースは巨大なデータ件数に向いたAmazon Redshift、またシステムはクラウド化し、さらに仮想サーバーではなく、コスト的に有利なサーバーレスアーキテクチャー(Amazon Lambda)を採用することを決めた。

全店導入に向けて開発をはじめたのは2014年5月、稼働を開始したのは2015年2月。サーバーレス環境導入と開発にかかった期間はおよそ9カ月ということになる。

RDBMSとRedshiftのパフォーマンス比較

RDBMSが決して劣るということではなく、1億件を超えるような巨大なデータの取り扱いには向いていないだけ、と丸本氏。検証結果にもあるように100万件時点ではまだRDBMSの方がパフォーマンスが優れている。

インフラ維持はアマゾンに任せ、人的資源を開発に集中

在庫管理と需要予測はダイソーの基幹システムの1つと言えるが、それをサーバーレスで運用するメリットとして、丸本氏はビジネス継続性の観点から「災害対策」に強いことにも言及している。

利用者側が、物理サーバーや仮想サーバーといったこと考える必要がないサーバーレスアーキテクチャーでは、災害時などに障害の影響を受けないよう複数環境を分けて設置(冗長化)する「Availability Zone(AZ)」の運用を考える必要がない。

企業サーバーの災害対策

物理サーバー(オンプレミス)、仮想サーバー、サーバーレス。右にいくほど企業側の災害対策負荷は減る、と説明する。

インフラの安定運用にかけるコストと人的負担が極めて軽くなったことで、ダイソーでは情シス部門の人材配置も大きく変えた。

これまで、インフラ運用を担っていた優秀な人材を配置転換するなどしてアプリ担当にまわし、「維持」ではなく「ビジネスを加速する」ためのプログラム開発や改善に人的資源を集中できるようになったという。

ダイソーの情シス人員配置

物理サーバー、仮想サーバー、サーバーレスでの人員配置のイメージ。

なお、丸本氏のプレゼンでは、実際にどの程度の運用コストが圧縮できたのかにも言及している。

在庫管理と需要予測を担う「POSデータ保持システム」「POSデータ分析システム」それぞれで、90%減と83%減という驚異的なコストダウンになったという。

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個別インタビューで改めてコストについても聞いた。

丸本氏は、これだけの削減になれば、仮にサーバーレス化で新規の開発コストが大きく積み上がっても数年でコスト回収できる、と断言する。

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大創産業情報システム部課長の丸本健二郎氏。大手データベースソフトウェア会社を経て、故郷の広島にUターン転職する形でダイソーに入った。

今後ダイソーのなかで手がけていきたいことを聞くと、真っ先に「AIの活用」という答えが返って来た。

丸本氏の部署はいわゆる情シス部門だが、新しい小売りビジネスを実現するためのAI技術にも強い興味があるという。

Amazon Goのような新しい購買体験をどう実現するか? これはコンビニをはじめ多くの小売業大手が模索している真っ最中だ。

技術に詳しい人間が、技術動向を研究してボトムアップで会社に提案していく……こう書いてしまえば当たり前の話でも、「攻めの情シス」が実践できている会社は、まだまだ少ない。

編集部より:一部画像をアップデートしました。 2019年6月18日 17:00

(文、写真・伊藤有)

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