Edward Berthelot/Getty Images
- ソーシャルメディアでは今、バーチャル・インフルエンサーが注目を集めていて、数百万ものフォロワーを獲得している。ニューヨーク・タイムズが報じた。
- インスタグラムで1投稿あたり最大100万ドル(約1億1000万円)を稼ぐ人間のインフルエンサーにも迫る勢いだという。
- バーチャル・インフルエンサーの台頭は、インフルエンサー業界の変化を示している。ブランドやフォロワーたちは、本物に見えない有名人のインフルエンサーから離れつつある。
セレブや有名ブロガーたちは今、ソーシャルメディアの注目を新たなタイプのスターと分け合っている —— バーチャル・インフルエンサーだ。
バーチャル・インフルエンサーは、ソーシャルメディアでフォロワーを引き付け、「いいね」を獲得するために、コンピューターで作られたものだ。事実、数百万ものフォロワーを獲得していると、ニューヨーク・タイムズが報じた。バーチャル・インフルエンサーは実在しないが、実在するように見える —— もしくは、人間に似たような感じには見える。人間のインフルエンサーと同じように自らの行動をカメラで撮影し、服を見せびらかせたり、授賞式に出席したりする。
ロサンゼルスを拠点とするスタートアップが作った、バーチャル・インフルエンサーの「リル・ミケーラ(Lil Miquela)」を見てみよう。彼女には160万ものフォロワーがいる。大手ブランドも例外ではない。ファッション・ブランドの「バルマン(Balmain)」はデジタル・モデルの"バーチャル・アーミー"を作っているし、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)はバーチャル版のカーネル・サンダースを開発していると、ニューヨーク・タイムズは報じている。
こうしたバーチャル・インフルエンサー人気は、ブランドとの提携を狙う人間のインフルエンサーにとっては問題だ。「理想的なブランド・アンバサダーをゼロから作れるのに、どうしてセレブやスーパーモデル、ソーシャル・メディアのインフルエンサーを雇って、自社製品のマーケティングをするだろうか? 」と、同紙のティファニー・スー(Tiffany Hsu)氏は書いている。
バーチャル・インフルエンサーは、それが模倣する、たくさんの商品の中から良いもの、好きなものを選び集めて、自身の"最良の暮らし"を見せる人間のインフルエンサーと変わらない —— だが、人間のインフルエンサーのように、撮影用に身支度をする必要も、挑発的なメッセージに対処する必要もないと、スー氏は指摘する。
「だからこそ、ブランドはアバターと仕事をするのを好むのだ —— アバターは100回も撮り直しをする必要がない」と、アメリカの掲示板サイト「レディット(Reddit)」の共同創業者、アレクシス・オハニアン(Alexis Ohanian)氏はニューヨーク・タイムズに語った。「ソーシャルメディアは今、本物の人間が偽物になっている場所だ。だが、アバターはストーリーテリングの未来だ」という。
1億人以上のフォロワーを誇るセレーナ・ゴメスやカイリー・ジェンナーといったセレブは、インスタグラムで1投稿あたり80万~100万ドルを稼ぐことができる。一方で、フォロワー数が100万人ほどのセレブが稼ぐ金額は、1投稿あたり1300~3000ドルだと、Hopper HQの2018年のインスタグラム・リッチ・リストを引用し、Micは報じている。
バーチャル・インフルエンサーは、インフルエンサー業界で起きている変化の一部
ブランドやフォロワーたちが、本物に見えない有名人のインフルエンサーから離れつつある中、バーチャル・インフルエンサー人気は、インフルエンサー業界のより大きな変化を示している。
ブランド代理店の「WickerWood」の共同創業者、シャーリー・レイ・ウッド・オークス(Shirley Leigh-Wood Oakes)氏は、インフルエンサーが自ら手掛けた商品は約50%が失敗に終わると、以前、INSIDERに語っていた。同氏はマーケティングの失敗や、個性もしくは感性のなさなどがその理由ではないかと指摘したが、インフルエンサー・バブルが崩壊しようとしているサインだとの声もある。
また、Business Insiderで報じたように、ブランドはフォロワー数が1万~5万人のマイクロ・インフルエンサーや、800~1万人のナノ・インフルエンサーと仕事をすることが増えている。その背景にはさまざまな要因があるが、フォロワー数が比較的少ないインフルエンサーの方が、有名なインフルエンサーよりも身近な存在で、信頼できると見られていて、宣伝がより本物という印象を与えることが大きいと、同記事は指摘している。
だが、人間のインフルエンサーが全くダメということではない。ファンのエンゲージメントはバーチャル・インフルエンサーよりも、オンラインでファッションのトレンドを生み出す平均的なインフルエンサーの方が多いと、ニューヨーク・タイムズはインフルエンサー・マーケティング・スタートアップの「Captiv8」のデータを引用し、報じている。
(翻訳、編集:山口佳美)