香港のデモ参加者は、ローテク装備と身近な知識でいかにして中国の"テクノロジー独裁"に立ち向かったのか

警察とデモ参加者

警察官の前に座り込むデモ参加者(2019年6月12日)。

REUTERS/Tyrone Siu

  • 若い世代を中心に100万人以上が参加した香港のデモは、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を審議延期へと追いやることで、中国共産党の意向を打ち破った。
  • 中国は"テクノロジーによる独裁"を研究している。テクノロジーを使って人々の生活をあらゆる側面で監視し、それぞれがいかに良い/悪い人間かを中国共産党が評価、社会的な信用として格付けしようとしている。
  • デモの参加者はローテクな装備と身近な知識で、デモを阻止しようとする中国の意向を打破した。

若い世代を中心に100万人以上が参加した香港のデモは、中国共産党の意向を打ち破るという途方もない成果を残した。しかも彼らは、それを身近な知識と日用品、強い意志と団結によって成し遂げた。

アジア・ソサエティのシニア・フェロー、アイザック・ストーン・フィッシュ(Isaac Stone Fish)氏は、今回のデモについて、「740万人の香港の人口の25%以上が今週末、デモに参加した。これは近代史上、最も大規模なデモだ。実に素晴らしい」とツイートした

かつてイギリスが統治していた香港の100万人を超える人々に"脅威"を与えたのは、戦争でも政治的腐敗でもない。香港の独自の司法制度に中国共産党がアクセスを強めようとしているのではないかとの恐れだ。

デモに参加する人々

デモに参加する人々。

Tyrone Siu/Reuters

中国の特別行政区である香港には、中国本土よりも民主的な政府と自由がある。香港の人々は投票することもできるし、本土で暮らす人々に比べて、自由に意見を述べることもできる。

政治活動や党に反する言論によって中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案は、"やり過ぎ"だった。

顔認証技術

顔認証技術を使った映像を映し出すスクリーン。

China Daily via Reuters

中国はすでに監視社会に向かっている。人種的、宗教的マイノリティーを拘束し、「再教育」するためにも、そうした技術が使われている。中国では顔認証技術が、人々の全ての行動を捉えている大量の監視カメラに使われている。

社会信用」システムは、人々の暮らしのあらゆる側面を評価し、ビデオゲームのやり過ぎなど、好ましくない行動をした人間には、鉄道や飛行機のチケットを買えなくするといった罰を与えるものだ。中国に住む母親に借金があれば、電話をかけると、母親に借金を返済するよう促すことを求める特別なメッセージが流れてくるかもしれない

香港はこうした、市民を中国政府の監視下に置く権力を中国共産党に与えることを拒否した。しかも彼らは、それを身近な知識とローテクな装備によって成し遂げた。

香港に拠点を置く民間人権陣線のリーダー、ボニー・レオン氏は、「中国政府は、自国民を監視するために数多くのことをするだろう」とワシントン・ポストに語った

「それは香港でも起こり得るとわたしたちは考えている」とレオン氏は言う。

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放水

警察の放水に見舞われるデモ参加者。

REUTERS/Tyrone Siu

2014年の雨傘運動では、多くの香港の人々が警棒と催涙スプレーに屈した。だからこそ、彼らはどうやって応戦すればいいか、分かっていた。

デモ参加者が取った多くの対策は、シンプルかつ一般的なものだった。マスクを着用することで、個人の特定を避けるのもその1つだ。だが、中には他では見ない巧妙な対策もあった。

「催涙スプレーが使われるだろうということは分かっていた」と、あるデモ参加者はウォール・ストリート・ジャーナルに語った。そのため、デモ参加者はスプレーの痛みを和らげる塩化ナトリウムの溶液を用意していたと、同紙は報じている。

ネットに投稿されたある動画では、デモの参加者に向かって警察が催涙ガスを放つと、参加者らは危険な煙が広がる前に、弾筒に水を浴びせていた。これは警察の武器を実質上、無効にするものだ。

助け合うデモ参加者

催涙ガスを浴びた男性を助けるデモ参加者。

REUTERS/James Pomfret

だが、デモ参加者が直面したのは、物理的な危険だけではない。"スパイ"の問題もあった。デモはWhatsAppやTelegramといったアメリカのコミュニケーション・ツールを通じて組織されていた。

Telegramは6月12日、中国発の「国家規模の」分散型サービス妨害(DDoS)攻撃を受けたと発表した

多くの人々にとって、その解決策はシンプルだった。中国のアプリを自身の携帯電話から全て削除したのだ。彼らはまた、個人の特定を避けるために、互いの顔が分かる写真は撮らず、デモの規模が分かるような広角の写真を撮るルールを設けていたという。

改正案に反対する人々

Jorge Silva/Reuters

香港の医療業界に詳しい国会議員のピエール・チャン(Pierre Chan)氏は記者会見で、警察が病院のコンピューター・システムの「バックドア」を通じて、デモで負傷した患者情報にアクセスし、病院で彼らを逮捕することができたと述べたと、ブルームバーグの編集者、アーロン・マクニコラス(Aaron Mc Nicholas)氏はツイートしている

今回の大規模デモを受け、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、改正案の取り扱いをめぐって市民に謝罪し、審議を延期した。


[原文:Hong Kong's protesters used low-tech street smarts to smash China's powerful techno-authoritarianism]

(翻訳、編集:山口佳美)

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