関税の具体例を示すトランプ大統領(ホワイトハウス、2019年1月24日)。
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- アメリカのトランプ大統領の貿易政策は、初めの1年だけでアメリカ人に数百億ドルの負担をかけていた。これは関税をめぐる戦いがエスカレートする前のことだ。
- 最新のレポートによると、トランプ政権の関税によって4月までに最大で220億ドル(約2兆4000億円)のコストが生じた。
- トランプ政権は、関税は海外の輸出業者にとってのマイナスだと主張しているが、実際はアメリカ国内の企業や消費者がその負担を強いられている。
最新の推計によると、トランプ大統領の貿易政策は4月までに、アメリカ人に数百億ドルの負担をかけていた。関税をめぐる戦いがエスカレートする前であるにもかかわらず —— 。
自由貿易を求める「Tariffs Hurt the Heartland」の最新レポートによると、トランプ政権の関税は最大で220億ドルのコストを生じさせた。これはトランプ大統領が5月に、2000億ドル相当の中国製品の関税率を2倍以上引き上げる前のことだ。つまり現在の総額は、これを大きく上回る可能性が高い。
大統領の貿易に関する権限を抑制する法案作りをリードしているチャック・グラスリー(Chuck Grassley)上院議員も、同様の見方をしている。グラスリー議員によると、税関・国境警備局は中国への関税は152億ドルを超え、このうち、65億ドルは鉄鋼・アルミニウムの輸入に対する関税だと推計している。
「誤解のないように言っておくと、アメリカの輸入業者と消費者がこうした関税を払っている」と、グラスリー議員は6月18日、上院財政委員会のヒアリングで述べ、「懸命に働いているアメリカ人のポケットから220億ドルを出すことは、我々の国にとって最良の利益ではない」と指摘した。
トランプ大統領もトランプ政権も、関税は海外の輸出業者にとってのマイナスだと主張しているが、実際はアメリカ国内の企業や消費者がその負担を強いられているということだ。
Upworkのチーフ・エコノミスト、アダム・オジメク(Adam Ozimek)氏は、「トランプ政権は、自分自身に課税することで他の誰かを罰することは難しいと気付き始めている」と言う。「関税はわたしたちがそれを課した相手だけでなく、国内経済にも損害を与える。つまり、同様の経済的なダメージを自国に与えずに、主要な貿易相手国に本当にダメージを与えることは難しいということだ」と、オジメク氏は指摘する。
同時に、報復措置もアメリカのビジネスに大きな打撃を与えた。農務省では、2019年度の農産物輸出が、2018年から20億ドル近く減り、1415億ドルになると見ている。これは主に、トランプ政権に対する中国の2018年の報復関税によるものだ。
トランプ大統領は、この貿易をめぐる戦いが、各国にプレッシャーをかけ、自らが"アンフェア"だと見なす貿易の慣行を変えることで、最終的にアメリカ人にとってプラスになると考えている。アメリカにとって公平な機会を手に入れるためには、短期的な痛みは、それに見合うだけの価値があると、トランプ大統領は主張している。
[原文:Trump’s tariffs have cost Americans at least $22 billion since the trade war began, report says]
(翻訳、編集:山口佳美)