株主総会投票にブロックチェーン導入。IT企業アステリア「コスト安く透明性確保」

株主総会の様子

6月22日に開かれたアステリアの株主総会では、ブロックチェーン投票が導入された。

ソフトウエア開発のアステリアは6月22日に東京都内で開いた定時株主総会で、ブロックチェーン技術を用いた議決権投票を実施した。同社によると、上場企業が株主総会に同技術を活用するのは、世界で初めてという。

アステリアは株主総会で議決権を有する9307人に対し、取締役選任など4議案10項目の投票に必要なデジタルトークンを付与。株主はデジタルトークンか、紙の議決権行使書や従来方式のインターネットなどによる投票が可能になった。

株主総会では、議決権総数の20.07%がブロックチェーンで投票されたことが明らかにされた。平野洋一郎社長は、「全体の投票率が7割ほどなので、投票した人だけでみると、ブロックチェーンでの投票を選択した人がかなりいる。とても意味のある数字だと思っている」と語った。

「未知数の技術の利用シーンを示したい」

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ブロックチェーン投票サイトのイメージ。

管理者がおらず、改ざんが不可能な非中央集権技術であるブロックチェーン技術は、さまざまな産業への応用が期待されつつも、現状では仮想通貨を代表とした金融分野以外にはほとんど広がっていない。

平野社長は、「当社は2015年12月に、上場企業として初めてブロックチェーン領域へ進出した。ブロックチェーンはまだ未知数な部分が多く、社会への普及にはかなりの時間と参加者が必要だが、率先して利用シーンを示そうと動く中で、株主総会での議決権投票に向いていると考えた」と、導入の理由を語った。

平野社長によると、議決権の投開票は信託機関が管理するが、そのプロセスは外から見えにくい。経営陣や株主の間で対立があり、プロキシーファイト(委任状争奪戦)が発生したときなどは、すべてが自動かつリアルタイムで処理されるブロックチェーン技術の活用で、透明性や正確性を保証できるという。

また、株の保有数によって付与される議決権の数が異なるときも、デジタルトークンだと発行が容易で、かつブロックチェーンを活用すれば、サーバー構築の必要がないため、システム構築や運用のコストが大幅に下がる。

個人株主比率が9割の「ブロックチェーン銘柄」

アステリアは2015年12月にブロックチェーン領域への進出を発表。同技術に関心を持つ投資家の間で話題になり、当時3000人弱だった株主が、わずか2カ月で4倍以上の1万2000人台に増え、株価も8倍に上昇した。現在は株主の9割超を個人株主が占めているという。

「ブロックチェーン銘柄」を理由に保有している個人株主が多いこともあり、同社は2017、2018年に、ブロックチェーン技術を使った議決権の模擬投票を行った。その時は株主以外も参加でき、実際の投票には反映されない実験にとどまっていたが、今年は株主名簿を管理する三菱UFJ信託銀行の協力を受けて、株主総会の本番に導入した。

「リブラに参加する日本企業もあるはず」

平野社長

アステリアの平野社長。

2018年1月に発生した仮想通貨取引所コインチェックのNEM流出事件によって規制が強化されたことで、日本の仮想通貨・ブロックチェーン市場は一気に冷え込んだ。

だが、2019年6月18日にFacebookが仮想通貨「リブラ(Libra)」を発表。市場の成長期待が高まり、株主総会当日の22日には、ビットコイン価格が2018年3月以来約1年3カ月ぶりに1万ドル(約107万円)を回復した。

アステリアの株主総会では、株主から「仮想通貨の安全性」や「GAFAが仮想通貨やブロックチェーンを本格展開したら、日本企業はどう対抗していくのか」という質問も出た。

平野社長は「仮想通貨取引所の資金流出は日本以外でも発生しているが、それは取引所のセキュリティーや体制の問題であり、仮想通貨やブロックチェーンの技術の脆弱性を示すものではない」と回答。

また、リブラについて、「技術競争になると、日本としても独自のものをやるべきという議論がよく出てくるが、ブロックチェーンはむしろ、国というボーダーを超える技術だ。リブラも日本企業を排除してはいないので、今後、リブラのネットワークに加わる日本企業も現れるだろう」と語った。

(文・浦上早苗)

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