「キリンチャレンジカップ2019」の国際親善試合で、エルサルバドル戦に出場した久保建英選手。
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サッカー日本代表の久保建英(18)のスペインの強豪レアル・マドリード(以下、レアル)への移籍が6月15日、所属するFC東京から発表された。
久保は現在、日本代表の一員として「コパ・アメリカ(南米選手権)」に参加している(日本は招待国として出場)。日本時間18日午前8時には、久保がスタメン出場すると見られる第1戦チリ戦が行われる。ちなみに、実現すれば久保にとって初のスタメン出場だ。
18歳になったばかりの久保は、15日にFC東京の公式サイト上で「チームが首位をキープしている中、シーズンの途中でチームを離れることは難しい決断でした。ただ、自分で決めた以上は悔いの無いよう、責任を持ってしっかりサッカーと向き合いたいと思います」(一部抜粋)とコメントを発表した。
FC東京の大金直樹社長も同サイト上で次のようにコメントしている。
「18歳を迎えた2019年6月、当然FC東京からもオファーを出しましたが、世界でもビッグクラブと言われる複数クラブからも同様にオファーがありました。
FC東京の今シーズンのチーム状況、自身の成長の実感から、本人はそのまま残留して優勝に貢献したいという想いもあったと聞いております。ただ、最終的にはレアル・マドリードという世界でも屈指のクラブを選択することになりました」(一部抜粋)
年俸「約2億4000万円」は破格の待遇
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年俸は200万ユーロ(日本円で約2億4000万円)とされる。ただし、移籍金はFC東京との契約期間終了を伴っての移籍であり、なんとゼロ円だ。
久保は当時10歳だった2011年、レアルのライバルであり、世界的クラブのFCバルセロナのユースチームに加わった。しかし、2015年に18歳未満の国際移籍問題の影響で、帰国を余儀なくされ、日本でプレーをしていた。
ただ、久保は日本でプレーしている間も、常にバルセロナへの復帰を噂されていた。まさかのライバルチームへの加入に、日本のサッカーファンたちは二重に驚かされた。
18歳の若さにしてレアルに加入した久保は、当初は若手を中心としたレアル・マドリード・カスティージャ(レアルのBチーム)の一員になり、スペインの3部相当のリーグでの試合出場を目指す。
レアルの元社員で現在スポーツコンサルタントの酒井浩之さんは、今回の久保の移籍を冷静に見る。
「今回レアルが久保選手に出す年俸は破格の契約ですね。レアルは期待の若手を世界中から集めてカスティージャでプレーをさせていますが、彼らの平均年俸は3000万〜5000万円です」(酒井さん)
日本企業は「レアルの久保」の広告起用はできない?
Toru Hanai/ gettyimages
久保の、世界的名門への移籍に日本中がわいている一方、日本企業にはこれに乗じたビジネスチャンスはあるのだろうか。レアルは世界中に認知され、人気のサッカークラブ。レアルに所属する選手たちを広告に使用したい企業は世界中に存在する。
この点について、酒井さんは、日本企業が思うような「久保を活用した広告」はできないのではないかと見る。
「日本企業は、レアルのBチーム、カスティージャだとしても金を出したいと思います。実際、私のところにも問い合わせが何件か来ております。
ただし、逆にレアルが久保選手を表に立たせたくないのではないでしょうか。レアル側は大体5人1組で広告などに出演させていますが、その5人はチームのトップの選手たち。ブランディング面などが理由です。久保選手はあくまでBチームの選手ですし、そんな選手をレアルのチームロゴと一緒に出すことは非常に難しいのではないでしょうか。
そもそもBチームの選手の広告起用は前例がないのでは。また、レアル自体は若手を大切に育てたいでしょうし、断る可能性は高いと思います」
とはいえ、それでも久保を広告などに使いたい日本企業は少なくないだろう。起用できるチャンスはあるのだろうか?
「彼個人のスポンサーなら可能かもしれません。ただし、レアルのユニフォームは着て出演できません。レアルのユニフォームに似た白いユニフォームなどを着ての出演になると思います」
18歳にして年俸2億円超え、そして名門レアルへ移籍が決まった久保。ただし、トップチームでのプレーを実現できるかは何も保証されていない。過去にも久保と同様のケースで移籍した若手選手たちが、トップに昇格することなく別のチームへ移籍していった。
「トップチームへの昇格は現時点で難しいかもしれません。身体能力の部分。彼の持っているのセンスはパスやスペースを見つける能力など、可能性という点では無限です。それを理解した獲得だとしても、同様のプレーができる選手はカスティージャにたくさんいます。
あと、スペインリーグではEU圏以外の外国人選手の出場できる枠は登録・出場ともに3選手しかありません。その枠は大抵アルゼンチンやブラジルの選手に使われます。ただ、久保選手がさらに成長して、ひょっとしたら、ひょっとすることもあり得るとは思います」
日本サッカー界の期待を一身に集めることとなった久保には、ぜひともカスティージャで活躍して、トップチームへの昇格を勝ち取ってほしい。
(文・大塚淳史)